2024年4月1日の施行された改善基準告示は、
運転手の労働条件の向上を図るために、ルールが改正されました。
運転手として働く場合は、どのように改正されたのか知っておきたいものです。
本記事では、改善基準告示がどのように改正されたのか、
特例や計算方法について、詳しく解説します。
改善基準告示とは?
改善基準告示とは、
「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(厚生労働大臣告示)のことです。
トラック、バス、ハイヤー、タクシーなどの運転手の労働条件の向上を図るため、
拘束時間の上限、休息期間についての基準などを定めたものをいいます。
運輸業は、長時間労働や過重労働が課題となっていることから、
これらを改善していかなければなりません。
改善基準告示は、2022年12月に見直され、
2024年4月1日に施行された告示の内容では、
拘束時間の上限や休息期間などが改正されました。
トラック運転手の労働時間については、運転ドットコムの
下記の記事が役に立ちますので、合わせて参考になさってください。
トラック運転手の労働時間ってどのくらい?2024年問題で変わる労働時間についても解説!
2024年に改善基準告示が改正された!
2024年4月1日より施行された改善基準告示に示されている時間外労働の上限規制は、
遵守した上で管理しなければなりません。
運転手の時間外労働の上限は、特別条項付き36協定を締結した場合で、
年間960時間未満となっています。
運転手には、一般企業の
「月100時間未満、2〜6ヵ月平均80時間以内」
「月45時間を超えることができるのは年6ヵ月までとする」
といった規制は適用されません。
では、具体的にどのように改正されたのかみていきましょう。
トラック運転手の場合
トラック運転手の場合、以下のように改善基準告示は改正されました。
|
改正前 |
改正後 |
1年の拘束時間 |
3,516時間 |
原則3,300時間 最大3,400時間 |
1カ月の拘束時間 |
原則293時間 最大320時間 |
原則284時間 最大310時間 |
1日の休息期間 |
継続8時間 |
継続11時間を基本とし、継続9時間 |
全体的に、労働時間の短縮が図られたことが分かります。
バス運転
続いて、バス運転手の場合、以下のように改善基準告示は改正されました。
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基本 |
例外 |
① |
〇1カ月(1年)の基準 1年3,300時間以内 1カ月281時間以内 |
〇労使協定により以下の延長可 1年3,400時間以内 1カ月294時間以内(年6カ月まで) 281時間超は連続4カ月まで |
② |
〇4週平均1週(52週)の基準 52週3,300時間以内 4週平均1週65時間以内 |
〇労使協定により以下の延長可 52週3,400時間いア 4週平均1週68時間以内 (52週のうち24週まで) 65時間超は連続16週まで |
労働の際は、上記の①・②のいずれかを選択する形となります。
タクシー運転手・ハイヤー運転手
タクシー運転手・ハイヤー運転手は
以下のように日勤運転手と隔日運転手により、告示内容が異なります。
<日勤勤務者>
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改正前 |
改正後 |
拘束時間 |
基本:1日13時間以内 |
基本:1日13時間以内 |
1カ月の 拘束時間 |
299時間まで |
288時間まで |
休息期間 |
終業後、継続8時間以上 |
終業後、継続11時間以上を基本とし 9時間を下回らない |
<隔日勤務者>
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改正前 |
改正後 |
拘束時間 |
2暦日で最大21時間以内 |
2暦日で最大22時間以内かつ、2回の隔日勤務の平均が 1回あたり21時間以内 |
1カ月の 拘束時間 |
262時間まで |
変更なし |
休息期間 |
終業後、継続20時間以上 |
終業後、継続24時間以上を基本とし、22時間を下回らない |
拘束時間や休憩時間の計算方法
改善基準告示を満たした拘束時間や休息時間は、以下のように計算することが可能です。
1日の拘束時間
1日の拘束時間は、始業から24時間以内の時間で計算します。
例えば、月曜日の8時から始業した場合、火曜日の8時までが24時間となります。
月曜日の8時から21時間まで拘束された場合、拘束時間は13時間です。
21時から翌朝6時までの9時間休息し、
火曜日の6時から8時の2時間働いた場合は、合計15時間働いた計算になります。
また火曜日は6時から始業していますので、
翌日の水曜日の6時までの24時間が拘束時間となるのです。
1カ月・1年の拘束時間
1カ月の拘束時間を合計して算出します。
基本的には、暦月で計算しますが、
就業規則で起算日を定めている場合は、起算日から1カ月でも問題はありません。
改善基準告示では、1年の拘束時間の限度を超えないように、
1カ月の拘束時間を設定する必要があります。
改善基準告示の特例もある!
改善基準告示には、以下のような特例が設けられています。
休息期間の分割特例
勤務終了後に継続9時間以上の休息を与えることが困難な場合は、
1カ月程度を限度に、全錦見回数の2分の1を上限として、
休息期間を拘束時間の途中および
拘束時間の経過直後に分割して与えることが認められています。
分割した休息期間は、以下の点に気をつけなければなりません。
・1日に1回当たり継続3時間以上
・2分割の場合は合計10時間以上とする
・2分割だけでなく3分割も認められるが、3分割の休息期間は1日合計12時間以上でなけ
ればならない
・休息期間が3分割される日が連続しないよう努める
2人乗務特例
トラック運転手が、1台のトラックに2人以上乗車する場合は、
最大拘束時間が20時間まで延長可能です。
ただし、トラックに身体を伸ばして休息することができる設備がある場合に限られます。
また、設備が以下に該当する車両内ベッド、またはこれに準ずるものであり、
継続11時間以上の休息期間を与えるときは、拘束時間を24時間まで延長可能です。
・車両内ベッドは、長さ198cm以上、かつ、幅80cm以上の連続した平面であること
・車両内ベッドは、クッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるもので
あること
さらに、車両内ベッド等において、8時間以上の仮眠時間を与える場合、
拘束時間を28時間まで延長できます。
隔日勤務特例
2暦日における拘束時間は21時間を超えないことを前提に、
事業場内仮眠施設、または同等の施設で4時間以上の仮眠時間を与える場合、
2週につき3回を限度に、2暦日における拘束時間を24時間まで延長することが可能です。
上記の場合、2週における総拘束時間は、21時間×6勤務=126時間を超えてはならず、
勤務終了後、継続20時間以上の休息期間を与えなければいけません。
フェリー特例
フェリー乗船時間は、原則、休息期間としてカウントします。
休息期間の時間から、フェリー乗船中の休息期間について減らすことが可能です。
ただし、減算後の休息期間は、2人乗務の場合を除き、
フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの間の時間の2分の1を下回ってはなりません。
フェリー乗船時間が
8時間(2人乗務の場合は4時間、隔日勤務の場合は20時間)を超える場合、
原則、フェリー下船時刻から次の勤務が開始されるものと計算します。
改善基準告示に関するよくある質問
改善基準告示に関するよくある質問についてみていきましょう。
トラック運転手の連続でできる稼働時間はどのくらいまで?
トラック運転手が運転できる時間の限度は、2日を平均し1日あたり9時間、
2週を平均して1週あたり44時間を超えてはいけません。
連続して運転時間は、4時間を超えないようにする必要があります。
連続運転時間とは、1回の運転がおおむね10分以上、
かつ合計が30分以上の運転を中断することなく連続して運転する時間のことです。
また「おおむね10分以上」とは、
10分未満の運転の中断が3回以上連続していないこと等をいいます。
ただし、サービスエリア、パーキングエリア等の休憩できる場所に駐車、
または停車できないことにより、やむを得ず連続運転時間が4時間を超える場合には、
30分まで延長可能です。
トラック運転手に該当するのは運送業者だけ?
改善基準告示におけるトラック運転手とは、
運送事業の会社で働くトラックの運転手だけを指しているのではありません。
ハイヤー・タクシーおよびバスなどの旅客自動車運送事業、
貨物自動車運送事業以外の事業に従事する自動車運転手で、
主として人以外の輸送を目的とする自動車運転の業務に従事する人を含みます。
事故などに遭遇した場合の労働時間は?
事故などに遭遇し、一定の遅延が生じた場合、客観的な記録が認められる場合のみ、
1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間の規制が適用され、
対応した時間を除くことが可能です。
勤務終了後は、通常通りの休息期間を与えられます。
休息時間は、勤務終了後、継続11時間以上を与えるよう努め、
継続9時間を下回らないようにする必要があるのです。
まとめ
改善基準告示がどのように改正されたのか、特例や計算方法について、
ご理解深まりましたでしょうか。
改善基準告示では、運転手の労働環境が緩和に至りました。
改正の内容は細かいものが多いですので、改正内容を熟知しておいてください。
本記事を参考に、改善基準告示の改正内容を知っていただいた上で、
運転手の仕事に就いてみてはいかがでしょうか。