
他の業種と同様に、トラックドライバーという職種にも定年制度があります。
運送業界では人手不足の影響もあり、65歳以上の高齢者でも働くケースが増えてきました。
2025年現在、高齢者ドライバーの活用はますます注目されており、各運送会社もさまざまな対応を進めています。
「トラック運転手は65歳を過ぎても現役として働けるのか?」
「高齢者を雇用する際に企業側が配慮すべき点は何か?」
といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
特に、安全運転や体力面への不安を抱える声も少なくありません。
しかし、近年では運転免許の自主返納や高齢者向けの運転適性診断の制度も整備されつつあります。
定年後も働きたいという方は、自身の体調や生活スタイルに合った働き方を探すことが重要です。
本記事では、トラックドライバーの定年制度の仕組みや、法律の改正によって変わったポイント、企業側が高齢者を採用する際に押さえておきたい注意点について、わかりやすく解説していきます。
さらに、中型免許や大型免許の取得状況、定年後の再雇用制度、全国的な雇用の傾向についても最新情報を交えながら紹介していきます。
トラックドライバーの定年とは?65歳以上の雇用と高齢者活躍の可能性
トラックドライバーとしての定年の年齢や制度の運用方法は企業ごとに異なっており、一律ではありません。
特に運送業界では、定年が明確に設定されていない求人も多く、高齢者の活躍の場が比較的広いのが特徴です。
中には、定年制を設けていない中小企業や、正社員に限らず契約社員・嘱託社員として65歳を超えても継続して働ける運送会社もあります。
中型トラックの運転免許や、長年の実務経験がある方であれば、年齢にかかわらず採用されるケースも少なくありません。
実際、街中で走る車両を見てみると、高齢のトラック運転手が日常的に業務をこなしている光景は珍しくないでしょう。
トラックドライバーは、学歴や年齢に関係なく中途採用の門戸が広く開かれていることが多く、中卒・高卒の方でも応募しやすい職種といえます。
また現在では、トラック運転手の定年後再雇用や継続雇用の制度も多くの企業で導入されています。
こうした背景には、物流を支える人材の不足や、現役世代の減少という社会的課題も関係しています。
高年齢者雇用安定法の改正とは?
「なぜ60歳を超えても多くのドライバーが働き続けているのか?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
それには、高齢者の就労を支える法律的な整備が深く関係しています。
特に注目すべきなのが、「高年齢者雇用安定法」の改正です。
この法律は2021年(令和3年)4月1日から施行され、70歳までの就業機会の確保を企業に努力義務として求めるものです。
以下のようなポイントが主な改正内容とされています。
(1)70 歳までの 定年の引上げ
(2)定年制 の廃止
(3)70 歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入 (特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
(4)70 歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70 歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
企業は、これらのいずれかを実現するための努力を求められており、年齢にとらわれず働き続けたいという高齢者を支援する環境が広がっているのが実情です。
特に運送業においては、人材不足への対応策として高齢ドライバーの雇用は今後も増えると考えられています。
引用:高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保 - 厚生労働省
65歳以上でも働けるの?
結論として、トラックドライバーは65歳以上でも問題なく働くことが可能です。
むしろ、需要がある職種であり、実際に高齢者が現場で活躍しています。
国土交通省が発表した「トラック運送業の現況」によると、ドライバー全体の約45.2%が40~54歳で、60歳以上の割合も15%前後とされています。
これは、他業種と比較しても高齢者が多く従事していることを示しており、運送業が高齢者にとって働きやすい環境であることを物語っています。
もちろん、年齢とともに体力的な負担や注意力の低下といったリスクもありますが、勤務時間を短縮したり、軽貨物など比較的負担の少ない配送業務に限定した勤務形態を導入している会社も増えています。
また、運転免許の更新にあたっては、認知機能検査や高齢者講習といった一定の条件が求められるため、自身の健康状態を把握しながら無理なく働くことが大切です。
タクシードライバーとして活躍する道も
トラックドライバー以外にも、高齢者が活躍しやすい運転職種として「タクシードライバー」があります。
特に、力仕事が少なく、勤務スケジュールも柔軟に調整しやすいため、65歳以上の方でも継続しやすい職種として人気があります。
実際に、厚生労働省や業界団体の調査では、タクシードライバーの平均年齢は全職業平均より16.5歳高く、60代・70代のドライバーも多く在籍しているという結果が出ています。
普通自動車免許(第一種)で業務に就くことができる点も、トラック運転手とは違う大きなメリットです。
現在では、高齢者向けに特化したタクシー会社や、地域密着型の運行サービスも登場しており、自分に合った働き方を選びやすい時代になっています。
定年後の再就職先として、タクシー業界を視野に入れる方も増えている状況です。
高齢ドライバーを雇用するのに気を付けること
近年の運送業界では、深刻な人材不足が続いており、多くの企業が高齢者の雇用に前向きな姿勢を示しています。
体力に自信のある高齢者や、運転免許を活かして再就職したいと考える方のニーズが増加傾向にあります。
高齢ドライバーを新たに雇用することで、経験豊富な人材を確保できるというメリットがある一方で、雇用側としては健康状態や業務内容への配慮など、さまざまな観点からの対応が求められます。
ここからは、高齢者をドライバーとして採用する際に配慮すべき重要なポイントを解説していきます。
高齢ドライバーに配慮した安全管理
高齢者の場合、加齢にともなう判断力や反射神経の低下が見られることもあるため、事故のリスクを減らす工夫が必要です。
特に運転業務では、予期せぬ事態に即座に対応する能力が問われる場面が多くあります。
そこで、高齢ドライバーが使用する車両には、車線逸脱警報、ブレーキアシスト、後方確認センサーなどの運転支援装備の搭載が有効です。
こうした機能は、操作ミスや見落としの防止につながり、トラック業務全体の安全性向上に貢献します。
さらに、最新の運送システムやドライブレコーダーの導入も、高齢ドライバーのサポートとして有効です。
業務に関連するICTツールの利用により、事故リスクや運行状況の管理を行いやすくなります。
心身の状態変化を踏まえた健康管理の強化
高齢になると、免疫力の低下や疲労蓄積のしやすさが目立ってきます。
体調の変化は業務に大きく影響するため、運転前の体調確認は欠かせません。
特に運送会社においては、健康診断の頻度を上げることや、日々の体調チェックを仕組み化する取り組みが求められます。
また、ドライバー自身が「疲れている」と感じた際に遠慮なく報告できるよう、職場の雰囲気づくりも重要な要素です。
日常的なストレスや不眠などの兆候も見逃さず、健康面からサポートする制度を整えることが、高齢ドライバーが長く働くための土台になります。
業務負荷を軽減する工夫
年齢とともに体力が衰えやすくなるため、ドライバーの業務においては、負荷の軽減が大切です。
高齢ドライバーが無理なく勤務できるように、以下のような工夫を取り入れることがポイントです。
・運転時間や労働時間の短縮
・長距離運転を避けたシフト設定
・休憩回数をこまめに確保
・ストレッチや軽い運動の推奨
特に、同じ姿勢で長時間過ごすことは血流の悪化や疲労感の蓄積を引き起こします。
出発前や休憩中に軽い運動を取り入れることは、集中力を保ち事故の予防にも役立ちます。
また、仕事内容や業務範囲を再設計し、重い荷物の積み下ろし作業が少ないルートや車両の割り当てを行うことも高齢者への配慮として重要です。
賃金制度などによるモチベーション管理
定年前後で業務内容に大きな変化がないにも関わらず、賃金だけが大幅に下がるような制度では、ドライバーのやる気を損なう可能性があります。
そのため、定年後に雇用を継続する場合は、賃金が下がる理由や給与体系の仕組みについて丁寧に説明し、納得を得ることが大切です。
また、努力や貢献に対して適切に報酬が与えられる制度を導入することで、従業員のモチベーション向上に繋がります。
たとえば、勤務態度や運行実績をもとにした評価制度、無事故無違反への報奨制度などは、年齢に関係なく誰にとっても励みになる要素です。
高齢者の活躍が評価されることで、周囲のスタッフにも良い影響を与え、社内の雰囲気やチームワークの強化につながる魅力的な循環が生まれるでしょう。
高齢者を配慮した社内制度や仕組みづくり
高齢ドライバーが安心して長く働ける環境を整えるためには、制度面でも工夫が必要です。
勤務時間や業務内容だけでなく、職場内でのつながりを重視した仕組みづくりも効果的です。
たとえば、社内イベントや勉強会への参加を促し、世代を問わずコミュニケーションが取れる場を設けることで、職場への帰属意識や働きがいが高まります。
給与だけでなく、「人と関わる機会がある」「頼りにされていると感じる」といった心理的な要素も、高齢者が働く理由として大きな割合を占めているという調査もあります。
さらに、運送業界全体で見ると、高齢者雇用に積極的な取り組みを行う企業が増加していることも注目すべき点です。
運営会社としては、高齢ドライバーを一時的な人材確保と見るのではなく、長期的な戦力として位置づける視点が必要になってきています。
高齢ドライバー向けの求人を探す際のポイント
トラックドライバーの人手不足を背景に、高齢者の雇用に積極的な企業が増えています。
年齢を重ねても働きたいという方にとって、求人の選び方は非常に大切です。
ここでは、高齢ドライバーが無理なく長く働くために、求人探しで意識したいポイントを詳しく紹介します。
求人を探す方法はいろいろある
高齢ドライバー向けの求人を探すには、まず情報収集の手段を知ることが大切です。
一般的な求人サイトだけでなく、ハローワーク、地域の就職支援センター、地元の新聞広告なども活用できます。
最近では、「シニア歓迎」「年齢不問」「未経験OK」「60代活躍中」などの表記がある求人も増えており、年齢制限のない職種や運送会社が以前よりも多く見られるようになってきました。
また、企業によっては自社のホームページやSNSで採用情報を公開していることもありますので、検索エンジンで直接探す方法も有効です。こうした多様な検索ルートを活用することで、自分に合った求人に出会える可能性が広がります。
勤務条件や仕事内容の確認が重要
求人情報を探す際は、単に給与や勤務場所だけでなく、自分の体力や生活スタイルに合った条件かどうかをしっかり確認しましょう。
とくに以下のような点は、高齢ドライバーにとって重要です。
・長距離運転や深夜運転の有無
・荷物の積み下ろし作業の頻度
・週の勤務日数や勤務時間の柔軟性
・雇用形態(正社員、契約社員、パートなど)
また、中型免許のみで運転できる小型・中型トラックの配送業務や、決まったルートを回る「ルート配送」のような職種であれば、身体的な負担が比較的少ないため、高齢の方にも向いています。
待遇面と評価制度もチェックする
高齢ドライバーが無理なく働き続けるには、待遇面の納得感も大切です。
求人情報をチェックする際には、以下のような待遇の有無を確認しましょう。
・社会保険・厚生年金の加入可否
・通勤交通費の支給
・昇給・賞与の有無
・再雇用制度や継続雇用制度の詳細
・無事故手当や長期勤続表彰などの制度
さらに、頑張りや経験が正当に評価される環境であるかどうかも見極めておきたいポイントです。
ドライバーとしての経験が豊富な方ほど、「評価されている」と実感できる職場ではモチベーションを維持しやすくなります。
職場の雰囲気やサポート体制も確認
高齢者が長く働き続けるには、会社の風土や人間関係の良さも非常に重要です。
面接時や企業の説明資料から、以下のような点も確認してみてください。
・同年代の社員が在籍しているか
・高齢ドライバーに対する研修や指導制度があるか
・業務中に困ったときの相談先やサポート体制が整っているか
求人を探す際には、自分の希望条件だけでなく、実際に続けられるかどうかという視点を持つことが重要です。
勤務時間や仕事内容が理想的でも、体力的に無理があれば継続は難しくなります。
だからこそ、自分の年齢や体調に合った働き方を優先して選ぶことが、長期的に働くうえでの成功のカギです。
高収入や好待遇だけに目を向けるのではなく、実際の勤務イメージを想像しながら選ぶと、より自分に合った職場を見つけやすくなります。
まとめ
トラックドライバーという職種では、定年を迎えた後も働き続けている方が多く見られます。
特に大型トラックを使用する業務では、重い荷物の積み下ろしが少ないケースもあるため、体力的な負担が軽減されやすく、高齢者にとって働きやすい環境といえるでしょう。
また、運送業全体で人手不足が続いている背景もあり、65歳以上でも活躍できる場が用意されているのは大きな魅力です。
これまでの経験や中型・大型の運転免許を活かして、定年後も現場に立つ方は少なくありません。
ただし、定年後は待遇や給与が見直されることも多く、場合によっては収入が大きく下がるケースもあります。
そのため、本人のモチベーション維持を図るためには、企業側が賃金制度や業務負荷、勤務時間などに配慮しながら、継続しやすい職場環境を整えることが重要です。
今回ご紹介したような注意点を押さえ高齢者が安心して働ける体制を整えることで、ドライバー本人のやる気を保つだけでなく、職場全体の士気向上にもつながります。
高齢ドライバーの存在が社内に好影響をもたらすことも多いため、サポート体制や働き方の見直しを進めることが、これからの運送業における重要なポイントといえるでしょう。