
大量の荷物を一度に運ぶために重宝されるフォークリフト。
フォークリフトは適正に使用すれば大変便利なものですが、
操作方法を誤ると大きな事故に発展してしまいます。
実は、これまでにもフォークリフトにまつわる複数の事故が発生しているのです。
本記事では、フォークリフト事故の事例と原因、
事故の防止策や注意点について、詳しく解説します。
フォークリフト事故の原因
フォークリフト事故の原因にはどのようなものがあるのかみていきましょう。
運転操作ミス
運転操作ミスには、急発進、急ブレーキ、速度超過などが挙げられます。
指さし確認など、基本的な安全確認方法を行なうことで、
運転操作ミスを防ぐことが可能です。
また、周囲の安全確認を怠ることでも事故になりますので、
常々安全確認することが基本となります。
フォークリフトの点検整備不足
フォークリフトの点検整備が不足していると、事故に発展する可能性が高いです。
フォークリフトの定期的な点検を怠ってはなりません。
パレットの危険な積み方
パレットに大量の荷物を積む、バランスが悪い積み方をすると、
荷崩れなどを起こし、事故につながります。
パレットに荷物を積む際は、安全な積み方を行ない、
荷物を固定するなど、適切な積み方を心がけましょう。
フォークリフト事故の発生状況と統計
フォークリフト事故の発生件数については、一般社団法人・日本産業車両協会の
「フォークリフトに起因する労働災害の発生状況 ―厚生労働省労働災害統計より―」の
データに記載されているように、
2023年のフォークリフトに起因する死傷災害発生件数は1,989件、
死亡災害発生件数は22件発生しています。
また、2019年~2023年の5年間平均での死傷事故と死亡事故の事故型別割合は、
以下のような割合になっています。
|
死傷災害 |
死亡災害 |
はさまれ・巻き込まれ |
35.4% |
22.7% |
激突され |
27.3% |
18.0% |
墜落・転落 |
11.9% |
18.0% |
転倒 |
5.7% |
17.2% |
飛来・落下 |
6.0% |
11.7% |
その他 |
13.7% |
12.5% |
このように、毎年フォークリフトにまつわる事故は発生しているのです。
フォークリフト事故の事例
フォークリフト事故の事例についてみていきましょう。
転落・墜落事故
作業員がフォークリフトを作業しているときに、
フォークリフトごと墜落・転落したり、荷台から墜落・転落する事故があります。
トラックヤードなどでは、
車輪止めなどがないところで運転操作をミスしてしまうことで、
フォークリフトごと転落する場合があるのです。
挟まれ・巻き込まれ事故
フォークリフトを転回させた際に、勢い余って車体が傾き、
投げ出された作業員がフォークリフトに挟まれ事故が発生しています。
また、旋回時に死角で作業していた作業者を、
フォークリフト後部と荷物との間に挟んだり巻き込んだりする事故も起きているのです。
人への激突事故
フォークリフト作業員が操作に不慣れな場合、
ハンドル操作ミスやブレーキが遅れるなどで、人へ激突する事故が発生しています。
スピードを出しすぎると、どうしても操作が追い付かなくなる場合がありますので、
スピードは抑えて操作しなければなりません。
フォークリフト事故に関連する法律と規制
フォークリフト事故に関連する法律と規制についてみていきましょう。
フォークリフトの安全基準
フォークリフトは、
労働安全衛生規則に基づいた安全な作業を徹底しなければなりません。
|
項目 |
内容 |
1 |
速度制限の設定 |
構内の速度を10km/h未満にするなどの制限を設ける |
2 |
荷重の遵守 |
許容荷重を超過した荷を積載しないようにする |
3 |
歩行通路の整備 |
フォークリフトと人が通るところを明確に分ける |
4 |
用途外の使用禁止 |
用途以外にフォークリフトを動かさない |
5 |
シートベルト着用 |
シートベルト装着車はシートベルトを着用する |
6 |
安全確認の徹底 |
前方を注視し、見通しの悪いところは徐行する |
7 |
爪だし走行禁止 |
爪を出した状態での走行を禁止する |
8 |
バック時の後方確認 |
バックする際は、目視で後方確認を行なう |
上記を守ることで、安全にフォークリフトを操作することが可能です。
事故発生時の報告義務と手続き
フォークリフトでの事故が発生した場合、
おもに労働安全衛生法に基づいて報告義務が生じます。
負傷、窒息、急性中毒により死亡または休業した場合は、遅れることなく、
様式第23号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。
また、事業場での火災、爆発、建設物の倒壊、遠心機械の破裂事故、ボイラーの破裂、
クレーンなどの倒壊や墜落等の事故の場合は、
負傷者の有無に関係なく、遅れることなく
労災事故報告書(様式第22号)を労働基準監督署に提出する義務があるのです。
企業の安全管理責任と対策
企業は、以下のように安全管理責任と対策を講じなければなりません。
|
項目 |
対策 |
1 |
資格の確認 |
フォークリフト免許を保持しているか確認する |
2 |
安全教育の実施 |
フォークリフトの操作方法・安全ルール教育を実施する |
3 |
危険場所の確認 |
フォークリフト作業時の危険場所を確認・周知する |
4 |
ヘルメットの着用 |
フォークリフト作業時はヘルメットの着用義務を促す |
上記の対策を行なわなかった場合、
民法第715条「使用者責任」の「従業員が業務中に第三者に損害を与えた場合、
会社は使用者責任を負い、連帯して損害賠償責任を負うことがある」に
該当する場合があります。
また、事故が起きた場合、企業は労災保険の申請を行なわなければなりません。
フォークリフトを運転する際の注意点
フォークリフト運転する際の注意点についてみていきましょう。
周囲の安全確認
フォークリフトは視界が開けた見晴らしのいい安全確認しやすいところで操作し、
見通しの悪いところや、せまい通路のところの出入口では一旦停止するなど、
周囲の安全確認しなければなりません。
指差し呼称も有効ですので導入を検討してみてください。
「急」のつく操作を避ける
急発進、急停止、急旋回は、
荷崩れやフォークリフトが転倒する恐れがあるため、大変危険です。
操作はゆっくり・丁寧に行ないましょう。
シートベルトの着用
フォークリフトにシートベルトが設置されている場合は、
必ずシートベルトをしてください。
シートベルトを着用していると、
万が一のときにフォークリフトの外へ放り出されるのを防ぐことができます。
企業が取り組むべきフォークリフト事故の防止策
企業が取り組むべきフォークリフト事故の防止策についてみていきましょう。
運転者への定期的な安全講習
前述のように、フォークリフトは、ゆっくり・丁寧に操作することが大切です。
急発進、急停止、急旋回は、荷崩れやフォークリフトが転倒する恐れがあります。
フォークリフトの操作を慣れている方にも、日頃の安全運転を心がけるために、
安全講習を受けさせることが事故防止につながるのです。
フォークリフトの定期点検とメンテナンス
車と同様にフォークリフトも定期点検とメンテナンスが必要となります。
点検とメンテナンスがいき届いていないフォークリフトは、
フォークリフトの機器の問題で事故が発生する可能性があるのです。
フォークリフトを定期的に点検したり、
メンテナンスをすることはとても大切といえます。
作業場の適切なレイアウト改善
まず作業のどの部分で、フォークリフトが行き来するか見出しましょう。
その上で、フォークリフトが通行すると危険な場所がないかを見える化し、
危険な場所がある場合は、
その部分をフォークリフトが通行しないようにするなどの対策が必要です。
安全機器とテクノロジーの活用
フォークリフト事故を防ぐためには、
安全機器とテクノロジーを活用する方法があります。
死角をなくすための360度カメラやAI画像認識、
速度制御システムや自動停止システムを搭載したフォークリフトを導入することで、
フォークリフト事故防止は実現できるでしょう。
まとめ
フォークリフト事故の事例と原因、事故の防止策や注意点について、
ご理解深まりましたでしょうか。
フォークリフトの事故原因にはさまざまなものがありました。
同様の事故を起こさないためには、企業が安全講習を講じるなど、
さまざまな方法をご紹介しましたので、熟読なさってください。
また、フォークリフトの荷物の種類などについては下記にて紹介しておりますので
そちらも合わせてご覧ください。
本記事を参考に、フォークリフトの安全操作について振り返っていただければ幸いです。
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