
長時間労働が問題視されているトラック運転手。
2024年4月1日より、トラック運転手の時間外労働時間(残業時間)の上限が定められ、休憩時間についても細かく決まりがつくられました。
今後のトラック運転手の休憩時間やその管理はどうなるのでしょうか。
本記事では、トラック運転手の実際の休憩時間や体験談、法律に違反している場合の対処法について詳しくご紹介します。
トラック運転手の現状の休憩時間
2024年3月31日までは、トラック運転手の現状の休憩時間は以下のようになっています。
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労働基準法第32条では1週40時間、1日8時間と定められていますが、トラック運転手の1日の拘束時間はこの規定をはるかに上回っています。
トラック運転手は連続運転可能時間が4時間以内となっているため、運転時間が4時間以内または4時間超過直後に運転をやめて、30分以上の休憩時間を確保しなければなりません。
法律ではこのような規定があるものの、実際にはトラック運転手は到着時間に間に合わせなければならず、休憩時間が守られているケースは多くないのが現状です。
2024年問題で変わる休憩時間ってどうなる?
2024年問題とは、冒頭のように労働基準法の改正にともない、トラック運転手の時間外労働時間(残業時間)が制限されます。
時間外労働時間の制限により、運送業者は運転手不足が発生し、本来行なうことができていた業務ができなくなってしまうのです。
ここでは具体的に2024年問題で変わる休憩時間についてご紹介していきます。
430休憩について
2024年問題が取り上げられるようになってから「430(ヨンサンマル)休憩」という言葉が出てくるようになりました。
430休憩とは、「4」時間を超えて運転する場合は「30分」以上の休憩等を取らなければならないという決まりを示す呼称です。
ここでのポイントは「休憩等」という表現になっていること。
「休憩等」には、一般的な休憩に加えて荷積み・荷下ろしをしている時間も含まれるのです。
つまり430休憩とは、運転をしていない時間が4時間以内または4時間経過直後に30分以上確保すると問題がないという扱いになります。
法的にどう変わるのか
前述では、2024年3月31日までのトラック運転手の現状の休憩時間をお示ししました。
2024年4月1日からは法的に、以下のように変更されます。
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ここで注目してほしいのは「連続運転可能時間」で、2024年4月1日から適用されるルールでは「SA・PAに駐停車できない際は4時間30分まで延長可」という内容が追加されています。
このようにトラック運転手の休憩時間については詳細のルールが追加されるようになったのです。
第何条が変わるのか
労働基準法第36条の改正にともない、2024年4月1日からトラック運転手の時間外労働時間の上限が960時間までに制限されることになります。
そもそも労働基準法第36条とは
「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」
参考:労働基準法36条
と規定しています。
36協定を結ぶことで1カ月の残業時間が45時間、1年につき6カ月まで最大360時間の労働時間の延長できるのです。
同じく労働基準法第36条の中の5項では、特別な事情がある場合は、時間外労働年720時間以内、1カ月100時間以内、複数の月においての平均80時間以内、限度時間を超過して時間外労働させられるのは年6カ月との規定があります。
ところがトラック運転手は「自動車運転者業務」という区分に該当し、上記のルールが適用されません。
そのことからトラック運転手は、他の労働者と比較すると労働条件がかなり厳しく、「きつい仕事」と言われてきたのです。
2024年4月1日からの改正労働基準法で、トラック運転手の休憩時間等が改正されましたが、これまでの厳しい状況から「若干」緩和されたという見方が正しいでしょう。
法的に変わるとどうなるのか
改正労働基準法が適用されることで社会で生じる問題を「2024年問題」といいます。
ここでは法的に変わると社会がどのように影響をもたらすのかご紹介します。
運送会社の収益減少・送料値上げ
トラック運転手の労働時間の上限が定められ、休憩時間の確保が規定されることにより、運送会社はこれまでに扱っていた荷物量をさばけなくなります。
取り扱う荷物量が減少するということは、運送会社の収益も比例して少なくなります。
収益が少なくなると運送会社は経営維持のために送料をあげてくるでしょう。
この現象は少数の運送会社で起こるものではなく、国内の多くの運送会社で抱える問題であるため、運送会社による送料の一斉値上げとなる可能性も低くありません。
このように運送会社への影響もありますが、会社企業や個人が荷物を送る際にも大きな影響を及ぼすのです。
トラック運転手の離職
上記のように、運送会社は経営維持のために送料の値上げに踏み切る可能性は大いに考えられるでしょう。
ただ運送会社は、送料を値上げすることで顧客が離れるのではないかという心配をします。
他の運送会社も含めて、送料の一斉値上げであれば顧客離れのダメージは小さいですが、自社だけが値上げとなると顧客離れは必至です。
運送会社が送料の値上げに踏み切れない場合、経営維持を最優先させるとなると、雇用しているトラック運転手の給料を下げたり、社員の採用を減らしてアルバイト採用を中心にするなど、雇用形態についての改善を行なうでしょう。
もし給料が減るとなった場合、トラック運転手の離職が進むことも考えられます。
このようにトラック運転手の生活にも影響を及ぼす可能性があるのです。
2024年問題については下記の記事でもっと詳しく紹介しておりますのでそちらもご覧ください。
運送業が問題視している「2024年問題」とは?運送業の働き方改革で何が変わるのか?対応策や事例も紹介
トラック運転手の休憩時間の管理方法って?
前述でトラック運転手の休憩時間についてはご紹介しましたが、トラック運転手は会社内で働いているわけではありませんので、適切な休憩時間をとっているかの管理が難しい状態です。
トラック運転手が実際に取得した休憩時間を管理するためにはどうすればよいのでしょうか。
ここでは、トラック運転手の休憩時間の管理方法についてご紹介します。
デジタコ(デジタルタコグラフ)で管理する
デジタコとは、トラックの運転時の速度・走行時間・走行距離などの記録をメモリーカード等の記憶媒体に記録する運行記録計のことをいいます。
デジタコの機種によっては位置情報やエンジン回転数とも連動しているため、より正確な記録をとることができるのです。
デジタコを利用することでトラック運転手が適切な休憩時間を取っているかを可視化できますし、もし休憩を確保していない場合は、適宜指導しながら休憩時間を確保させることができます。
ロジポケを導入する
ロジポケは、トラック運転手ごとの労務時間状況をリアルタイムで把握することが可能なシステムです。
拘束時間や残業時間の超過、休憩時間の不足が確認された場合は事前にアラート機能でお知らせ。
ロジポケのようなシステムを使用することでトラック運転手の休憩時間を管理することができます。
法律に違反している休憩時間・休日の例
上記ではトラック運転手の休憩時間について詳しくみていきました。
実際にトラック運転手として働き始めた際に「この休憩時間や休日の取り方は法律に違反していない?」と感じるときもあるかもしれません。
法律に違反している休憩時間・休日の例については以下のようなものがあります。
・休息期間が8時間未満
・休息期間と休日を合算しても32時間未満
・毎週法定休日労働(休日出勤)がある
・有休取得を拒否される
休息期間については本記事で触れてきましたが、法定休日労働や有休についても、ここで合わせて知っておいてください。
法定休日については、労働基準法第35条1項に規定があり、少なくとも毎週1日の休日か、4週を通じて4日以上の休日が付与されなければなりません。
また有休については、労働基準法第39条1項に規定があり、使用者は一定期間継続して勤務した労働者に対して、年次有給休暇(有休)を付与しなければならないとしています。
同条には、有休は「使用者に命じられて取得するものではない」と定めているのです。
つまり有休は、労働者が取得したいときに取得できる休暇で、使用者側が有給取得を拒否できるものではありません。
これらはあくまで一例ですが、労働現場で多く見受けられる休憩時間・休日の法律違反の例として知っておいてください。
違反してるかも?と思ったらどう対処すればいい?
上記のように、働き方に関して法律違反しているかもと思った場合は、以下の対処法を参考に動いてみてください。
運送会社に相談する
まずはトラック運転手を雇用している運送会社に、労働基準法に違反していると思われる環境を説明・相談します。
相談内容が法律違反していないかを確認し、問題なければ継続して勤務し、違反している恐れがある場合は運送会社に改善を求めるといいでしょう。
運送会社に相談しにくいかもしれませんが、最近では労働環境を相談する窓口が設けている会社もありますので、一度相談してみてください。
労働基準監督署に相談する
労働基準監督署は、会社企業が労働基準法に基づいて労働者を労働させているかを監督するところで、もし法律に違反した雇用・労働をさせている場合は、会社企業に対して是正勧告等を行ないます。
労働基準監督署に現状の働き方について説明・相談し、必要に応じて運送会社に指導を行なってもらうことにより、労働条件の改善を見込むことができるでしょう。
他の運送会社に転職する
上記2点の対処法は、運送会社との関係にヒビが入ったり、関係が崩れる可能性があります。
何かしらのトラブルを避けたい場合は、他の運送会社に転職するのも1つです。
運送会社は各社で労働環境は大きく異なりますので自身が求める条件に合った運送会社に転職するのもいいでしょう。
実際のトラック運転手の体験談を紹介!
最後に、実際のトラック運転手の体験談についてご紹介しますので、今後のご自身の働き方の参考になさってください。
~ケース①~ Aさん/40代/男性
これまでに複数の運送会社に勤務していたAさんは、待遇面の不満、仕事内容が急にきつくなったなど、転職の背景にはさまざまなことがありました。
トラック運転手の待遇面は各運送会社でそれほど差がないため、少しでも労働環境の良い運送会社を選んで長く働きたいとお思いです。
中でもとくに中小運送会社は、労働時間が長く、退職金制度なし、ケガや事故で運転ができなくなったときに給料が出ないところもあったとのことです。
現在、Aさんは大手運送会社に勤めていることから、給料や福利厚生、労働時間・休日など、好条件で不満なく働いています。
~ケース②~ Kさん/50代/男性
Kさんは運送会社の運行管理者の職務に就いています。
実際にトラックの運転していませんが、トラック運転手の労働時間が長時間化しているトラックの荷待ち時間を改善を求めるために、荷主担当者に交渉した経験があるようです。
荷主担当者は話しを理解してくれましたが、結局待ち時間が短縮されることはありませんでした。
荷主はトラックの到着時間を指定しておきながら、その時間にトラックが到着しても荷下ろしができず、荷待ち時間が発生していることはよくあることです。
荷主のほうが運送会社より立場が上という関係があるため、荷待ち時間の改善は難しいと感じています。
2024年問題が取り上げられる中、現場では運送会社と荷主とのやり取りがあり、相互がトラック運転手の労働環境を改善できるよう、理解が広まってくれればとのことでした。
まとめ
トラック運転手の休憩時間について理解が深まりましたでしょうか。
これまでトラック運転手は過酷な労働環境の中でトラックを運転し、決められた時間に荷物を荷積み・荷下ろししてきました。
その環境があまりにも過酷であったため、2024年4月1日より、改正労働基準法が適用されるようになったのです。
トラック運転手が労働基準法に即し、適切な休憩時間を取りながら業務を行なうことで、トラック運転手の身体的負担・精神的負担を軽減することができます。
もし勤務している運送会社が労働基準法に違反している形で労働者を雇用している場合は、本記事で示した方法で対処してください。
本記事を参考にトラック運転手の休憩時間についてお知りいただき、トラック運転手として就職・転職してみてはいかがでしょうか。