業務上、車を使用する機会が多い中で、社員が運転免許をもっていないことがあります。
運転免許を取得させていたほうが円滑に業務が進むことから、
社員に運転免許を取得させる場合、
会社が費用を負担して免許を取得させるのは妥当なのでしょうか。
本記事では、社員の業務に必要な運転免許費用は会社負担が妥当なのか、
法律上どうなっているのかについて詳しく解説します。
運転免許の取得費用は社員は会社に負担してもらえる?
運転免許の取得費用は、会社に費用負担してもらうことが可能です。
ただ、法的には会社が負担する義務はありませんので、
勤務先に費用負担については話し合わなければなりません。
まずは就業規則を確認し、運転免許取得に関する費用負担について記載がなければ、
直接会社と問い合わせる必要があります。
運転免許の種類については、運転ドットコムの下記の記事を合わせて参考になさってください。
運転免許の試験不合格の場合の費用負担は会社?個人?
運転免許を取得する場合、教習所に通学するのが一般的で、
教習所では学科試験や技能試験が実施されます。
それらの試験に不合格になった場合、再試験を受験する場合は、
別途必要を徴収される場合があります。
試験不合格の場合の費用負担についても、前述と同様に、
就業規則に規定がなければ、会社に問い合わせなければなりません。
会社によっては、免許取得費用については負担してくれますが、
試験不合格時の費用に関しては
社員が実費で支払う規定を採っているところもあるでしょう。
一方で、試験不合格になった場合に、
教習所によっては追加の費用負担なしで
何度でも再試験を受験することができるパックを用意している教習所があります。
もちろんパックに加入するためには、基本的な教習料金にプラス料金がかかりますが、
その費用負担までしてくれるかも会社に相談する必要があるのです。
法律上会社が負担しなければならないのか?
前述のように、運転免許の費用負担を
会社がしなければならないという法律はありません。
つまり、法的には、会社が費用負担する義務はないのです。
会社が費用負担しないことは違法ではないことについては、以下を参考にしてください。
労働者が自費で負担する根拠がある場合
労働者に対して、自費で運転免許を取得することを命じることは、
労働者に対して資格取得を支払わせるという負担を課すことになります。
会社が労働者に対して命じる場合は、労働契約上の根拠が必要となるのです。
労働者・会社間で労働契約を締結しているか、
会社の就業規則などで
「資格取得に関する費用は労働者が負担する」と規定されている場合は、
契約上の根拠があるとみなされることから、
会社は労働者に対して自費で資格取得を命じることができます。
この場合は、労働者は自費で運転免許取得費用を支払わなければなりません。
労働者が自費で負担する根拠がない場合
労働契約や就業規則などに
「資格取得に関する費用は労働者が負担する」といった規定がない場合は、
労働者が自腹で資格取得を命じる根拠はありません。
つまり会社から自費で資格取得を命じられたとしても拒否することができますし、
一方で会社に対して資格取得の費用負担を求めることができるのです。
会社からの資格取得命令は違法ではありませんが、
労働者に費用負担を強制する根拠がない場合は、
自費での資格取得命令は違法となります。
そのような違法な命令に労働者は従う義務はありません。
それを理由に、社内で不利益な処分が下されたとしても、
処分そのものが無効となることを知っておいてください。
業務に必要であれば運転免許の費用は会社が支払いしたほうがいい!
社員に運転免許を取得させる場合、業務に必要であれば、
運転免許の費用は会社が支払したほうがいいです。
第一に、社員に運転免許を取得させることで、業務がより円滑に進むことになります。
第二に、社員に会社負担で運転免許を取得させた場合、
会社は経費として運転免許取得費用を適用することができるのです。
ただ注意点として、運転免許が業務に必要なものであっても、
最終的に運転免許は社員個人に帰属することになります。
そのため会社が費用負担した際は、
その社員に対して経済的利益を与えたことになりますので、
給与課税させることを確認してください。
社員の運転免許取得費用を負担する場合の税の扱いは?
社員に運転免許を取得させた際の費用負担の税の扱いについては、
以下のようになります。
所得税関係
会社負担で社員に免許を取得させる際に、
「業務遂行上必要なもの」である場合は、
給与として所得税を課さないこととされています。
「業務遂行上必要なもの」とは、
免許がなければ仕事に携われない状況のことをさすのです。
例えば、事務員に免許を取得させることで、
サービス向上につながるかもしれませんが、
事務員として事務の仕事ができることから「業務遂行上必要なもの」にあたりません。
つまり業務上の車を運転する必要がない社員に、
会社負担で免許を取得させたとしても、給与として所得税が課されるのです。
所得税が課せられた場合は、源泉所得税が課せられることになりますので、
免許取得費用分を加えた源泉所得税を納付しなければなりません。
また普通免許は、日常生活の運転でも使える免許であるため、
普通免許の取得費用は社員が支払うべきとされています。
会社負担した場合は、給与を支払ったものとされますが、
業務遂行上必要なものと認められた際は給与とされない場合があるため
注意してください。
免許を取得する際に教習所まで出向く交通費も、
業務遂行上必要なものと認められなかった場合は社員に対する給与となります。
法人税関係
社員に会社負担で免許を取得させる場合、
業務遂行上必要なものであると認められた際は、
免許取得費用は法人税法上費用として認められます。
一方で、業務遂行上必要なものではないとなった際、
役員に対しては取得費用相当の役員賞与をその役員に支払ったとされ、
事前確定届出をしていないときは取得費用の全額が、
法人税法上の費用には認められません。
社員に対しては、前述のように、
社員に給与を支払った扱いになることから、法人税法上は費用になるのです。
消費税関係
運転免許取得費用の中で、教習所の費用は仕入税額控除対象ですが、
運転免許センターの運転免許交付費用は行政費用に分類されますので、
仕入税額控除にはなりません。
業務遂行上必要なものと認められないときは、
取得費用は給与扱いになることから、仕入税額控除の対象にはなりません。
まとめ
社員の業務に必要な運転免許費用は会社負担が妥当なのか、
法律上どうなっているのかについて、ご理解深まりましたでしょうか。
会社は労働者に対して運転免許取得の費用負担をする義務はありません。
ただ会社負担で労働者に費用負担するとメリットがあることをご紹介しました。
また労働者は、費用負担を受けられるかどうか、
就業規則などで確認する必要があります。
運転免許に費用負担する際、
会社は経費や税金のことを考えなければならないことを忘れないようにしてください。
本記事を参考に、労働者と会社で運転免許取得時の費用負担について、
話し合ってみてはいかがでしょうか。