2024年問題のドライバー不足を解決するために
外国人在留資格の特定技能職種に運転手が追加されることが検討されています。
特定技能「運転手」の追加により外国人運転手の増加が見込まれるため、
企業側は受け入れ体制を整備しておくことも必要となってきます。
そこで、外国人ドライバーの雇用に必要な外国人在留資格や雇用の方法などについて詳しく解説します。
外国人在留資格の特定技能職種とは?
特定技能職種とは、人手が足りない分野で活躍する外国人労働者に対して与える在留資格です。
特定技能制度は日本が直面する労働力不足を補うために設けられたもので
「特定技能1号」「特定技能2号」に分けられています。
特定技能制度1号と2号では技能水準や在留期間などが異なるため、
違いについて理解しておかなければいけません。
以下で、特定技能制度1号と2号それぞれについて詳しく解説していきましょう。
参考:法務省「特定機能ガイドブック」
特定技能1号
特定技能1号は、日本で労働者が不足している12の産業分野で外国人が働くための在留資格です。
12の分野は下記のとおりです。
①介護
②ビルクリーニング
③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
④建設
⑤造船・船用工業
⑥自動車整備
⑦航空
⑧宿泊
⑨農業
⑩漁業
⑪飲食料品製造業
⑫外食業
特定技能1号のポイントについて、以下の表で紹介します。
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1号の資格を得た外国人労働者は、1年、6か月または4か月の更新で最大5年間日本に居住し働くことができます。
ただし、特定技能2号と異なり、1号を取得しても日本での永住権は取得できません。
また、家族の帯同が基本的に認められていません。
特定技能2号
特定技能2号は、日本で高度な技能が必要とされる職種に従事するための在留資格です。
特定技能1号から、介護を除いた11分野が特定技能2号になります。
①ビルクリーニング
②素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
③建設
④造船・船用工業
⑤自動車整備
⑥航空
⑦宿泊
⑧農業
⑨漁業
⑩飲食料品製造業
⑪外食業
特定技能2号のポイントについて、以下の表で紹介します。
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2022年以前は、「建設」と「造船・舶用工業」の2職種に限定されていました。
しかし、特定技能1号で在留している外国人の期限が迫る中で2023年に対象分野が拡大されました。
「介護」分野は別の移行先が存在するため、特定技能2号の対象からは除外されています。
特定技能2号は特定技能1号と異なり、在留期間に上限がありません。
ただし、3年、1年または6か月ごとの更新が必要です。
運転手が追加されたことで何が変わる??
特定技能に「運転手」の職種が追加されることで、外国人労働者の受け入れが拡大すると期待されています。
ここでは、特定技能に運転手が追加されることで、
今後日本の運輸業界にどのような変化が起こるのかを解説していきます。
外国人在留資格を持つ運転手が誕生する
「運転手」が特定技能に追加されることにより、
外国人が運転手として日本で働くという新たな選択肢が増えます。
これまで、在留資格により外国人が運転手として就業することは難しい状況がありました。
そのため、特定技能に運転手が加わることで、運送業界でも外国人労働者の就業がしやすくなるでしょう。
また、外国人運転手の増加によって、多様性への理解やより国際的な街づくりに期待されています。
運転手不足が解消できる
外国人運転手の受け入れ拡大により、ドライバー不足の問題解消が期待されています。
2024年問題が迫り、トラックや電車のドライバー不足が日本国内で社会的な課題です。
そのため、外国人労働者の活用はドライバー不足の解決策の1つとして注目されています。
特定技能外国人は、一定レベル以上の知識や経験をもっているため即戦力となりやすいです。
そのため、ドライバー不足を解決する方法として外国人運転手の数が増え、
ドライバー不足を解消できるかもしれません。
観光バスで外国人を受け入れやすくなる
外国人運転手の増加は、観光業界にも大きな影響を与えると考えられています。
外国人向け観光バスでは、通訳ガイドがいないと悩みを抱えているバス会社は少なくありません。
そこで、外国人労働者がバス会社に就業できれば外国人観光客へのサービスの向上につながる可能性があります。
外国人観光客にとっても、旅先で馴染み深い言葉が聞けるということはメリットです。
その結果、外国人観光客の増加にもつながり、
交通運輸業や観光業の需要の拡大につながるでしょう。
海外進出しやすくなる
外国人運転手の増加により、日本企業の海外進出を促進する効果も期待されます。
外国人労働者が母国に帰国したときには、
日本企業の海外市場での活動をサポートする人材になる可能性が大きいです。
外国人運転手の受け入れが進むことで、
日本からよりグローバルな人材や企業が生まれることが期待できるでしょう。
外国人運転手の割合はどのくらい?
外国人労働者が日本で運転手になるには難しい現状があります。
現在の日本では、一体どのくらいの外国人が運転手として働いているのでしょうか。
ここでは日本で働く外国人運転手の割合や就労が難しい理由、増加する見込みについて紹介します。
外国人運転手の割合
厚生労働省の調べによると、日本の労働市場には約182万人もの外国人労働者がいます。
しかし、外国人運転手は約6.4万人で割合は全体のわずか2.9%です。
2024年問題の解決策として、外国人労働者の運転手としての就労が期待されていますが、
実際はかなり少ない現状があります。
ドライバー不足の解決策としては、まだまだ多くの課題があるようです。
外国人運転手の就労が少ない理由
ドライバー不足から外国人労働者の受け入れを期待していますが、さまざまな問題があります。
外国人運転手が少ない理由の一つに、在留資格の問題があります。
現状、運転手専用の在留資格は存在しないため、就労不可能または制限されます。
そのため、海外で運転手の経験がある外国人でも、日本で運転手として働くことが難しいのです。
また、日本の運転免許取得のためには時間や金銭的な負担、言語の問題があります。
日本物流の低い賃金や、長時間労働といった待遇の悪さも外国人労働者の増加を妨げているようです。
外国人運転手が増加するのか?
外国人運転手が今後、増加していくと期待されています。
国土交通省より、ドライバー不足の解決策として特定技能に
「運転手」を加えるという案を出しているからです。
前述したように、在留資格の問題により外国人労働者がドライバーになりにくい状況です。
特定技能に運転手が加わることで、外国人労働者がドライバーとして就職しやすくなるでしょう。
しかし、外国人運転手が増加しにくい理由である運転免許や言語の問題も残っています。
残された問題も解決されることで、外国人労働者が増加する可能性が高まっていくかもしれません。
外国人を雇うためには?
日本で外国人を雇用するときには、いくつかのステップを踏む必要があります。
ここでは、外国人を雇用するための具体的な方法や流れについて、分かりやすく解説します。
雇う方法
外国人労働者を雇用するためには、
まず日本で働くための就労資格を有しているかを確認しなければなりません。
万が一、就労資格がない外国人を雇用してしまったら、雇用側が罰せられることがあります。
就労資格を確認するためには「在留カード」をチェックします。
まず、就労可能か、期限が切れていないか確認しましょう。
就労可能が確認できれば、賃金や労働条件を確認し、契約を結びます。
実際に雇う流れについては、次項で紹介します。
雇うための流れ
日本で外国人労働者を雇用するには、いくつかのステップを踏む必要があります。
ここでは外国人を雇うまでの流れをそれぞれのステップごとに解説していきます。
ステップ① 求人募集をする
まずは、求人サイトや知り合いから紹介してもらうなどの方法で、外国人労働者を探します。
1人雇用すると、外国人の友人を紹介してくれることもあります。
複数人雇う予定がある場合は、紹介してもらうと見つけやすいでしょう。
そして、企業の雇用条件に合った外国人労働者を見つけましょう。
ステップ② 在留資格の確認
外国人労働者を雇用するためには、日本で労働するための在留資格の確認が必須です。
日本で労働できる外国人は在留カードを持っているので、はじめに確認しておくことをおすすめします。
そして、就活可能の範囲が制限されていることがあるため、在留カードをしっかり確認しましょう。
範囲外の就労はさせられないため、確認は必須です。
ステップ③ 選考プロセスの実施
就労可能が確認できたら、履歴書や職務経歴書の審査、面接などを通じて候補者を選考します。
面接のときには、言語や文化の違いを理解した上で面接するとよいでしょう。
日本では無礼にあたることが、海外では正しい作法とされている場合もあるからです。
小さな習慣のズレにとらわれず良好なコミュニケーションを取り、
候補者の能力や適性を適切に判断しましょう。
ステップ④ 雇用契約を結ぶ
選定後に内定者を決め、雇用契約を結びます。
雇用契約はトラブルにならないように、注意事項などを詳しく記載した契約書を準備します。
また、日本語と母国語の両方が記載された契約書を作成すると説明が伝わりやすいです。
ステップ⑤ ビザ申請のサポート
採用予定の外国人労働者が在留資格をまだ持っていない場合は、ビザ申請のサポートが必要です。
まだ海外に在住しており、ビザを持っていない場合はビザの申請が必要です。
申請には1か月ほどかかることもあるため、入社日をすぎないように、早めに準備しましょう。
ステップ⑥ 入社に向けた準備
入社日が決まったら、入社に向けて準備します。
例えば事前のオリエンテーションを開催し、会社のルールなどを教えていきます。
とくに日本で初めて働く外国人は慣れないルールなどもあるため、
しっかりオリエンテーションを行いましょう。
雇用状況の申請
外国人労働者を雇用した場合、企業は雇用状況をハローワークに申請しなければいけません。
「外国人雇用状況報告制度」に基づいた取り組みです。
万が一、申請をしなければ罰金が課せられることもあります。
雇用時だけでなく離職時にも必要な申請です。
外国人労働者と雇用契約を結んだら、必ず申請を行いましょう。
参考:厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」
外国人が運転手という仕事を探す方法
「日本で運転手として働きたいと思っているけど、
どのように仕事を見つけたらいいかわからない」という外国人労働者もいるかもしれません。
ここでは、外国人向けの運転手の仕事を探す方法について解説します。
ハローワークで探す
ハローワークは、日本での職探しに欠かせない公的な就職支援機関です。
外国人労働者向けのサービスも充実しています。
専門のスタッフが居住地や希望条件に合った求人を紹介してくれるので、初めての方でも安心です。
また、ハローワークでは仕事探しに役立つ様々なセミナーや日本語のクラスも提供されています。
積極的に参加することで、希望の仕事に就ける可能性も高まるでしょう。
求人サイトで探す
インターネット上には、外国人向けの求人情報を提供するサイトが数多く存在します。
条件を細かく指定して検索することが可能です。
また、SNSを活用して情報を収集するのも一つの方法です。
同じ目標を持つ人々のコミュニティに参加することで、
貴重な情報やアドバイスを得ることができるかもしれません。
運転ドットコムで求人を検索する
外国人が日本で、運転手の仕事を探すときにお勧めしたいサイトが「運転ドットコム」です。
運転ドットコムは、運転手に特化した求人サイトであるため、信頼できる情報を提供しています。
採用担当者のメッセージなども紹介しているため、応募前から会社の雰囲気を知ることができます。
運転手の求人を探している外国人労働者にはオススメの求人サイトです。
現役外国人運転手に聞いた!体験談
これから日本で運転手として働きたい外国人は、実際の現場について詳しく知りたいでしょう。
ここでは現役外人運転手に聞いた体験談について紹介します。
~ケース①~ Mさん/女性/勤務歴5年目
アメリカから日本に移住して運転手として働き5年目です。
新しい文化や道路環境に慣れるのは初めは大変でした。
しかし、上司や同僚から支えてもらい、今では1人で任せてもらえる仕事も多いです。
また、日本に馴染むきっかけにもなり、楽しく運転手の仕事ができています。
~ケース②~ Yさん/男性/勤務歴3年目
日本で運転手になるために時間はかかりましたが、念願の観光バスの運転手になれました。
運転を通して四季折々の風景や祭りなど、日本の文化を学ぶきっかけにもなっています。
現在ではお客様とのコミニケーションも問題なくできるようになり、楽しく仕事ができています。
これからもっと色んな観光地に行き、お客様に楽しんでもらえるバスの運転手を目指しています。
~ケース③~ Hさん/男性/勤務歴10年目
アメリカから移住し、日本でタクシー運転手になりました。
初めのころは、日本の独特な道路構造や地理に戸惑いましたが、次第に慣れてきました。
また、お客様とのコミュニケーションから日本語のスキルも学べています。
今では日本の四季を楽しみながら、タクシー運転手として頑張っています。
このようにタクシー運転手になった方もいらっしゃいます。
自分にタクシー運転手が向いているのかについては下記の記事でも確認できますので
ぜひそちらも併せてご覧ください。
タクシードライバーに向いている人とは?適性や性格を紹介します
まとめ
ドライバー不足を補うため、特定技能に運転手が加わることが検討されています。
自動車免許の取得や言語の問題など課題は残されていますが、
2024年問題の解決策として期待されます。
また、外国人運転手を雇用することで、グローバル化が進むなどの可能性もあるでしょう。
外国人運転手の受け入れがスムーズにいくように、
企業側は外国人労働者の雇い方を確認しておくことをおすすめします。