トラック市場の売上はどうなっている? 動向や世界のシェア率も紹介

コラム

日本のトラック業界の現状やトラックメーカーのマーケットシェア、日本および世界の売上と売上予測、トラック業界における今後の課題などを紹介します。
トラック業界のこれまでの流れやこれからの動向の把握にお役立てください。
 

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日本のトラック業界の現状

日本のトラック業界の業界規模は2018年までは増加傾向にありましたが、2018年から2020年にかけて減少し、2021年に再び増加に転じました(業界規模4.8兆円)。
2021年のトラックシャーシの販売台数は114.7万台(前年比10.0%増)、販売金額は2兆9,986億円(前年比16.7%増)です。
2020年は販売台数、販売金額ともに減少しましたが、2021年はともに増加しました。
コロナ前の2019年と比べて販売台数は縮小していますが、販売金額は同水準まで回復しています。
2022年は半導体などの部品不足の影響を受けて国内市場のトラック販売台数が減少しましたが、海外市場の需要は堅調です。
また、国内運輸業の大規模事業所や経営状況が好転した事業所においてもトラックの購入意欲が高くなっています。
近年はトラック業界でも次世代自動車の開発が急がれています。
ディーゼルエンジンの規制強化の動きにより、2018年にはトヨタ自動車といすゞ自動車が資本提携を、2022年にはいすゞ自動車が米GMとのディーゼルエンジン生産の合弁事業を解消しました。
一方で、2021年にはトヨタ自動車といすゞ自動車、日野自動車(2022年除名)が商用車向けのCASE技術開発会社「CJPT」を設立し、同年にスズキ、ダイハツ工業が出資しています。
さらに商用車の自動運転化や電動化の技術確立の競い合いも世界的に展開されており、開発が加速しています。
例えば2018年には高速道路でトラック隊列走行の実証実験が、2022年には福岡空港のターミナルビル間で大型自動運転バスの共同実証実験が実施されました。
また、近年の日系企業はアジア市場に注力しています。
近年アジアは著しい経済成長によって物流や輸送が拡大しており、トラック市場においても大きな伸びが期待されるためです。
■出典:業界動向リサーチ

 

世界のトラック業界のシェア

トラック業界の世界シェアは海外企業が上位を占めています。
2020年のトラック業界のシェアは次のとおりです(ランキング形式で1位から10位まで記載)。

順位 企業 割合
1位 東風汽車集団(中国) 1.59%
2位 ダイムラー(ドイツ) 1.3%
3位 タタ・モーターズ(インド) 1.26%
4位 中国重型汽車集団(中国) 1.01%
5位 いすゞ自動車(日本) 0.95%
6位 日野自動車(日本) 0.91%
7位 中国第一汽車集団(中国) 0.91%
8位 トレイトン(ドイツ) 0.63%
9位 陜西汽車集団(中国) 0.62%
10位 ボルボ(スウェーデン) 0.60%


※商用車・トラックメーカー各社の販売台数を分子に、市場規模(販売台数ベース)を分母にして算出。

■出典:商用車・トラック業界の世界シェアと市場規模 | ディールラボ

 

トラック業界のM&A

2000年代は大手自動車メーカーが車両のフルライン化を目指しましたが、2010年後半からはトラックやバス事業を分社化する動きが続いています。

2005年 ダイムラークライスラーが三菱ふそうを子会社化
2007年 ボルボが日産ディーゼル工業(現UDトラックス)を子会社化
2019年 VWがトレイトン(VWのトラック・バス部門)を上場 いすゞ自動車がUDトラックスの買収を発表
2020年 トレイトンがナビスター・インターナショナルの買収を発表

2021年
ダイムラーがダイムラートラック(ダイムラーの商用車部門)を分社化

 

大手トラックメーカーの紹介

大手トラックメーカーを5社紹介します。
 

Dongfeng Motor(東風汽車、ドンファン)

1969 年に設立された中国の国有自動車メーカーです。商用車(軽〜大型、特装車まで網羅)や乗用車などを生産しています。世界中で高い知名度を誇り、2018年の売上高は900億ドルに達しています。

Volvo Group (ボルボ)

1927 年に設立された多国籍企業で、本社はスウェーデンにあります。トラックやバス、建設機械などを生産しています。2022年の純売上高は445億ユーロに達しました。

First Automobile Works Group(第一汽車)

1953年に設立された中国最古の国有自動車メーカーです。トラックから乗用車まで幅広い車種を生産しています。2021年の売上高は7,057億元に達しました。

Beijing Automotive Group(北京汽车工业控股)

1958年に設立された中国の国有自動車メーカーです。自社ブランドのほか、ベンツなどの海外ブランドの合弁会社の下でも車両を生産しています。2022年時点でBAICの年間収益は4,500億元を超えています。

Daimler AG(ダイムラー)

1926年に設立されたドイツに本社をもつ多国籍自動車企業です。2021年に商用車部門をダイムラー・トラック・ホールディングスとして分離して上場させ、ダイムラー自身も2022年にメルセデス・ベンツ・グループへと社名を変更しました。2022年のグループ収益は1,500億ユーロに達しています。

トラック業界の売上

2021-2022年のトラック業界の売上高(ランキング形式)は次のとおりです。

順位 企業 金額
1位 いすゞ自動車 2兆5,142億円
2位 日野自動車 1兆4,597億円
3位 三菱ふそうトラック・バス 6,573億円
4位 UDトラックス 2,686億円


■出典:トラック業界 売上高ランキング(2021-2022年)

以下、トラック業界の売上予測を紹介します。
 

日本のトラック業界の売上

商用車全体では、2050年度末の保有台数は1,142万3,000台(20年度比24.7%減)、新車販売台数は48万4,000台(20年度比39.1%減)と予測されています。
予測の前提となる商用車主要ユーザー産業(建設業、運輸業、製造業、農業、卸売業、小売業)の動向は次のとおりです。

【建設業】

東京五輪や震災復興需要の終了、世帯数や人口減少による新築住宅の需要減少などにより、マイナス成長が見込まれています。


【運輸業】

EC市場の成長により部分的に増加する一方で、住宅建設の減少、新型コロナの影響による世界経済の減速、ドライバー不足などによる事業者数減少などのマイナス要因が大きく、縮小する見通しです。


【製造業】

生産労働人口の減少や生産拠点の海外移転増加により、新型コロナ感染拡大以前から減少傾向にあります。新型コロナによる経済活動低下により業績が悪化し、マイナス成長が加速すると予測されています。


【農業】

農業従事者の高齢化や後継者不足が進展し、農業産出額が減少していく見込みです。


【卸売業】

直販の進展により業界全体が縮小傾向にあり、今後も縮小傾向が続く見通しです。


【小売業】

EC市場の拡大やインバウンド需要の増加により拡大傾向にありましたが、新型コロナの影響によるインバウンド需要の大幅減少によって全体としては縮小の見込みです。EC市場の拡大も実店舗での販売減と相殺され、国内の消費支出も低迷が続くとみられることから、今後は横ばい傾向になると予測されています。また、事業者の大規模化による小規模事業者数の減少が続くとみられています。


■出典:3. 商用車市場の見通し

 

世界のトラック業界の売上

2022年の大型トラックの市場規模は2,045億6,000万米ドルであり、今後5年間で3,139億5,000万米ドルに達すると予測されています。
2022-2027年のCAGR(年平均成長率)は約7.4%で推移する見込みです。
新型コロナの大流行により物流やサプライチェーンが寸断され、大型トラックの生産が減少しました。
しかし近年OEM(自動車メーカー)が大規模な投資を行うことで生産を再開しようとする動きがあります。
そのため、予測期間中に市場の成長が期待されています。
長期的には自動車の排ガス規制の高まり、自動車の安全性の向上、物流・小売・ECの急成長により、世界中で新型・高機能トラックの需要が高まる予想です。
さらにより高い積載重量と強力なサスペンションシステムを備えたパワフルな車両や、燃費の良いトラックへのニーズの高まりが市場の需要を押し上げる可能性も示唆されています。

■出典:大型トラック市場- 成長、動向、COVID-19の影響、予測(2023年~2028年)

 

今後のトラック業界の動向

サービスやデジタル体験も含めた商品価値の設計など、車づくりの発想が変化してきています。
トラック業界の経営層の64%がデジタル改革を重要な生き残り戦略と考えている一方で、既にデジタル変革が進んでいると答えた先駆者企業(業績が良く革新的な考えをもつ企業)は37%にとどまっています。
デジタル変革推進における主な課題は次の4つです。
 

1.新しい顧客体験の提供

運転者機能の強化など、デジタル技術による新しい顧客体験の提供と、それによるブランド価値の向上が求められています。

 

2.イノベーションと成長戦略

収益向上のためのイノベーションと成長戦略が必要です。現在売り上げの多くを占めているトラックそのものやアフターマーケットから付加価値を提供する事業へと、売上構造の大きな変化が予想されています。

 

3.働き方の改革

イノベーションと成長戦略を支える働き方の改革が進んでいます。変革の鍵となるのは「プラットフォーム化」「自動化」「データ活用」の3つです。

 

4.新たな専門性

デジタル変革や成長戦略を実行するために必要な専門性をもつ社員の獲得が課題となっています。社員のリスキルとアップスキルの仕組みを導入するなど、トラック業界の教育予算は今後10年間で70%増加するとの見通しです。

■出典:経営層が展望するトラック業界の10年。求められるデジタル・リインベンションの4要素

 

まとめ

トラック業界の今後の市場規模は国内では減少が、国外(特にアジア)では増加が見込まれています。
ただし国内でもトラックの購買意欲は高く、さらにトラック業界においても次世代トラックや自動運転トラックなどの開発が急がれています。
このような自動車業界の変化に立ち向かうため、企業などが協調して開発に取り組んでいくのがよいでしょう。
 

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