
クレーン車やブルドーザー、フォークリフトなどを公道で運転する場合は、
大型特殊免許が必要になります。
警察庁交通局運転免許課の「運転免許統計 令和6年版」によると、
普通免許をもっている人は8,000万人を超えているのに対して、
大型特殊免許をもっている人は約500万人となっており、
大型特殊免許をもっている人はあまり見かけないのではないでしょうか。
そのため、大型特殊免許を取得するのにかかる費用や時間などを聞くことは困難です。
本記事では、大型特殊免許の取得にかかる費用や時間、
費用を抑えるコツについて、詳しく解説します。
大型特殊免許とは?
大型特殊免許とはどのような免許なのかみていきましょう。
大型特殊免許で運転できる車両
大型特殊免許では、以下のような車両の運転が可能です。
|
用途 |
車両例 |
1 |
建設現場で使用される車両 |
クレーン車、ブルドーザー など |
2 |
農作業や道路整備で使用される車両 |
トラクター、除雪車 など |
3 |
工場や倉庫でしようされる車両 |
フォークリフト など |
大型特殊免許で乗れる車に関しては、
運転ドットコムの下記の記事も役に立ちますので、
合わせて参考になさってください。
大型特殊免許で乗れる車種一覧と取得方法│今持っている免許で取得できるかも確認しよう!
大型特殊免許取得のメリット
大型特殊免許を取得するメリットについてみていきましょう。
普通免許があれば簡単に取得可能
大型特殊免許を取得する際は、教習所に通い、
原則、学科教習22時間、実技教習12時間を受講し、
卒業検定を受検しなければなりません。
しかし普通免許を持っていると、学科教習22時間が全て免除となり、
合計6時間の講習を受けるだけで検定試験に臨むことができるのです。
受講しなければいけない教習の数も少ないですので、免許取得の費用も抑えられます。
仕事の幅が広がる
前述の「大型特殊免許で運転できる車両」でご紹介したように、
大型特殊免許でなければ運転できない車両があるのです。
大型特殊免許を持っていると、
建設現場や農作業、工場や倉庫での仕事など
さまざまな仕事に就くチャンスが広がります。
農業のように、職種によっては高齢化が進み、
後継者不足が社会問題になっていますので、
大型特殊免許をもっていれば即戦力として活躍できるでしょう。
教育訓練給付制度を利用できる場合がある
大型特殊免許を取得する場合、教育訓練給付制度を利用し、
費用を節約した上で取得できる可能性があります。
詳しくは後述の「大型特殊免許の取得費用を抑えるコツ」をご参照ください。
大型特殊免許の取得条件
大型特殊免許を取得するための条件についてみていきましょう。
年齢
大型特殊免許取得できる年齢は、満18歳以上です。
視力
視力は、両眼で0.7以上、片眼で0.3以上が必要となります。
片眼の視力が0.3未満の場合、一方の眼の視野が150度以上であることが求められます。
メガネ、コンタクトの矯正も可能ですのでご安心ください。
色覚
色覚は、信号の色である「赤」「青」「黄色」の識別ができなければなりません。
聴力
聴力は、10mの距離で90dBの警報器が聞こえている必要があります。
身体障害
身体障害については、
自動車の運転に支障きたすような身体障害がないことが求められます。
運転経歴
運転経歴は、普通免許または中型免許をすでに持っていることが条件です。
大型特殊免許取得に必要な書類一覧
大型特殊免許を取得する際は、以下の書類を用意する必要があります。
|
必要書類 |
備考 |
1 |
運転免許証 |
・すでに運転免許証を持っている方のみ必要 ・記載事項に変更がある場合は住民票が必要 |
2 |
本籍記載の住民票 |
・運転免許証を持って居ない方のみ必要 ・運転免許保持者で記載事項に変更がある場合は必要 ・住民票は個人番号が記載されていないものが必要 |
3 |
卒業証明書 |
・教習所を卒業した場合のみ必要 |
4 |
申請用写真 |
・縦3cm、横2.4cm、無帽、正面、上三分身、無背景で申請 日以前6ヶ月以内に撮影したものが必要 |
上記はそれぞれ1枚ずつ必要です。
大型特殊免許取得の流れ
大型特殊免許を取得する際の流れは、以下のようになります。
自動車教習所での取得
まずは、自動車教習所での取得の流れについてみていきましょう。
・入校手続き
・学科教習
・技能教習
・卒業検定
・適性検査
入校手続き
大型特殊免許が取得できる教習所に申し込み、入校します。
学科教習
交通法規などを学ぶために、22時間の学科教習を受講していきます。
普通免許をもっている場合は、学科教習は免除されます。
技能教習
運転技術を習得するために、12時間の技能教習を受講していきます。
卒業検定
教習所内のコースで、運転技術を評価する試験が行なわれますので、受検しましょう。
適性検査
運転免許試験場で行なわれる視力検査・聴力検査などを受け、
基準を満たせば免許交付となります。
運転免許試験場の一発試験での取得
続いて、運転免許試験場の一発試験での取得の流れについてみていきましょう。
適性検査
視力検査・聴力検査などを受けます。
学科試験
大型特殊自動車の知識を問う試験が実施されますので受験してください。
技能試験
運転免許試験場内のコースで、
運転技術を評価する試験が行なわれますので、受験しましょう。
免許交付
学科試験・技能試験に合格すれば、免許証交付となります。
大型特殊免許取得にかかる費用と時間
大型特殊免許を取得する際にかかる費用と時間についてみていきましょう。
教習所にかかる費用
教習所に通い、大型特殊免許取得する場合は、以下のような費用がかかります。
|
免許 |
費用 |
1 |
普通免許所持者 |
約7万円~約13万円 |
2 |
普通免許未所持者 |
約15万円~約20万円 |
前述の「大型特殊免許取得のメリット」で取り上げたように、
普通免許をもっている場合は、学科教習22時間が全て免除となり、
合計6時間の講習を受けるだけで検定試験に臨むことができるため、
教習所にかかる費用が低いのです。
試験時にかかる費用
教習所で実施される卒業検定の費用は、
教習費用の中に含まれていますので、費用を徴収されることはありません。
ただし、教習所によっては卒業検定に合格しなかった場合、
再検定料が発生する場合がありますのでご注意ください。
なお、運転免許試験場での一発試験を受験する場合、
受験料2,600円、試験車使用料1,450円の合計4,050円が必要です。
また、教習所卒業者、一発試験受験者に関わらず、
免許証交付料として2,050円は必要となります。
平均的な取得期間
普通免許を持っている場合は、6時間の技能教習のみの受講となります。
技能教習は1日に最大2時間までの受講と決められていますので、
6時間の技能教習を受ける場合は3日間、卒業検定受験日が1日必要ですので、
最短4日間で教習所を卒業することが可能です。
一方、普通免許を持っていない場合は、
技能教習が12時間必要ですので6日間の教習期間が必要となります。
学科教習22時間を6日間ですべて受講できた場合は、卒業検定受験日の1日を追加して、
最短7日間で卒業は可能ですが、22時間の学科教習を6日間で完結させるためには、
毎日教習所に通わなければならないでしょう。
運転免許試験場での免許交付は、検査などに問題がなければその日に交付されますので、
普通免許を持っている人は最短で5日で大型特殊免許を手に入れることが可能です。
追加費用が発生するケースと費用
大型特殊免許を取得する際に必要な費用は前述の通りですが、
教習や卒業検定に合格しなければ追加費用が発生します。
追加費用は教習所によって異なりますが、再検定や補習は1回につき7,700円程度、
追加教習は1時間につき5,500円程度、
技能教習を当日キャンセルした場合は
1時間につき2,200円程度の追加費用が発生するのです。
大型特殊免許の取得費用を抑えるコツ
大型特殊免許の取得費用を抑えることについてみていきましょう。
教育訓練給付制度を利用する
教育訓練給付制度とは、国が指定した教育訓練修了後、
受講費用の一部が支給される制度です。
大型特殊免許は、厚生労働省が教育訓練給付制度に指定していることから、
条件に合った受講者は助成を受けることができます。
教育訓練給付制度を受けるためには、以下の条件を満たしていることが必要です。
・雇用保険に1年以上(2回目以降の給付を受けたい場合は3年以上)加入している
・退職している場合は、離職日から1年が経過していない
給付金額は、受講費用の20%(上限10万円)となっています。
勤務先の資格取得支援制度を利用する
企業によっては、福利厚生として資格取得支援制度を設けているところもあります。
資格取得支援制度を設けている企業は、
大型特殊免許の取得費用も助成してくれる場合があるのです。
まずは勤務先に、大型特殊免許取得にあたり、
資格取得支援制度が利用できるかどうかの確認をしてください。
大型特殊免許を取得する際の注意点
大型特殊免許を取得する際の注意点についてみていきましょう。
大型特殊免許を持っているだけでは車両操作ができない
大型特殊免許を取得される方の中で
「大型特殊免許を取得すれば、前述の「大型特殊免許で運転できる車両」を操作できる」
と思いの方がいらっしゃるのではないでしょうか。
大型特殊免許は、あくまで「大型特殊車両を公道で走らせることができる」のであって、
大型特殊車両を操作できるのではありません。
例えば、大型特殊免許を取得すると公道でフォークリフトを走らせることは可能ですが、
フォークリフトを業務で操作するためには
「フォークリフト運転技能講習」や「フォークリフトの運転に係る特別教育」を
受講しなければならないのです。
このように、大型特殊免許を持っているだけでは車両操作はできませんので、
これから大型特殊免許を取得しようとお考えの方は注意しましょう。
大型特殊免許で認められた車両しか運転できない
大型特殊免許を持っていても、
普通免許で運転可能な乗用車など運転できるわけではありません。
大型特殊免許で公道を走行できるのは、
大型特殊車両、小型特殊車両、原動機付自転車のみとなります。
普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許などで運転可能な車両を運転する場合、
それぞれの免許を取得しなければならないのです。
まとめ
大型特殊免許の取得にかかる費用や時間、費用を抑えるコツについて、
ご理解深まりましたでしょうか。
大型特殊免許は、あくまでも大型特殊車両を公道で走行させるための免許であり、
車両を操作するためには、別途免許や資格が必要です。
大型特殊免許を取得するための費用を抑えるコツについても記載しましたので、
参考になさってください。
本記事を参考に、大型特殊免許を取得してみてはいかがでしょうか。
執筆者
