危険物の輸送に必要な資格や、輸送に関する基本的な知識、掲示しなければならない標識の概要について簡単に説明します。
危険物の種類
危険物は、性質によって第1類から第6類に類別されます。
危険等級(危険の度合い)は、類別のほか、品名や数量によっても異なります。
危険物
通常の状態で放置することによって、火災や爆発、中毒などを発生させる可能性がある物資のことです。
消防法では、次のような物資のことをいいます。
・火災発生の危険性が大きい
・火災が発生した場合、火災を拡大する危険性が大きい
・火災発生時の消火が困難
消防法で危険物に該当する物資は、それぞれの性質によって、第1類から第6類に分類されています。
また、気体の物資は含まれません。
輸送時の注意点
指定数量(消防法が適用される数量)以上のときは、標識「危」を車両の前後に掲示して、消火設備を準備します。
指定数量を超える場合や、少量でも危険と判断される場合には、イエローカード(事故発生時に迅速に対応するための資料のことで、物品の性状や応急措置の方法などが記されている)を携帯します。
■参考:危険物運搬の概要
必須資格
危険物を取扱う場合は、「危険物取扱者」の資格(甲種、乙種、丙種のいずれか)が必要です。
この資格の種類によって、取扱いや立ち会いの権限が異なります。
例えば甲種の場合、全ての危険物の取扱いと立ち会いが可能です。
スチール缶などの密閉できる容器に入れて運ぶ「運搬」は、指定数量以内であれば、資格がなくても行えます。
ただし、積卸しや取扱いなどに制約があるため、あまり現実的ではありません。
高圧ガス
高圧ガス保安法第2条の規制を受ける、一定の圧力以上で存在するガスのことをいいます。
■参考:高圧ガス保安法 | e-Gov法令検索
輸送時の注意点
輸送車両への積載方法やイエローカードの携帯、防災資材や工具を装備するなどの規制があります。
必須資格
一般高圧ガス保安規則により、規定数量以上の高圧ガスを輸送する場合は、「移動監視者」の資格が必要です。
移動監視者とは、次のいずれかに該当する人のことをいいます。
・化学責任者免状(甲種、乙種、丙種のいずれか)の交付を受けた ・機械責任者免状(甲種または乙種)の交付を受けた ・高圧ガス保安協会が行う高圧ガスの移動に関する講習の検定に合格した
■参考:一般高圧ガス保安規則 第49条17 | e-Gov法令検索
火薬類
火薬や爆薬、火工品(工業雷管や花火など)のことです。
輸送時の注意点
火薬類を安全に運ぶための遵守事項が設けられています。
例えば、摩擦や揺れ、転落が発生しないようにすること、標識「火」を掲示する(夜間は赤色灯もつける)こと、夜間を避けて荷卸しを行うことなどです。
必須資格
火薬類取締法などにより、一定数量を超える場合は、「運搬証明書」の交付を受ける必要があります。
■参考:火薬類取締法 第19条 | e-Gov法令検索
毒物・劇物
医薬品や医薬部外品を除く化学物質等のうち、人体に対する毒性が特に強いもののことをいいます。
輸送時の注意点
規定数量以上の毒劇物を運搬する場合、標識「毒」の掲示が必要です。
このほかにも、保護具を備える、作業時に保護具を装着する、イエローカードを携帯するなどの規定があります。
必須資格
一定数量以上を取扱う場合は、「毒物劇物業務上取扱者」の設置が必要です。
なお、毒物劇物取扱責任者となれるのは、次のいずれかに該当する人です。
・薬剤師 ・厚生労働省令で定める学校(大学、高専、専門学校、高等学校)で、応用化学に関する学課を修了した ・都道府県知事が行う毒物劇物取扱者試験に合格した
トラックでの危険物輸送に必要な標識
いずれの標識も、車両前後の見やすい位置に掲示してください。
ここでは各標識の概要を紹介しています。
詳細は各参考ページを参照してください。
「危」
危険物を運ぶときに、車両に掲示します。
サイズは30cm〜40cmで、色は地が黒色の板、文字が黄色です。
文字には反射塗料などを使用します。
■参考:危険物の規制に関する規則 第17条、第47条 | e-Gov法令検索
「毒」
毒劇物を運ぶときに、車両に掲示します。
サイズは30cm四方で、色は地が黒色の板、文字が白色です。
■参考:毒物及び劇物取締法施行規則 第13条の5 | e-Gov法令検索
「高圧ガス」
高圧ガスを運ぶときに、車両に掲示します。
サイズは、横が車幅の30%以上、縦が横幅の20%以上となるようにします(正方形の場合は、面積が6平方メートル以上のもの)。
色は、地が黒色の金属板、文字が黄色です。
この文字は、JIS K5673(1967)安全色彩用蛍光塗料の蛍光黄で記載します。
■参考:一般高圧ガス保安規則の機能性基準の運用について 1の4
まとめ
危険物輸送には、さまざまな義務や規定があります。
もし違反した場合には、罰則が科されます。
事故を防ぎ、物資を安全に運ぶためにも、義務や規定は必ず守りましょう。