
一般社団法人 全国個人タクシー協会によると、
2024年4月時点で25,588人の個人タクシー業者が全国に存在しています。
2023年4月時点では、26,788人の個人タクシー業者がありましたので、
約1年で減少傾向にあります。
ただ、これから個人タクシーを開業したいとお思いの方がいらっしゃるでしょう。
本記事では、個人タクシーを開業する条件や必要な資格、
開業方法や費用について、詳しく解説します。
個人タクシーを開業するための条件
個人タクシーを開業するためには、以下の条件を満たしておかなければなりません。
・運転経歴
・法令順守状況
・資金計画
・営業所および車庫
では、それぞれについて詳細をみていきましょう。
運転経歴
運転経歴は、以下の年齢区分により内容が異なります。
35歳未満の場合 |
①申請する営業区域において、申請日以前継続して10年以上同一の タクシー又はハイヤー事業者に運転者として雇用されているこ と。 ②申請日以前10年間無事故無違反であること。 |
35歳以上 40歳未満の場合 |
①申請日以前、申請する営業区域において自動車の運転を専ら職業 とした期間が10年以上であること。この場合、一般旅客自動車運 送事業用自動車以外の自動車の運転を職業とした期間は50%に換 算する。 ②①の運転経歴のうちタクシー・ハイヤーの運転を職業としていた 期間が5年以上であること。 ③申請する営業区域においてタクシー・ハイヤーの運転を職業とし ていた期間が申請日以前継続して3年以上であること。 ④申請日以前10年間無事故無違反である者については、40歳以上65 歳未満の要件によることができるものとする。 |
40歳以上 65歳未満の場合 |
①申請日以前25年間のうち、自動車の運転を専ら職業とした期間が 10年以上であること。この場合、一般旅客自動車運送事業用自動 車以外の自動車の運転を職業とした期間は50%に換算する。 ②申請する営業区域において、申請日以前3年以内に2年以上タクシ ー・ハイヤーの運転を職業としていた者であること |
法令順守状況
以下のように、定められた法令を遵守しているかも条件のうちの1つです。
(1)申請日以前5年間及び申請日以降に、以下に掲げる処分を受けていないこと。また、過去にこれらの処分を受けたことがある場合には、申請日の5年前においてその処分期間が終了していること。
1 |
法又は貨物自動車運送事業法の違反による輸送施設の使用停止以上の処分又は使用制限(禁止)の処分 |
2 |
道路交通法(昭和35年法律第105号)の違反による運転免許の取消し処分 |
3 |
タクシー業務適正化特別措置法(昭和35年法律第105号)の違反による運転免許の取消し処分及びこれに伴う登録の禁止処分 |
4 |
自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律(平成13年法律第57号)の違反による営業の停止命令又は営業の廃止命令の処分 |
5 |
刑法(昭和40年法律第45号)、暴力行為等処罰に関する法律(大正15年法律第60号)、麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)、覚せい剤取締法(昭和26年法律第252号)、売春防止法(昭和31年法律第118号)、銃砲刀剣類所持等取締法(昭和33年法律第6号)、その他これに準ずる法令の違反等による処分 |
6 |
自らの行為により、その雇用主が受けた法、貨物自動車運送事業法又はタクシー業務適正化特別措置法に基づく輸送施設の使用停止処分以上の処分 |
(2)申請日以前3年間及び申請日以降に、道路交通法違反による処分を受けていないこと。
ただし、申請日の1年前以前において、反則点1点を付された場合(併せて同法の規定による反則金の納付を命ぜられた場合を含む)又は反則金の納付のみを命ぜられた場合のいずれ1回に限っては、処分を受けていないものとみなす。
(3)(1)又は(2)の違反により現に公訴を提起されていないこと。
資金計画
資金計画も条件に含まれます。
(1)所要資金の見積りが適切であり、かつ、資金計画が合理的かつ確実なものであること。なお、所要資金は次の1~4の合計額とし、 費用ごとに以下に示すところにより計算されているものであること。
1 |
設備資金(3.を除く) |
2 |
運転資金 |
3 |
自動車車庫に要する資金 |
4 |
保険料 |
(2)所要資金の100%以上の自己資金(自己名義の預貯金等)が、申請日以降常時確保されていること。
営業所および車庫
営業所は、個人タクシー営業上の管理を行なう事務所であって、次の各事項に適合するものであること。
1 |
申請する営業区域内にあり、住居と営業所が同一であること。 |
2 |
申請する営業区域内に居住(申請日現在)しているものであること等、居住する住居に永続性が認められるものであること。 |
3 |
使用権原を有するものであること。 |
また、車庫については、次の各事項に適合するものであること。
1 |
申請する営業区域内にあり、住居と営業所が同一であること。 |
2 |
申請する営業区域内に居住(申請日現在)しているものであること等、居住する住居に永続性が認められるものであること。 |
3 |
使用権原を有するものであること。 |
また、車庫については、次の各事項に適合するものであること。
1 |
申請する営業区域内にあり、営業所から直線で2キロメートル以内であること。 |
2 |
計画する事業用自動車の全体を収容することができるものであること。 |
3 |
隣接する区域と明確に区分されているものであること。 |
4 |
土地、建物について、3年以上の使用権限を有する者であること。 |
5 |
建築基準法(昭和25年法律第201号)、都市計画法(昭和43年法律第100号)、消防法(昭和23年法律第186号)、農地法(昭和27年法律第229号)等の関係法令に抵触しないものであること。 |
6 |
計画する事業用自動車の出入りに支障がなく、前面道路が車両制限令(昭和36年政令第265号)に抵触しないものであること。なお、前面道路が私道の場合にあっては、当該私道の通行に係る使用権限を有する者の承認があり、かつ、当該私道に接続する公道が車両制限令に抵触しないものであること。 |
7 |
確保の見通しが確実であること。 |
その他の条件
上記の内容を含めて、以下の条件についても確認しておきましょう。
1 |
申請日現在65歳未満であること。 |
2 |
有効な第2種運転免許(普通免許又は大型免許に限る)を取得していること。 |
3 |
申請日以前に申請する営業区域において、自動車の運転を専業とした期間が10年以上あること。 |
4 |
申請日以前5年間及び申請日以降に運転免許取消・刑法違反等の法令違反等の処分を受け手いないこと。及び申請日以前3年間及び申請日以降に道路交通法違反がなく、運転免許の効力の停止を受けていないこと。 |
5 |
使用する事業用自動車は、使用権限を有するものであること。 |
6 |
公的医療機関等において胸部疾患、心臓疾患及び血圧等に係る健康診断を受け、個人タクシーの営業に支障がない状態にあること。 |
7 |
許可を受けようとする営業区域を管轄する地方運輸局長が実施する法令及び地理の試験に合格した者であること。 |
8 |
開業資金・営業所・車庫等、許可を受けようとする営業区域を管轄する地方運輸局より公示されたすべての基準を満たすこと。 |
申請日前3年間において個人タクシー事業を譲渡若しくは廃止し、
または期限の更新がなされなかった者でないことも条件の1つです。
個人タクシーを開業するために必要な資格
個人タクシーを開業するために必要な資格は「有効な第2種運転免許」です。
第2種免許は、乗客を乗せて車を運転する際に必要な免許で、
普通免許または大型免許に限ります。
個人タクシーの開業の方法と手順
個人タクシーの開業の方法と手順についてみていきましょう。
開業方法
開業方法には「新規許可」「譲渡譲受」の2つがあります。
それぞれの方法についてご紹介します。
新規許可
新規許可は、個人タクシー事業を立ち上げる際に必要な許可を取る手続きです。
新規許可の手続きは、運輸局が管轄する地域で行なわれ、受付期間は毎年9月で、
許可証は翌年2月までに出されるのが通常となっています。
譲渡譲受
譲渡譲受は、既存子個人タクシー事業者から運営権を引き継ぐ手続きです。
譲渡譲受も運輸局への申請が必要で、
譲渡人と譲受人が「譲渡譲受契約」を締結した後に、
運輸局に「譲渡譲受認可申請」を行ないます。
開業手順
続いて、開業手順についてみていきましょう。
提出書類を用意する
一般乗用旅客自動車運送事業の許認可の条件を満たすことを確認できれば、
以下の書類を用意しましょう。
申請方法 |
提出書類 |
共通 |
①許可申請書または認可申請書 ②住民票 ③自動車運転免許証 (申請前に試験を受けた人のみ) ①健康診断書 ②運転に関する適性診断票等 ③運転記録証明書等 ④自己資金の確保に関する挙証資料 ⑤営業所の確保に関する挙証資料 ⑥事業用自動車の確保に関する挙証資料 ⑦自動車車庫の確保に関する挙証資料 |
新規許可 |
①戸籍抄本 ②自己資金の確保に関する挙証資料 (申請前に試験を受けた人のみ) ①運転経歴に関する挙証資料 ②個人タクシー試験合格者証の写し |
譲渡譲受 |
①運転経歴に関する挙証資料 ②個人タクシーの経験に関する挙証資料 ③在職証明書 (申請前に試験を受けた人のみ) ④個人タクシー試験合格者証の写し |
相続 |
①申請者と被相続人との続柄を証する書類 ②被相続人の戸籍謄本 ③自己資金の確保に関する挙証資料 (申請者以外の相続人がいる場合のみ) (申請前に試験を受けた人のみ) |
法令試験を受験する
個人タクシーの許認可を申請するときは、
申請から2年以内に法令試験に合格しなければなりません。
法令試験に不合格だった場合、試験は年に複数回実施されるため、
次の試験を受けましょう。
試験の概要については、以下の通りです。
実施月 |
営業区域により異なる |
申請先 |
【直接申込みの場合】 営業区域を管轄する運輸局 |
出題範囲 |
1. 道路運送法関係 (申請に係る営業区域が同法に基づく特定指定地域の場合のみ出題) (申請に係る営業区域が同法に基づく特定指定地域以外の指定地域の場合のみ出題) (申請に係る営業区域が同法に基づく指定地域以外の場合 のみ出題) |
受験費用 |
無料 |
試験会場 |
申込み先により異なる(役所の会議室や大学など) |
許認可証の交付を受ける
一般乗用旅客自動車運送事業の許認可の審査および法令試験に合格すると、
許認可が交付されます。
個人タクシーの開業にかかる費用
個人タクシーの開業にかかる費用は、おおよそ500万円といわれています。
では、具体的に内訳をみていきましょう。
使用目的 |
開業資金 |
一般乗用旅客自動車運送事業の許可を取得するための資金 |
200万円 |
一般乗用旅客自動車運送事業の新規許可を取得したあとに運輸局に支払う登録免許税 |
15,000円 |
個人タクシー事業の譲渡を受ける際、連合会や組合に加盟するための資金 |
150万円 |
個人タクシーを開業後、必要なガソリンや高速道路代などのための資金 |
150万円 |
個人タクシーを開業するメリット・デメリット
個人タクシーを開業するメリット・デメリットをみていきましょう。
個人タクシーを開業するメリット
まずは、メリットについてご紹介します。
頑張り次第で収入がアップする
個人タクシーは、タクシー会社に売上を納めることなく、
売上はすべて自分の者にものになります。
乗客を乗せるほど、収入アップが見込めるのです。
自由に勤務できる
個人タクシーは自身が経営者ですので、勤務日や時間を自分で決めることができます。
もちろん休みの日についても、自身で決めることが可能です。
自分の好きな車で仕事ができる
個人タクシーは、とくに車種の指定がありません。
自分の好きな車でタクシー業務ができるのもメリットといえます。
個人タクシーを開業するデメリット
続いて、デメリットをみていきましょう。
開業資金が必要
個人タクシーを開業するためには、開業資金が必要です。
具体的な金額は前述にもあったように、おおよそ500万円前後が必要ですので、
資金が無ければ、すぐに開業できるわけではありません。
経済的リスクがある
個人タクシーはじ自由に出勤できるのはメリットです。
しかし、休みを多くとると収入が減ってしまい、経済的リスクが大きくなりますので、
収入のことを考えて運営していかなければなりません。
確定申告が必要
個人タクシーは自営業になりますので、毎年確定申告する必要があります。
売上や経費など、計算間違いすることなく算出して確定申告するようにしましょう。
タクシー運転手に必要なスキル
タクシー運転手に必要なスキルには、以下のようなものがあります。
タクシー運転手に向いている人の特徴については、運転ドットコムの下記の
記事が役に立ちますので、合わせて参考になさってください。
タクシードライバーに向いている人とは?適性や性格を紹介します
運転技術
乗客を乗せて運賃をもらうタクシー運転手は、
乗客に不快感を与えないような安全運転をしなければなりません。
発進・停車時・コーナリングなど、
可能な限り緩やかに行なうことで心地の良い運転と感じてもらうことができます。
会話技術
タクシー運転手は、乗客との距離が非常に近いです。
乗客の様子を窺いながら話しかけたり、乗客からの話し対して、
柔軟に対応できる会話技術が必要となります。
ナビでは表示されない道を利用する技術
タクシー運転手は、
知らないところへ乗客を送る際はナビを利用するときがあるでしょう。
ただ、様々な道を走り回ることで、ナビには表示されない道を知ることができ、
乗客をスムーズに送り届けることが可能です。
まとめ
個人タクシーを開業する条件や必要な資格、開業方法や費用について、
ご理解深まりましたでしょうか。
個人タクシーの開業には、様々な条件を満たしていなければならなかったり、
開業資金が必要であるため、すぐに開業するのは難しいです。
もし開業することができれば、
自分の思い通りにタクシー事業を行なうことができるため、楽しく仕事できます。
本記事を参考に、個人タクシーをかい開業してみてはいかがでしょうか。