トラックドライバー必須の運行指示書とは?作成方法も紹介!

コラム

運行指示書は、トラックで長距離輸送を行うときなどに必要となる書類です。
運行指示書が必要なケースや作成方法、運用方法、行政処分などについて解説します。

 

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運行指示書とは?

運行の経路や日時などが記された帳票(書類)のことです。
主にトラックでの長距離輸送や貸切バスで必要となります。
運行指示書の作成や、ドライバーに作成した指示書を携帯させることなどが義務付けられています。
2016年に長野県のバイパスで発生し、乗員乗客15名が亡くなったスキーツアーバス事故では、不適切な運行指示書が問題となりました。
事故を起こしたバスを運行していた会社が作成した運行指示書に、運行経路が記載されていなかったことが判明しています。
ドライバーの安全を確保し、悲惨な事故を防ぐためにも適切に作成しましょう。

 

どのような場合に必要?

2泊3日以上の運行など、乗務前後のいずれも対面で点呼を行うことができない場合に必要となります。
ドライバーの乗務前または乗務後に、対面で点呼を行う場合には作成義務はありません。
作成した運行指示書は、運行ごとにドライバーに携帯させます。
また、乗務前後の点呼がいずれも対面で行えないドライバーに対しては、電話などで乗務途中の点呼(中間点呼)を行います。
そのため、乗務前後の点呼に加えて中間点呼を実施しなければなりません。
このときの中間点呼は義務となるため、忘れずに行いましょう。
■参考:中間点呼及び運行指示書について

 

記載する内容

次の内容を記載する必要があります。
・運行開始の地点と日時

・運行終了の地点と日時

・乗務員の氏名

・運行の経路と主な経過地の発着日時

・注意が必要な運行箇所の位置

・その他、運行の安全を確保するために必要な事項 場合によっては次の記載も必要です。
・休憩がある場合、乗務員の休憩地点と休憩時間

・運転や業務の交替がある場合、乗務員の運転または業務の交替地点

■出典:貨物自動車運送事業輸送安全規則 第9条の3 | e-Gov法令検索

 

運行指示書の作成方法

運行指示書の作成方法

運行指示書は、手書きまたはパソコンで作成してください。
手書きの場合は市販の帳票を使用したり、プリントアウトした様式に手書きで記載したりする方法があります。
パソコンの場合は、トラック協会などで公開されている様式を使用する方法が一般的です。
以下で紹介する3つの様式は、いずれも無料で公開されています。
書式やファイル形式が異なるため、自社に合ったものをダウンロードして利用ください。
■様式ダウンロード | 奈良県トラック協会

公益社団法人奈良県トラック協会で公開されている様式です。


PDF形式の様式をダウンロードできます。
■帳票類様式集| 徳島県トラック協会

一般社団法人徳島県トラック協会で公開されている様式です。
Excel形式の様式をダウンロードできます。
また、PDF形式の記載例も公開されています。


■事業法関連帳票サンプル|大阪府トラック協会

一般社団法人大阪府トラック協会で公開されている様式です。
PDF形式とExcel形式の2つの様式をダウンロードできます。
また、どちらの形式も縦型と横型の2種類があります。
また、運行指示書の作成にあたっては「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」を遵守しなければなりません。
なお、改善基準告示は2024年4月から改正が適用されます。
ここでは現行の改善基準告示の要点と、2024年以降の主な改正点を紹介します。
詳細は出典にてご確認ください。
【拘束時間の要点】

始業時刻から終業時刻までの時間(労働時間と休憩時間の合計)のことを拘束時間といいます。
運転や点検などの作業時間のほか、荷待ちや待機などの手待ち時間も労働時間に含まれます。
1か月の拘束時間は293時間以内です。
労使協定を締結した場合は、年6か月まで320時間以内に延長できます(ただし、年間3,516時間を超えないこと)。
1日(始業開始から24時間)の拘束時間は、13時間以内が基本です。
最長でも16時間以内(かつ15時間を超えるのは週2回まで)にします。
改正後は1か月284時間(最大310時間)、年間3,300時間(最大3,400時間)となります。
【休息期間の要点】

勤務と勤務の間の時間(ドライバーの完全な自由時間)が休息期間です。
1日につき連続8時間以上必要です。
改正後は連続11時間(最低でも連続9時間以上)となります。
【休日の要点】

休息期間と24時間の連続した時間の合計を休日といいます。
基本は32時間以上、最低でも30時間以上必要です。
隔日勤務の場合は44時間以上必要になります。
なお、連休の2日目は24時間以上で休日として処理できます。
【運転時間の要点】

2日間平均で1日9時間以内に、2週間平均で週44時間以内にしなければなりません。
さらに連続運転は4時間以内とされているため、4時間以内または4時間経過直後に30分以上の休憩等の確保(運転を中断させること)が必要です。
何回かに分けて運転を中断させる場合は、1回あたりの時間が最低10分以上となるようにします。
【特例】

4つの特例とその内容について簡単に説明します。
分割休息は、継続8時間以上の休息期間をどうしても与えられない場合に適用できます。
一定期間の全勤務回数の2分の1以内の回数であれば、休息期間を拘束時間の途中や直後に分けて付与できるというものです。
休息期間取得前後の点呼のほかに、中間点呼も必要となるため、1泊2日であってもドライバーに運行指示書を携帯させてください。
このときの休息期間は1回につき連続4時間以上、1日につき合計10時間以上です。
2人乗務の特例は、1台のトラックにドライバーが2人以上乗務し、さらに車内に身体を伸ばして休息できる設備がある(トラックであればキャビンにベッドがある)場合に適用できます。
このときの最大拘束時間は1日20時間以内、休息期間は連続4時間以上です。
なお、仮眠は休憩または労働時間扱いとなります。
隔日勤務(1日おきの勤務のことで、1日で2日分の乗務を行う)は、業務上どうしても隔日勤務に就かせなければならない場合に適用できます。
タクシー業界では一般的ですが、トラック輸送ではあまり行われません。
このときの拘束時間は2日間で21時間以内です。
ただし、仮眠施設などで夜間に4時間以上の仮眠をとらせるのであれば、2週間につき3回まで24時間(ただし2週間あたりの拘束時間は計126時間以内)に延長できます。
また、勤務終了後の休息期間は連続20時間以上必要です。
勤務途中でフェリーに乗船する場合の特例もあります。
乗船時間は休息期間に計上できますが、2人乗務の場合を除き、減算後の休息期間は下船時刻から勤務終了時刻までの時間の2分の1以上必要です。
【時間外労働と休日労働の要点】

拘束時間はいずれも1日16時間以内、1か月293時間(労使協定がある場合は320時間)以内にします。
また、休日労働の回数は2週間につき1回までです。
これらの労働が行われたときには、「時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)」を届け出ます。
なお、改正後には時間外労働の上限(年960時間以内)が設けられます。
■出典:

自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示) |厚生労働省

このほか「貨物自動車運送事業の事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準」より、1運行(出発から帰着まで)の拘束時間は144時間以内にしなければなりません。
■出典:「貨物自動車運送事業の事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準」 (国土交通)

 

誰が作成するのか

運行管理者または運行管理者から指示された運行管理者補助者(以下「補助者」という)が作成します。

 

運行指示書の運用方法は?

正副2部の運行指示書を作成したうえで、原本をドライバーに携帯させてください。
写しは営業所で保管しますが、運行計画に変更があった場合は、内容を訂正するなどの手続きが必要です。
ドライバーが戻ったら運行指示書の原本と写しを照合して、ドライバーが書き記した内容と指示事項に相違がないか確認します。
確認が完了次第、原本と写しを営業所で保存してください。

 

運行に変更が入った場合は

運行に変更が入った場合は

ドライバーが、運行指示書を携帯しているかどうかによって手続きが異なります。

 

携帯している場合

例えば、輸送途中に2泊3日から3泊4日へと計画が変更になったケースが該当します。
運行の開始や終了の地点、日時、経路、主な経過地の発着日時に変更が生じた場合、次の手続きを行ってください。
1〜2と4は運行管理者(または補助者)の、3と4はドライバーの実施事項です。
1.運行指示書の写しを訂正する

2.変更した写しをもとにドライバーに電話などで指示を出す

3.携帯している運行指示書を訂正する

4.運行指示書の原本と写しに指示を受けた日時と指示をした人の氏名を記録する

 

携帯していない場合

例えば、輸送途中に1泊2日から2泊3日へと計画が変更になったケースが該当します。
乗務途中に運行指示書が必要となった場合、次の手続きを行います。
1と2は運行管理者(または補助者)の、3〜5はドライバーの実施事項です。
1.運行指示書(正副2部)を作成する

2.作成した運行指示書をもとにドライバーに電話などで指示を出す

3.乗務記録に指示内容を記録する

4.乗務記録に指示を受けた日時と指示をした人の氏名を記録する

5.運行終了後に乗務記録を提出する

 

運行指示書に関する罰則

運行指示書に関する違反行為には行政処分が行われます。

 

指示書を違反した場合の罰則

違反行為に対する行政処分は、次のとおりです。
 

違反行為 件数 初違反 再違反
作成、指示、携行の義務違反※ ~5件 警告 10日車
  6~15件 10日車 20日車
  16件~ 20日車 40日車
記載事項等の不備   警告 10日車
運行指示書や写しの保存義務違反   20日車 40日車

■出典:「貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為及び日車数等について 別表」

なお、日車とは1日につき使用停止となる車両の単位のことです(処分日車数制度)。
10日車の場合、トラック1台が10日間使用停止となります。
また10日車につき1点の違反点数が付きます(違反点数制度)。
違反点数の累積期間は基本的に3年です。
使用停止処分は、営業所で保有している車両台数に応じて使用停止となる車両台数が異なります。
例えば車両を15両保有している営業所で20日車となった場合、トラック2台が10日間(20日をトラック2台で割った日数)使用停止になります。

■出典:貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について

 

指示書の保存期間はどれくらい?

運行終了日から1年間、営業所で原本と写しの2点を保存してください。

 

まとめ

中間点呼が必要な運行を行う場合は、運行指示書の作成、携帯、1年間の保存が必要です。
また、運行指示書に関する違反行為は行政処分が行われます。
改善基準告示を守って作成し、適切に運用しましょう。

 

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