ドライバーは身体が資本であり、健康管理次第で安全運転に大きく影響します。
「ドライバーの健康管理は、どのようにして行うのか」と疑問に感じている方も多いでしょう。
本記事では、トラックドライバーの健康診断や必要な健康管理について解説します。
健康管理は大切
健康管理を大切にする理由と、ドライバーが陥りやすい健康トラブルについて解説します。
ドライバーに必要な健康管理
ドライバーの健康状態は、安全運行に大きく影響を及ぼします。
特に必要な健康管理として、以下の項目が挙げられます。
・コンビニ弁当など偏った食生活により、高血圧、貧血などの要因になる。
・睡眠不足、疲労回復不十分で注意力散漫になる。
・運動不足による腰痛のおそれがある。
・既往症の放置により、安全運転の妨げになる。
そこで充分な健康管理が保たれ、業務遂行に懸念する事項を見つけて対策するのが健康診断です。
よくある健康トラブルは?
ドライバーを悩ませる代表的な健康トラブルとして、以下の項目が挙げられます。
・高血圧
・心臓疾患
・腰痛
・ヘルニア
・痔
職業病として、懸念しているドライバーが多いです。
特に腰痛に関しては、運転や重たい荷物の積み下ろしを行うドライバーによく見られる症状であるため、注意が必要です。
健康診断の流れと検査項目
労働安全衛生法により、事業者はドライバーに対して、健康診断をはじめとする労務管理が義務付けられています。
健康診断の流れと健康診断の検査項目について解説します。
健康診断の種類
健康診断の種類は、以下の表のとおりになります。
種類 | 対象者 | 健康診断の時期 |
定期健康診断 | 常時使用する労働者 | 1年以内(原則) |
特定業務従事者の健康診断 | 深夜における夜勤、健康を害する業務、激動する業務 |
事業者側が労働者を雇用時 異動の時 半年以内の時 |
海外派遣労働者の健康診断 | 海外に半年以上派遣する労働者 |
海外に半年以上派遣する時 帰国後、国内の業務を実施させる時 |
労働者に健康診断を実施していない事業者は、労働基準監督署の経由で運輸局に通報される仕組みになっています。
出典:全日本トラック協会「健康起因事故防止マニュアル」
雇い入れ時の健康診断
雇い入れ時の健康診断は、事業者が常時雇用する労働者と雇用契約を締結した際に、医師による健康診断を受診させなければいけません。
事業者側の対応になりますが、 労働基準監督署に対する報告義務はありません。
定期健康診断
定期健康診断の目的は、労働安全衛生法に規定され、常時雇用されるドライバーの健康状態を把握することです。
事業者は、ハイリスク者の健康診断結果に基づき、事後の医師による指導・助言を受ける機会を得られます。
また、事業者がハイリスク者に対する労働時間の短縮及び作業転換等など対策を検討する判断材料になります。
特定業務従事者の健康診断
特定業務従事者にあたるドライバーの健康診断は、特定業務への配置換えの際及び6ヶ月以内に1回に受診しなければなりません また、定期健康診断と同様、健康診断項目に沿って受診します。
胸部エックス線検査は1年以内に1回、定期的に実施すれば良いとされています。
出典:厚生労働省「健康診断を実施しましょう」
健康診断の流れ
医師による健康診断は、以下の流れで実施されます。
1.健康診断の結果の記録 健康診断個人票を作成
2. 健康診断の結果についての医師等からの意見聴取
3. 健康診断実施後の措置 (作業の転換、労働時間の短縮等)
4. 健康診断の結果の労働者への通知
5. 健康診断の結果に基づく保健指導
6. 健康診断の結果の所轄労働基準監督署長への報告
まずは、健康診断結果に基づき事業者は、受診者の漏れを確認しましょう。
個人情報に注意しながら、車両運行に支障をきたすおそれのあるドライバー(ハイリスク者)を把握します。
特に、ハイリスク者には、問題のある状態にかかる受診、または必要に応じて、二時健康診断の利用を検討することが必要です。
健康診断の検査項目
健康診断の検査には、以下の11項目あります。
・既往歴及び業務歴の調査
・自覚症状及び他覚症状の有無の検査
・身長、体重、腹囲(※)、視力および聴力の検査
・胸部エックス線検査(※)および喀痰検査(※)
・血圧の測定 ・貧血検査(※)
・肝機能検査(※)
・血中脂質検査(※)
・血糖検査 ・尿検査
・心電図検査(※)
(※)は、定期健康診断で省略できる項目です。
特定業務従事者になることも
特定業務従事者になり得る条件は、週に1日以上の月に4日以上で、22時から朝方5時まで含んだ時間帯に常態的に働いていることです。
仮に、自身が特定業務従事者に当てはまっていると感じたら、事業者側に確認を取りましょう。
健康管理ポイント
事業者側の健康管理のチェックポイントについて3つ解説します。
ドライバーの持病の把握
事業者側として、健康診断でドライバーの持病を把握したい場合は、以下の処置を行います。
・二次健康診断を受診
・二次健康診断後に医師から運転業務の可否、乗務の際の配慮するべき意見を聴取
仮にドライバーから持病の申告があれば、運行管理目的以外で情報を利用しないことを本人の同意を得ます。
そして本人から診断書を入手し、医師からの医療的な指導を聴取しなければなりません。
点呼時の確認
事業者側はドライバーの健康状態を把握するために、乗務前の点呼は以下の流れで実施します。
・相互に近い距離で点呼する。
・ドライバーの顔色を観察、声を出させる。
・健康状態に関して何か気になることはないかなどを確認 ・持病のあるドライバーには、定期的な通院、医師から処方された薬の服用の有無を確認
健康管理ノートの作成
健康管理ノートは、ドライバーの健康管理の支援ツールとして、運転者自身の健康状態に関する情報を入力可能です。
健康管理ノートをドライバーに配布することによって、自己管理を促進するメリットがあります。
下記の健康管理に必要な情報に加えて、ドライバーの健康診断結果等の情報を記載できます。
・生活習慣の改善方法及び車両運行に支障をきたす病気の知識 ・定期健康診断の利用及び活用方法 ・ドライバーが健康管理に際して事業者に方法すべき事項
運輸ヘルスケアナビシステムに関して
定期健康診断を受診させたが結果が芳しくなく、処置・対策が困難な場合は、運輸ヘルスケアナビシステムを活用しましょう。
運輸ヘルスケアナビシステムでは、脳・心臓疾患による過労死等や健康起因事故が予想されるハイリスク者が明確化できます。
そして、明確化した後の受診や生活指導、事業所内の健康管理支援まで利用できます。
このように運輸ケアヘルスケアシステムは、事業者がハイリスク者のフォローに限界がある場合に有効的です。
出典:全日本トラック協会「トラック運送事業者のための健康起因事故防止マニュアル」
まとめ
本記事では、ドライバーと事業者による健康管理の把握と、懸念事項の対策について解説しました。
ドライバーは、健康診断結果をもとに自身の健康状態を把握して、事業者側に報告・相談して安全運転に努める必要があります。
事業者は、運転者の健康診断結果をもとに懸念事項の対策をして、安全な運行管理に努めなければなりません。
日頃からドライバーと事業者が相互に良好なコミュニケーションをとることが重要です。