運送業が問題視している「2024年問題」とは?運送業の働き方改革で何が変わるのか?対応策や事例も紹介

コラム

運送業では慢性的に時間外労働が行なわれていることから、

 

働き方改革が行なわれることになりました。

 

働き方改革が行なわれる一方で、2024年問題が注目されていますが、

 

一体どのような問題なのでしょうか。

 

本記事では、運送業の働き方改革で何が変わるのか、

 

2024年問題やその対応策について詳しくご紹介します。

 

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運送業界の「2024年問題」って?

運送業界 2024年問題

 

運送業の仕事はきついという理由から、

 

トラック運転手に就職したとしても離職したり転職したりする人が後を絶ちません。

 

トラック運転手の人員不足が懸念される中、

 

新型コロナウイルスの影響でネット通販に頼った生活様式へと転換されました。

 

そのことから以前より運送業の仕事は過酷さを増すようになり、

 

さらにトラック運転手不足が深刻になっています。

 

このようなトラック運転手の労働環境を改善するために、

 

2024(令和6)年4月1日より労働基準法第36条を含めた改正労働基準法が施行され、

 

トラック運転手の時間外労働時間の上限が960時間までに制限されることになりました。

 

2019年に公布された改正労働基準法は、5年間の猶予期間を経て2024年4月1日から施行されるのです。

 

改正労働基準法により、トラック運転手の労働環境は守られるため一安心ですが、

 

一方で、トラック運転手の労働時間が制限されることで、

 

運送会社の利益減少、輸送運賃の上昇、トラック運転手の離職などの問題を「2024年問題」といいます。

 

 

運送業の働き方改革で何が変わる?

運送業 働き方改革

 

労働基準法第32条では、1日8時間・1週間で40時間の法定労働時間が規定されています。

 

法定労働時間をもとに、各会社企業で定めた労働時間を「所定労働時間」といい、

 

36協定を結ぶことで各会社企業が労働時間を定めることができるのです。

 

労働基準法第36条では

 

「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」

 

と規定しています。

 

36協定の締結で、1カ月の残業時間が45時間、1年につき6カ月まで最大360時間の労働時間の延長が可能になります。

 

同じく労働基準法第36条の中の5項では、特別な事情がある場合は、

 

時間外労働年720時間以内、1カ月100時間以内、複数の月においての平均80時間以内、

 

限度時間を超過して時間外労働させられるのは年6カ月との規定があるのです。

 

ところがトラック運転手は「自動車運転者業務」という区分に該当し、上記のルールが適用されません。

 

具体的にどのようなルールが適用されるのかを詳しくみていきましょう。

 

 

2024年3月31日までの労働基準法

労働基準法 3月

 

改正労働基準法が適用される2024年3月31日までは、

 

トラック運転手(自動車運転者業務)のルールは以下のように定められています。

 

1年・1カ月の拘束時間

1カ月293時間以内

36協定締結時は

1年3516時間以内の範囲で1カ月320時間以内(年6回上限)

1日の拘束時間

原則13時間以内

(上限16時間、15時間以上は週2回上限)

1日の休息時間

継続して8時間以上

運転可能時間

2日平均1日あたり9時間以内

2週平均1週あたり44時間以内

連続運転可能時間

4時間以内

運転の中断は1回10分以上、合計30分以上

予期できない事象

継続して8時間以上

分割休息特例

継続して8時間以上の休息が取得できない場合

分割休息は1回4時間以上、休息時間合計10時間以上

2人乗務特例

車両内に足を伸ばして休息できるスペースがある場合

拘束時間は20時間まで延長可、休息時間は4時間まで短縮可

隔日勤務特例

2暦日の拘束時間は21時間

休憩時間は継続して20時間以上

仮眠施設で夜間4時間以上の仮眠が取得できる場合は

拘束24時間まで延長可(2週間に3回上限)

フェリー特例

乗船時間は原則として休息時間

乗船時間8時間以上の場合、原則下船時刻より勤務開始

 

トラック運転手の時間外労働は、2024年3月31日までは上限規制がないため、

 

年960時間以上残業させていても運送会社が行政指導を受けることがあっても罰則を受けることはありません。

 

 

2024年4月1日からの改正労働基準法

労働基準法 4月

 

2024年4月1日以降は改正労働基準法に基づき、

 

トラック運転手の時間外労働が年960時間以内に制限され、細かな規定も以下のようになります。

 

1年・1カ月の拘束時間

1年3,300時間以内、1カ月284時間以内

36協定により以下の延長は可

(1)284時間以上の拘束は連続3カ月が上限

(2)1カ月の時間外・休日労働が100時間未満

上記(1)(2)を満たせば

1年3,400時間以内

1カ月310時間以内(年6回上限)

1日の拘束時間

原則13時間以内(上限15時間、14時間以上は週約2回上限)

宿泊をともなう場合は継続して16時間上限に延長可

(週2回まで)

1日の休息時間

継続して11時間以上の付与を目標とし9時間以上付与する

宿泊をともなう場合は継続して8時間以上(週2回上限)

運転可能時間

現行と同様

2日平均1日あたり9時間以内

2週平均1週あたり44時間以内

連続運転可能時間

4時間以内

運転の中断は1回概ね10分以上、合計30分以上

SA・PAに駐停車できない際は4時間30分まで延長可

予期できない事象

予期できない事象=故障・災害・通行止・渋滞など

事象の対応時間は1日の拘束時間、運転可能時間、

連続運転可能時間から省くことが可

勤務終了後は従来の休息を付与する

分割休息特例

継続して9時間以上の休息が取得できない場合

分割休息は1回3時間以上

休息時間合計10時間以上(2分割)、12時間以上(3分割)

2人乗務特例

車両内に足を伸ばして休息できるスペースがある場合

拘束時間は24時間まで延長可

勤務終了後は継続して11時間以上の休息を付与する

隔日勤務特例

現行と同様

2暦日の拘束時間は21時間

休憩時間は継続して20時間以上

仮眠施設で夜間4時間以上の仮眠が取得できる場合は

拘束24時間まで延長可(2週間に3回上限)

フェリー特例

現行と同様

乗船時間は原則として休息時間

乗船時間8時間以上の場合、原則下船時刻より勤務開始

 

改正労働基準法により、トラック運転手の厳しい労働環境が緩和されることになります。

 

 

「2024年問題」の運送業界の影響とは?

ドライバー 働き方改革

 

2024年問題は運送業界にも大きな影響を及ぼします。

 

ここでは具体的にどのような影響を与えるのかをみていきましょう。

 

 

運送会社の収益減少

2024年3月31日までは、トラック運転手の時間外労働の上限があってなかったようなものでしたので、

 

多くの運転手は時間外労働を行なってきましたが、2024年4月1日からはそうもいきません。

 

トラック運転手の時間外労働時間の上限が設けられたことにより、

 

運送会社は荷主から無理な仕事を受けてしまうと、さばききれなくなってしまいます。

 

トラック運転手の働ける時間に上限が設けられますので、

 

これまで受けていた仕事量を減らさざる得なくなりますので、それに準じて収益が減少してしまうのです。

 

 

輸送運賃・配送運賃の値上げ

上記のように運送会社の収益が減少することにともない、

 

運送会社は当然のことながら会社経営を維持する観点から輸送運賃・配送運賃を値上げせざるを得ません。

 

輸送運賃・配送運賃の値上げをすると荷主や利用者が離れる可能性もあるため、

 

運送会社にとって値上げは判断が難しいところです。

 

 

トラック運転手の離職

上記のように運送会社が輸送運賃・配送運賃の値上げが厳しいと判断した場合、

 

会社の経営を優先させることになれば、トラック運転手の給料を減らさざるを得ません。

 

給料が減るとなれば、勤務していたトラック運転手は次の運送会社へ転職する可能性が高くなります。

 

トラック運転手が離職すると、運送会社は仕事を請け負えなくなり収益が得られなくなることから、

 

倒産の危機となってしまいます。

 

 

荷主が受ける影響とは?

2024年問題 荷主の影響

 

2024年問題は荷主にも以下のような影響を及ぼします。

 

 

運送会社による輸送運賃・配送運賃の値上げ

前述のように2024年問題で運送会社は収益が減少すると、輸送運賃・配送運賃を値上げするでしょう。

 

値上げは荷主にも大きな影響を与えることは間違いありません。

 

 

時間指定が困難になる

2024年問題では、トラック運転手の時間外労働時間に制限がかかることに加えて、

 

トラック運転手の離職も懸念されています。

 

そのことから従来の時間指定ができなくなり、配送時間の融通が効かなくなる可能性が高いです。

 

 

一般消費者が受ける影響もあるの?

一般消費者 2024年問題

 

2024年問題は、以下のように一般消費者が受ける影響もあります。

 

 

宅配の配送料値上げ

前述のように運送会社が輸送運賃・配送運賃を値上げするのにともなって、宅配業者も配送料を値上げしてきます。

 

またトラック運転手の人員不足が拡大すると、再配達や時間指定配達が困難となり、

 

それらを依頼する場合は追加料金を設定される可能性もあるでしょう。

 

 

当日・翌日の荷受けができない

運送会社のトラック運転手の人員不足が慢性化すると、当日・翌日の荷受けができない可能性があります。

 

希望の日時に商品が届かないのは、一般消費者にとって痛手となるでしょう。

 

マンションによっては宅配ボックスで対応できますが、

 

対応ボックスがなかったり一軒家の場合は確実に在宅している時間に時間指定することで、

 

円滑に荷物を受け取ることが可能です。

 

このように一般消費者側の対策も考えなければなりません。

 

 

2024年までに運送業界が取り組むべき対応策

2024年問題 対応策

 

2024年問題は多方面に影響を及ぼすことがわかりました。

 

これらの影響に対応するために、運送業界も取り組むべき対応策を考えなければなりません。

 

ここでは具体的にどのような対応策がとるべきなのかみていきましょう。

 

 

労働環境・条件を改善する

2024年4月1日からは時間外労働時間の上限が設けられるため、これまでの労働環境や条件を改善しなければなりません。

 

より良い環境で労働者が働けるように運送会社は経営をする必要があります。

 

 

ドライバ―を確保する

時間外労働時間が制限されることで直面する大きな問題は人手不足です。

 

運送会社はこれまでと同じような形で荷主からの依頼を受けるためには、人手を増やすほかありません。

 

 

勤怠管理を適正に行う

2024年4月1日から時間外労働時間の上限が定められるからというわけではありませんが、

 

勤怠管理は適正に行なわなければならないことは言うまでもありません。

 

これまで時間外労働時間などをあいまいにしていたり、

 

厳密に管理チェックしていなかった場合は、勤怠管理を強化させる必要があります。

 

 

運送業界で実際にあった働き方改革の事例

運送業界 働き方改革 事例

 

運送業界では2024年問題に対応するための動きが採られています。

 

実際に運送業界で採られている働き方改革の事例についてみていきましょう。

 

 

~事例①~情報システムを活用した荷待ち時間の削減

ある運送会社では、他方から到着した荷物を手で荷下ろしし、倉庫用のパレットに積みかえていました。

 

積みかえは先着したトラックから順々に行なっていくため、荷待ち時間が発生してしまいます。

 

荷待ち時間の削減のため、入退場・進捗管理システムを公開し、

 

運転手の出勤時刻の調整を行ない、待機時間や拘束時間の削減に成功しました。

 

 

~事例②~荷積み・荷下ろしする荷物をパレットに積載する

トラックに積載した荷物を手で荷積み・荷下ろしをすると、かなりの時間を要します。

 

荷積みの時点でフォークリフトでパレットに荷物を載せることで、

 

荷下ろしの際もすぐに荷物を下ろすことが可能です。

 

時間がかかる荷積み・荷下ろしの時間を短縮することで、

 

トラック運転手の労働時間の短縮だけでなく、体力的にも負担を軽減することができます。

 

 

運送業界へ転職するなら!おすすめの職種を紹介!

運送業界 転職 おすすめ

 

運送業界にはさまざまな仕事がありますが、ここでは運送業界へ転職する際のおすすめの職種についてご紹介します。

 

 

~おすすめの職種①~トラック運転手

トラック運転手は勤務形態がさまざまで、

 

高収入を得たい場合は大型・中型トラック運転手が向いていますし、

 

日帰りで勤務したい場合はコンビニルート配送のような小型トラック運転手が向いているでしょう。

 

トラック運転手は、大型免許や中型免許は必須で、他にフォークリフト免許や玉掛資格など、

 

トラック運転手に関連する免許や資格をもっていると、給料が高くなる可能性があるのです。

 

トラック運転手の労働基準についての詳細は下記の記事でも紹介しておりますのでご覧ください。

 

トラック運転手の労働基準法ってどんな感じ?2024年問題で何が変わるのか?罰則例や体験談も紹介!

 

 

~おすすめの職種②~旅客運転手

旅客運転手は、バスやタクシーなどの運転手のことをいいます。

 

人の命を預かる重責を背負うだけでなく、お客様相手の仕事になりますので、

 

他者とのコミュニケーションが円滑に図れる方に向いている職業といえるでしょう、

 

旅客運転手もバスドライバーの場合は大型免許が必須です。

 

 

~おすすめの職種③~運行管理者

運送業界で働いているのはトラック運転手だけではありません。

 

トラック運転手は、物流・配送・在庫管理を行なっている運行管理者がいるからこそ円滑な業務が進むのです。

 

責任感が強く、自分の管理だけでなく人の管理もできる人に向いている職種といえるでしょう。

 

 

 

まとめ

運送業で常態化していた長時間の時間外労働が、

 

2024年4月1日からの労働基準法改正により緩和されることがご理解いただけたと思います。

 

労働基準法改正による働き方改革で、トラック運転手の労働環境が大きく変わり、

 

過労を減らす大きな要因となるでしょう。

 

一方で、トラック運転手の時間外労働が緩和されることから、

 

運送会社の収益が減少したり、宅配の配送料が値上がりする可能性があるなど、

 

2024年問題が発生することをお伝えしました。

 

本記事を参考に、運送業の働き方改革で、

 

私たち一般消費者にどのような影響があるのかも合わせてご理解いただければ幸いです。

 

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