トラック運転手の労働基準法ってどんな感じ?2024年問題で何が変わるのか?罰則例や体験談も紹介!

「トラック運転手は労働時間が長い」と言われますが、

 

トラック運転手については労働基準法第32条の規定を遵守していない運送会社も少なくありません。

 

トラック運転手の労働環境を改善されることにより2024年問題が生じますが、2024年問題で何が変わるのでしょうか。

 

本記事ではトラック運転手の労働基準法や、2024年問題について詳しく解説します。

 

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現在の運送業におけるトラック運転手の労働基準法って?

2024年の労働基準法の改正

 

2024年3月31日までは、トラック運転手の時間外労働の上限規制がない状況となっていますが、

 

2024年4月1日からは新しいルールが適用され、上限規制が設けられます。

 

ここでは2024年1月現在の運送業におけるトラック運転手の労働基準法についてみていきましょう。

 

 

労働基準法が定める「労働時間」

労働基準法第32条には「1日8時間・週40時間」の法定労働時間が定められています。

 

法定労働時間は法律により定められた労働時間で、法定労働時間に対して、

 

会社が就業規則等で定めた労働時間が「所定労働時間」です。

 

労働基準法第36条で

 

「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、

労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、

厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、

第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において

「労働時間」という)又は前条の休日(以下この条において「休日」という)に関する規定にかかわらず、

その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」

 

としています。

 

協定を結ぶことで残業時間が1カ月45時間、1年につき6カ月まで最大360時間の労働時間の延長が可能です。

 

この協定は、労働基準法第36条にまつわることから「36協定」といい、

 

2018年改正の働き方改革関連法により、36協定の内容も改められました。

 

労働基準法第36条5項では、特別な事情があった場合も時間外労働は年720時間以内、

 

1カ月では100時間以内、複数の月においての平均80時間以内、

 

限度時間を超過して時間外労働させられるのは年6カ月と規定しています。

 

 

トラック運転手の労働基準法

上記でご紹介した労働基準法は公務員や一般企業に適用されるルールです。

 

トラック運転手は「自動車運転者業務」にあるため、2024年3月31日まで以下のルールが適用されます。

 

項目

内容

1年・1カ月の拘束時間

1カ月293時間以内

36協定締結時は

1年3516時間以内の範囲で1カ月320時間以内(年6回上限)

1日の拘束時間

原則13時間以内

(上限16時間、15時間以上は週2回上限)

1日の休息時間

継続して8時間以上

運転可能時間

2日平均1日あたり9時間以内

2週平均1週あたり44時間以内

連続運転可能時間

4時間以内

運転の中断は1回10分以上、合計30分以上

予期できない事象

継続して8時間以上

分割休息特例

継続して8時間以上の休息が取得できない場合

分割休息は1回4時間以上、休息時間合計10時間以上

2人乗務特例

車両内に足を伸ばして休息できるスペースがある場合

拘束時間は20時間まで延長可、休息時間は4時間まで短縮可

隔日勤務特例

2暦日の拘束時間は21時間

休憩時間は継続して20時間以上

仮眠施設で夜間4時間以上の仮眠が取得できる場合は

拘束24時間まで延長可(2週間に3回上限)

フェリー特例

乗船時間は原則として休息時間

乗船時間8時間以上の場合、原則下船時刻より勤務開始

 

 

「2024年問題」で労働基準法が変わる!

2024年問題 労働基準法 トラック運転手

 

上記でトラック運転手は「自動車運転者業務」にあたることをお伝えしましたが、

 

2024年4月1日に働き方改革関連法が改正されます。

 

トラック運転手の時間外労働が年960時間以内に制限され、以下のルールに内容が変更となるのです。

 

項目

内容

1年・1カ月の拘束時間

1年3,300時間以内、1カ月284時間以内

36協定により以下の延長は可

(1)284時間以上の拘束は連続3カ月が上限

(2)1カ月の時間外・休日労働が100時間未満

上記(1)(2)を満たせば

1年3,400時間以内

1カ月310時間以内(年6回上限)

1日の拘束時間

原則13時間以内(上限15時間、14時間以上は週約2回上限)

宿泊をともなう場合は継続して16時間上限に延長可

(週2回まで)

1日の休息時間

継続して11時間以上の付与を目標とし9時間以上付与する

宿泊をともなう場合は継続して8時間以上(週2回上限)

運転可能時間

現行と同様

2日平均1日あたり9時間以内

2週平均1週あたり44時間以内

連続運転可能時間

4時間以内

運転の中断は1回概ね10分以上、合計30分以上

SA・PAに駐停車できない際は4時間30分まで延長可

予期できない事象

予期できない事象=故障・災害・通行止・渋滞など

事象の対応時間は1日の拘束時間、運転可能時間、

連続運転可能時間から省くことが可

勤務終了後は従来の休息を付与する

分割休息特例

継続して9時間以上の休息が取得できない場合

分割休息は1回3時間以上

休息時間合計10時間以上(2分割)、12時間以上(3分割)

2人乗務特例

車両内に足を伸ばして休息できるスペースがある場合

拘束時間は24時間まで延長可

勤務終了後は継続して11時間以上の休息を付与する

隔日勤務特例

現行と同様

2暦日の拘束時間は21時間

休憩時間は継続して20時間以上

仮眠施設で夜間4時間以上の仮眠が取得できる場合は

拘束24時間まで延長可(2週間に3回上限)

フェリー特例

現行と同様

乗船時間は原則として休息時間

乗船時間8時間以上の場合、原則下船時刻より勤務開始

 

上記の内容により、トラック運転手の時間外労働に制限がかかるため、

 

改正前のような過酷労働からは緩和されることになります。

 

 

労働基準法に違反している例を紹介!

トラック運転手 労働基準法 違反例

 

使用者が労働者に労働させる場合は、労働基準法に従って働いてもらう必要があります。

 

ただ使用者の中には労働基準法に違反した状態で労働者を働かせているところも少なくありません。

 

労働基準法は使用者だけが知っておく法律ではなく、

 

労働者も労働基準法について知っておくことで自分自身を守ることができるのです。

 

ここでは労働基準法に違反している例をご紹介します。

 

 

~ケース①~長時間労働

運送業において労働基準法に反しやすいのが長時間労働です。

 

人手不足や業務内容により、労働時間が長時間になりがちですが、

 

トラック運転手の長時間労働が慢性化すると大きな事故につながります。

 

移動中に事故渋滞に巻き込まれたり、荷積み・荷下ろしのために待機時間が発生するなど、

 

トラック運転手は予定していた時間通りに業務が進まないことが多くあるのです。

 

事故を起こすと、物損の場合は壊したものを弁償しなければなりませんし、

 

人身事故の場合は被害者から損害賠償請求が行なわれ、刑事事件として立件される可能性もあるのです。

 

労働者としてできることは、毎日の出勤時間・退勤時間を記録しておくことでしょう。

 

 

~ケース②~時間外労働手当の未払い

前述のように労働時間をきちんと把握しておくことで、時間外労働時間を把握することができます。

 

労働時間があいまいなほど、本来支払われるべき時間外労働手当が正しく支給されません。

 

まずは自身の労働時間を1分単位まで記録し、時間外労働時間がどれだけあるのかを知る必要があります。

 

そのうえで正しく時間外労働手当が支払われているかを、給与明細で確認しましょう。

 

 

~ケース③~パワハラ

運送業は縦社会が残存しているところがあり、先輩や上司からのパワハラを受ける可能性がゼロではありません。

 

無理な仕事を押し付けられたり、暴言を浴びせられたりするのはパワハラです。

 

「これってパワハラ?」と疑問に感じるときもありますが、

 

パワハラはトラック運転手であるあなたより上の立場の人からの言動でパワー(権力等)を感じたときにパワハラとなる可能性が出てきます。

 

もしパワハラを感じるような行動を受けた場合は、音声の録音や文面を保存するようにしてください。

 

1度や2度の行為だけでなく、辛いかもしれませんが、複数回の証拠を残しておきましょう。

 

 

トラック運転手の労働基準法に違反した場合の罰則を紹介!

トラック運転手 労働基準法 違反した場合

 

労働基準法に違反した状態でトラック運転手に労働させると、大きな事故を起こしてしまう可能性が高くなります。

 

ここでは、労働基準法に違反している例についてご紹介します。

 

 

~ケース①~道路交通法違反・労働基準法違反被告事件

2016(平成28)年11月14日に広島地方裁判所で開かれた「平成28(わ)556道路交通法違反,労働基準法違反被告事件」の裁判です。

 

運送会社の運行管理者は、トラック運転手が過労状態であることを知っておきながらトラックの運転を命令し、時間外労働・休日労働させました。

 

その結果、トラック運転手が高速道路上で居眠りをし、渋滞で停止していた車両に突っ込み、死傷者を出した事故を起こしました。

 

裁判所の判決として、労働基準法第32条1項・2項、第35条1項等)および刑法により、

 

運行管理者に懲役1年6カ月(執行猶予3年)、運送会社に対して罰金50万円を科したのです。

 

 

~ケース②~自動車運転過失致死傷

2011(平成23)年7月8日に名古屋地方裁判所で開かれた「平成23(わ)363自動車運転過失致死傷事件」の裁判です。

 

トラック運転手が高速道路を走行中に、居眠り運転により渋滞で停車中の車両に衝突、玉突事故を発生させ、9人の死傷者が出ました。

 

トラック運転手の長時間労働が原因で発生した事故であるとして、

 

労働基準法違反で営業所長が逮捕され、所長と運送会社が略式起訴されました。

 

使用者側には罰金30万円、トラック運転手には禁固5年4カ月の判決が出たのです。

 

 

労働基準法に違反しているかも?と思ったらどうしたらいい?

トラック運転手 労働基準法 違反 対処法

 

前述のような労働基準法に違反している行為を受けている場合、

 

その状態が続いていくとトラック運転手であるあなたが心身ともに支障をきたします。

 

ここでは労働基準法に違反している行為を受けているときの対処法についてご紹介しますので参考になさってください。

 

 

運送会社に相談する

運送会社に労働者の相談窓口がある場合は、まず相談してみるといいでしょう。

 

運送会社の経営者もトラック運転手からの相談を聞き入れてくれますし、

 

基本的にはより良い労働環境を整えてくれるものです。

 

もし相談窓口に相談しても改善がみられなかった場合は、次の方法をとってください。

 

 

労働基準監督署に相談する

労働基準監督署は各地域に設置されている組織で、労働基準法に違反している会社に対して是正勧告を行なってくれます。

 

労働者から相談を受けた労働基準監督署は、労働基準法違反をしていると思われる会社に出向き、

 

会社に対してヒアリングや調査を行ない、必要に応じて是正勧告を行なってくれるのです。

 

労働基準監督署の相談は匿名でも受け付けてくれますが、匿名の場合は緊急性が低いと判断され、

 

対応が後回しにされる可能性がありますのでご注意ください。

 

 

弁護士・法律事務所に相談する

勤め先が労働基準法違反している場合、弁護士や法律事務所が解決に当たってくれます。

 

最初から依頼するのではなく、各地域で行なわれている法律の無料相談に出向く方法もありますし、

 

弁護士に相談する場合は事務所によりますが、

 

おおよそ30分・5,400円で相談料で相談することができますので、ぜひ相談してみてください。

 

 

今よりもいい労働環境で仕事するためには?

トラックドライバーが長時間労働になっていた原因

 

もし現在勤務している運送会社の労働環境が良くないと感じた場合、次の方法で対応することができます。

 

 

労働基準監督署や弁護士から是正勧告してもらう

前述のように労働基準法に違反している労働環境であれば、

 

労働基準監督署や弁護士から運送会社に是正勧告を行なってもらうといいでしょう。

 

是正勧告後の社内の人間関係が気になるかもしれませんが、会社の労働環境が良くなるためには、

 

労働基準監督署や弁護士からの是正勧告は特効薬なのです。

 

 

転職する

労働基準監督署や弁護士からの是正勧告後の人間関係がどうしても気になる場合は、思い切って転職することをおすすめします。

 

国内に運送会社はたくさんありますし、現在の勤務先より労働環境の良いところはたくさんあるはずです。

 

運転ドットコムでも転職者向けのトラック運転手の求人原稿も掲載しておりますのでそちらもチェックしてみてくださいね!

 

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また、転職をお考えの際は下記の記事も参考になさってください。

 

トラック運転手の転職のコツとは?給与アップや働き方を改善するために見るべきポイントを紹介

 

 

トラック運転手で実際に転職した人の体験談

トラック運転手 転職 体験談

 

最後に、トラック運転手で実際に転職した人の体験談についてご紹介します。

 

 

Sさん・40代男性の体験談

トラック運転手の中でも、長距離トラック運転手のSさん。

 

一度運送会社を出発すると数日は自宅に戻れないそうです。

 

リモートワークで成立する仕事ではありませんし、

 

とにかく拘束時間が長いため、法律で定められている時間外労働時間が超えていました。

 

その後Sさんは別の運送会社に転職し、働きやすい環境で仕事をしているとのことです。

 

 

Iさん・50代男性の体験談

中距離トラック運転手のIさんは、規定の労働時間が超えているのにも関わらず、

 

時間外労働手当が支払われていませんでした。

 

その後支払いがあったそうですが、今後同じようなことが起きる可能性もありますので、別の運送会社に転職したそうです。

 

 

まとめ

トラック運転手の労働基準法についてご理解いただけましたでしょうか。

 

2024年3月31日までのルールでは、

 

トラック運転手の時間外労働時間があったとしても運送会社は是正勧告を受ける程度でしたが、

 

2024年4月1日からは働き方改革関連法が新しくなることにともない、トラック運転手の時間外労働時間が短縮されました。

 

トラック運転手の労働時間が短縮されることにより、世の中の物流が円滑に行なわれなかったり、

 

運転手不足が発生する2024年問題が注目されていますが、まずはトラック運転手の労働環境を守ることが最優先でしょう。

 

労働基準法違反の状態で働き、事故等を起こしてしまったときの裁判事例についてもご紹介しましたのでご一読ください。

 

本記事を参考に、トラック運転手の労働基準法にまつわる事例についてお知りいただければ幸いです。

 

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