トラック運転手の労災は多い?労災防止の対策も紹介

コラム

トラック運転手は運転業務が主であるため、「労災の件数が多いのではないか」と疑問に感じたことのある人は多いと思います。
本記事ではトラック運転手の労災事情や事例、労災を防ぐ対策について解説します。

 

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トラック運転手の労災は多い?

讃岐新聞の調査によると、トラック運転手の労災は2021年の時点で全体の3割を占めているようです。
トラック運転手の仕事は、基本的に納品時間が朝になってしまうなど長時間労働になることが多いです。
そのため、徐々に疲労が蓄積されることで脳梗塞などの病気を患い倒れる人が続出しています。
労災の件数を少しでも減少させるために、厚生労働省では2024年4月にトラック運転手へ新たな労働基準を設けています。
具体的には月の拘束時間は原則284時間で、終業から次の始業までの間隔を引き延ばす対策が取られました。
労働基準の改正により、将来的にトラック運転手の労災の件数は減少していくと考えられるでしょう。
出典:

讃岐新聞

厚生労働省「トラック運転手の労働時間等の改善基準のポイント」

 

運転手の労災種類

労災

運転手の労災は業務災害と通勤災害に分けられますが、知らないという方も多いと思います。
運転手における労災の種類についてそれぞれ解説します。

 

業務災害

業務災害とは、労働者が業務上の災害によって怪我したり死亡した際に認められます。
例えばトラック運転手であれば、積み込み作業を行う際に荷物を足に落として骨が折れたなどです。
ただし業務時間内でも下記のようなケースは、業務災害と認められないため注意が必要です。
・業務時間中に酒を飲みながら作業し、怪我を負った

・業務中にプライベートな内容で同僚ともめて殴り合いになった

・任意参加の社員旅行で怪我をした

出典:アトム法律事務所「事故慰謝料解決ナビ」

 

通勤災害

通勤災害とは、労働者が通勤途中に怪我をしたり死亡した際に認められます。
下記のようなことが通勤途中として認められます。
・住居と就業場所の往復

・就業場所から他の就業の場所への移動

・単身赴任先と家族の住む住居間の移動

具体的には普段通りの交通経路を通る際に、車に跳ねられるなどの事故に巻き込まれる、忘れ物を取りに帰る途中で怪我をするなどです。
ただし、通勤とは関係のない行為を行ったりすれば通勤途中として認められないので注意しましょう。
出典:アトム法律事務所「事故慰謝料解決ナビ」

 

腰痛は労災として認められるか

労働基準法施行規則35条に基づく別表1の2によると、以下のように表記されています。
・「重量物を取り扱う業務、腰部に過度の負担を与える不自然な作業姿勢により行う業務その他腰部に過度の負担のかかる業務による腰痛」 上記の要件に該当するため、腰痛は基本的に労災として認められますが、業務災害を起因とする場合のみであることに注意しましょう。
そのため腰痛が労災として認められるには、長時間運転により生じた、荷物の積み下ろしによって生じたなどと結論付ける必要があります。
出典:厚生労働省「労働基準法施行規則別表第1の2」

 

労災の事例

労災

労災が認められる事柄としてイメージが湧かない人も多いと思います。
労災の具体的な事例について3つ紹介します。

 

事例①

積み込み作業中にトラックの荷台から転落した事例について紹介します。
作業員が被災者に対して、荷物の積み込みをお願いしたのですが一向に終わる気配がなく確認しに行きました。
確認すると、被災者がトラックの横に倒れていることがわかりました。
おそらく誤ってトラックの荷台から落下したのではないかと考えられます。
今回の原因としては、以下のことが考えられます。
・高い所で作業をする際の安全確認を怠っていたこと

・最大積載重量13tトラックの荷台上で作業を行う際に保護帽を着用していなかったこと

・会社全体でトラックの荷台で作業を行うための、保護帽や安全帯の適切な管理が行われていなかったこと

出典:労災無料相談センター

 

事例②

荷下ろしの際に起きた労災の事例について紹介します。
被災者を含む労働者4人と荷物を運搬してきた運転手は、トラックで運搬された機械(1.2t)を積み下ろす作業を実施していました。
具体的にはまず、キャスターに乗る機械をトラックの荷台からテールゲートまで移動させます。
移動させたら、リモコン操作でテールゲートを地面の高さまで下げた後、倉庫の奥に運ぶ作業です。
3台目の機械をテールゲートに移動させた際に、トラックが後方に傾き機械が落下して被災者が下敷きになる事故が発生しています。
今回の原因としては、以下のことが考えられます。
・傾斜のある場所にトラックを止めて作業をしていたこと 積み降ろし作業は、トラックの後ろ側を倉庫の入り口に向けて行われていたが、入り口に向かって地面が下っていたにもかかわらず、修正治具などは使われていなかった。
このため、荷が後方に傾きやすい状態であった。
・テールゲートの最大積載荷重を超えていたこと テールゲートの最大積載荷重は、1tであるのに対し、荷重は1.2tであった。
このため、トラックの後方が沈みやすい(前方が浮き上がりやすい)状態であった。
・事前に、作業手順や作業方法が定められていなかったこと 今回の作業では、作業指揮者が定められておらず、作業方法や作業分担なども特に定められていませんでした。出典:労災無料相談センター

 

事例③

トラック運転手が、長距離走行中に脳出血を発症して死亡した事例について紹介します。
被災者は、運送会社の大型トラック運転手として東北方面から関西・関東方面へと運搬業務を担っていました。
発症当日は、午後3時から午後11時ごろまで休みを取る間もなく勤務し続けた後、休憩・仮眠をとっていました。
翌日の午前2時ごろに車の外で意識不明となり、倒れている場面を発見されて病院に搬送されましたが脳出血による死亡が確認されています。
今回の原因は、以下のことが考えられます。
・被災者の過剰な業務や異常な環境が、被災者の高血圧症の自然経過を超えて、血圧の急激な上昇を引き起こし、高血圧性脳内出血を発症させた。
つまり、被災者の業務は、発症の数日前から日常の業務に比較して過剰な業務であった。
発症前日も深夜まで仕事に従事し、その後車内に就寝する等一般的日常とは異なる環境にあったと考えられ、これにより血圧の上昇を引き起こしたと思われる。
さらに、排尿のために冬の深夜に車外に出た結果、血管の急激な収縮を引き起こし、血圧が上昇した可能性も考えられる。

出典:労災無料相談センター

 

労災を防ぐためには?

労災には脳出血のような重大な病気が発生するなどさまざまですが、可能な限り防げるのであれば防ぎたいものです。
「労災を防ぐためには何をするべきか」と疑問に感じる方も多いと思います。
労災を防ぐためには、何をするべきか解説します。

 

荷役作業の安全対策を強化

厚生労働省の調査によると、運送業における労災の約9割が荷役作業に集中しています。
そのため、労災を少しでも削減するには荷役作業の安全対策を強化する必要があるでしょう。
荷役作業におけるさまざまなリスクと安全対策は、下記の通りです。
リスク 安全対策 昇降設備や脚立を使用する際の、転落・転倒 玉掛け作業で荷台へ昇降&荷のロープ掛けであおり等へ昇降する場合、昇降設備の利用を心がける。
貨物運搬中、滑って転倒するリスク ・貨物運搬作業前に、運搬通路を確認する。
・通路面の水や油、スロープ等を確認し、あれば拭き取るか養生する。
フォークリフトの走行中、急停止、急発進、急旋回、急加速のリスク ・フォークリフトの運転手に対して、繰り返しの実地指導を実施。
・フォークリフトの作業領域と他の作業者の領域を分離する。
・制限速度を明示して、遵守させる。
荷物の巻き下げ中に、荷物の下に入ったり、荷物と接触するリスク ・荷物の下に入らないように介錯ロープの使用や作業指揮者の選任。
・立ち入り禁止措置を講じる。
・床に荷物を置く位置の表示。
不安定な姿勢のまま荷物を持ち上げることによる腰痛のリスク ・背筋を垂直に保ち、膝を曲げ、膝を伸ばしながら荷物を持ち上げるなど適切な作業姿勢の教育。
・重い荷物は、複数人で運ぶ。
・無理な姿勢で作業を行わない。
・腰痛防止サポーターの着用を励行する。
出典:厚生労働省「運輸交通業における労働災害防止のために」

 

長時間労働の是正

運送業界は長時間労働による過労運転や過重労働が多発しています。
長時間労働によるリスクは家庭環境や健康状況のほか、交通事故の原因ともなるため、社会的に改善が求められているのです。
厚生労働省によるとトラック運転手の過労運転・過重労働を防止し、労働時間等の労働条件を改善するために以下のようなことが述べられています。
(1)貨物自動車運送事業者が労働基準法に定める労働時間等の規定のほか、改善基準告示等に定める 拘束時間や運転時間の限度を遵守した運行計画を立てられるように、発注条件をあらかじめ明確にし た計画的・合理的な発注を行うとともに、急な発注条件の変更は行わないこと。
(2)適正かつ安全な運行を確保するため、トラック運転者の休憩時間、運行経路の渋滞等を考慮した 配送時刻を設定すること。
(3)手待時間を少なくすることができるように、荷受、荷卸の時間帯の設定等について考慮すること。
(4)運送契約においては、貨物自動車運送事業者が事業の適正かつ合理的な運営が確保できるように すること。
出典:厚生労働省「運輸交通業における労働災害防止のために」

 

まとめ

本記事では、トラック運転手の労災問題について紹介しました。
トラック運転手の労災は、日本全体の約3割も占めており多くの人が事故や健康被害に遭っていることがわかるでしょう。
トラック運転手の中には、脳出血など重篤な病気を患い亡くなる方も存在します。
背景には、荷物の積み下ろしなどの際の安全対策を怠る、長時間労働による過労運転・過重労働が挙げられます。
荷役作業を行う際には、厚生労働省が述べている適切な姿勢で実施する、実施指導を行うなど対策を講じることが大切です。
長時間労働による過労運転・過重労働については、厚生労働省が言及する労働時間等の労働条件改善について適切に理解するようにしましょう。

 

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