トラックには小型のものから大型のものがあり、それぞれに積載量が決められています。
運送会社はもちろんのこと、トラック運転手も運転するトラックの積載量を知っておかなければ過積載で罰則の対象になるかもしれません。
罰則だけでなく、過積載走行するとトラックへ大きな負担を与えたり、会社経営にも悪影響を及ばす可能性が出てきます。
本記事ではトラックの積載量や計算の仕方、罰則について詳しく解説します。
トラックの積載量って?最大積載量や過積載、車両総重量についても紹介!
トラックに荷物を積む際に気にしなければならないのが積載量。
トラックには最大積載量や車両総重量が決まっており、決められた重さを超えると過積載となるため注意が必要です。
ここではトラックの積載量についてみていきましょう。
トラックの積載量って?
トラックの積載量とは、積める量のことをいいます。
積載量を計算するためには、乗員などの重さを除いた車両の重さである「車両重量」と
後述で説明する「車両総重量」を理解する必要があります。
輸重量や輸荷重について
トラックは輪重量・輪荷重についても重量の決まりがあることを知っておくことが必要です。
輪重は1本の車軸にかかる重さのことをいい、10トンを上回ってはいけないというきまりがあります。
輪荷重は、1つの車輪のかかる重量のことで、5トンを超えてはならないと規定されています。
輪重量や輪荷重が定められている内容を超えていると、安全に走行できないことから法律違反となってしまうのです。
このようにトラックの積載量には、輪重量や輪荷重が含まれていることも知ってください。
トラックの過積載について
トラックの最大積載量を超えた重さを積むことは、
道路交通法第57条で
「当該車両について政令で定める乗車人員又は積載物の重量、大きさ若しくは積載の方法(以下この条において「積載重量等」という。)の制限を超えて乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない」
参考:道路交通法
ただ運ばなければならない荷物が用意されている場合、どうしても積み込まなければならない状況ではあります。
しかし、過積載の状態でトラックを走行させるとトラック運転手や運送会社が罰則の対象になることはもちろんのこと、荷主も罰則の対象となってしまうのです。
最大積載量を超過したトラックが道路を走行すると、
・道路や橋に損傷を与えるリスクが増加
・ブレーキが効きにくい
・カーブで曲がり切れない
・タイヤに負担がかかりバーストの危険性がある
など大きな事故を引き起こす可能性もあります。
このような状況になるとトラックが道路上で立ち往生してしまい、
警察官や交通管理隊が出動したり、大渋滞を発生させる原因となってしまい、さまざまな人に影響を及ぼしてしまいます。
トラックの過積載がない状態で、トラック運転手は業務を行なわなければなりません。
トラックの車両重量について
トラックの車両総重量とは、
・キャブとシャシと架装の重量を合計した車両の重さである「車両重量」
・トラックの定員人数×55kgで体重を計算した「全乗員分の重量」
・上記で解説した「最大積載量」を合わせた重量
のことを指します。
トラックの車両総重量は以下の通りです。
大型トラック | 20t~25t以下 |
中型トラック | 8t未満 |
小型トラック | 4t~5t程度 |
トラックの積載量を紹介!小型から大型まで
前述のように、トラックの積載量を計算するときは、乗員などを含まない車両の重さである車両重量と車両総重量を知る必要があります。
トラックは2トン、4トン、10トンに分類することができ、車両に載せられる重さの名称が積載量と認識されがちですが、実際のところは少し違うのです。
具体的には以下で解説していますのでみていきましょう。
小型トラックの場合
小型トラックはトラックの中で最も小さい規格であり、
車両総重量は4~5トン以下、最大積載量が2~3トン以下であることから「2トントラック」「3トントラック」と呼ばれています。
小型トラックは以下の大きさのものをいいます。
車長 | 幅 | 車高 | 最大積載量 | 車両総重量 |
4.7m以内 | 1.7m以内 | 2.0m以内 | 3,000kg未満 | 5,000kg未満 |
小型トラックは重たいものをたくさん運ぶことはできません。
しかし、小回りがきき、狭い道路でも走行することができることから、食料品の配送や宅配便などに用いられるのが一般的です。
おもに小型トラックは近距離配送に用いられます。
中型トラックの場合
中型トラックは小型トラックと大型トラックの中間に位置する規格であり、
車両総重量は5~11トン未満で、最大積載量が約4トン(3.6~6.5トン)であるため「4トントラック」と呼ばれています。
中型トラックは次の大きさのものをいいます。
車長 | 幅 | 車高 | 最大積載量 | 車両総重量 |
12m以内 | 2.5m以内 | 3.8m以内 | 6,500㎏未満 | 11,000kg未満 |
中型トラックはスーパーの商品など、荷物が多い場合に使用され、
小型トラックより多くの荷物を積むことができるため、中距離・長距離の運送に用いられます。
大きさによっては狭い道での走行も可能ですので、大型トラックよりも機敏性に優れるのが特徴です。
ただ実際は4トンの荷物が積めるわけではなく、クレーンなどの架装がある場合は最大積載量が少なくなりますので注意が必要です。
大型トラックの場合
大型トラックはトラックの中で最大のもので、車両総重量は20~25トン以下と定められています。
大型トラックは以下の大きさのものをいいます。
車長 | 幅 | 車高 | 最大積載量 | 車両総重量 |
12m以内 | 2.5m以内 | 3.8m以内 | 6,500kg未満 | 11,000kg未満 |
大型トラックは大きい荷台を有しているため、
最遠軸距(トラックの最前の車軸中心から最後部の車軸中心までの水平距離・ホイールベースともいう)が車両総重量に関わってくるのです。
最遠軸距 | 車両総重量 |
5.5m未満 | 20t |
5.5~7m | 全長9m未満で20t、全長9m以上で22t |
7m以上 | 全長9m未満で20t/全長9m以上11m未満で22t/全長11m以上で25t |
上記のように条件によって最大積載量が異なりますが、大型トラックの最大積載量の目安は6.5トンです。
大型トラックは一度に大量の荷物を積むことができるため、
宅配便のセンター間の輸送や大きくて大量の荷物を運ぶのに適しています。
大型トラックはおもに長距離の配送が多いことから、
運転席の近くに運転手が寝るところが設置されているのです。
大型トラックは一般道では幹線道路のような道幅の広いところしか走行することができないため、
事前に通るルートを確認したり、トンネルや橋桁の高さを調べた上で運行させる必要があります。
トラックの過積載のペナルティ
トラックの積載量を超えた過積載状態での運転には、以下のペナルティがあります
<運転者に対するペナルティ>
超過割合 | 大型車 | 普通車 | ||
5割未満 | 2点 | 3万円 | 1点 | 2万5千円 |
5割以上10割未満 | 3点 | 4万円 | 2点 | 3万円 |
10割以上 | 6点 | ※罰則適用 | 3点 | 3万5千円 |
<運送会社への行政処分>
① | 過積載運行を事業者が命じまたは容認していた場合には7日間の事業停止が加算される。 |
② | 過積載運行等の悪質な違反に対しては、重大事故を引き起こした場合と同様に処分日車数が加重される。 |
③ | 過積載違反に係る3回目の車両停止処分を行なう際は、輸送の安全確保命令を併せて発動する。 |
④ | 過積載違反に係る4回目の車両停止処分を行う際は、輸送の安全確保命令(2回目)に加えて特別監査を行うこととする。処分日車数は過積載違反に係る日車数(40日車・80日車・120日車)のほか、輸送の安全確保命令(1回目)違反に係わる日車数および特別監査によって判明した違反事項に係わる日車数を加えたものになる。 |
⑤ | 輸送の安全確保命令を受けた日から、3年以内に同じ命令を受け、かつ、当該命令に従わなかった場合、許可取り消しとなる。 |
自家用トラック(白ナンバーのトラック)を使用して、有償で他人の荷物を運ぶことは道路運送法及び貨物自動車運送事業法により禁止されています。
これに違反すると違反者が罰則を受けることはもちろんのこと、荷主側もその罰則に問われることがあるのです。
適法な形で運送業務を行わなければならないのは言うまでもありません。
トラック過積載でのトラブル例
過積載の状態でトラックを走行させるとさまざまな危険が伴います。
過積載の状態で走行し、いざトラックを停止させる際に、思った以上にブレーキが効かないと感じるときがあります。
これは過積載によって制動距離が延びてしまっているのです。
また下り坂でのフェード現象、トラックの車体や荷物のバランス崩れ、
トレーラーではジャックナイフ現象が起きるなど、大変危険な状態になります。
このような危険な状態で過積載トラックを走行させたことで、
死傷者を伴う重大事故を発生させ、損害賠償請求などの多大な負担を被るだけでなく、社会的信用を失うのは必至でしょう。
その他、トラック過積載は、トラックの車体そのものの寿命を縮めます。
重い荷物を積むほどタイヤに負荷がかかり、タイヤの溝の減りが激しくなることから、早い段階でタイヤを交換しなければなりません。
また重い荷物を積むことでトラックを発進させる際にエンジンの回転率をいつも以上に上げなければならず、燃費の低下につながります。
燃費が低下すると給油する回数が増えることから、運送会社の経営負担も大きくなるのです。
過積載での走行はトラックの消耗品の寿命を大きく縮めてしまうこととなり、
日頃の消耗品の交換に費用がかさんだり、車検の際にも費用が高額になる可能性があります。
修理や部品交換でトラックを整備工場に預けている期間が長くなるほど、
荷物の配送が遅延していくことから、会社の経営にも大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
トラックで過積載走行すると、これらのトラブルが生じるのです。
安全な運送を行なうためにも、過積載がないかを常に意識する必要があります。
トラックの最大積載量の計算方法について
トラックの荷台に載せることができる重さの上限が「最大積載量」。
最大積載量は、
車両総重量−車両重量−全乗員重量(定員×55kg)
で計算することができます。
自身が運転するトラックの最大積載量を把握し、前述のように過積載にならないように注意しましょう。
トラックは積載量だけじゃない!サイズによる制限もある!
これまでにトラックの積載量についてみてきましたが、積載物については積載量だけでなく大きさにも制限があります。
荷台からはみ出して荷物を載せることも可能ですが、はみ出してもいい長さが決められているのです。
荷物の長さは車体の1.1倍までというきまりがあるだけでなく、積み方にもきまりがあり、
車体の前後から、車体の10分の1の長さを超えてはみ出してはいけません。
荷物の大きさは車幅からはみ出してはいけないのが原則ですが、
制限外積載許可を受けると、車体の幅+1m(全体で3.5m以内)まではみ出すことが認められます。
制限外積載許可は、出発する地域を管轄している警察署で取ることが可能で、
トラックの全長が12m未満の場合や、複数回往復しない場合は交番・駐在所でも許可を取ることが可能です。
制限外積載許可の規定については、以下を参照してください。
長さ |
車体の長さの1.5倍の長さまで ※ただし前後とも長さの1.3倍以上を超えてはならない |
幅 |
車体の幅+1m(全体で3.5m以内)まで ※積載物が左右ともに0.5m以上をはみ出してはならない |
高さ | 4.3mまで |
道路交通法で定められているトラックの高さは原則3.8m。
2004年からは高さ指定道路に限り4.1mまで規制が緩和されており、
制限外積載許可が下りれば4.3mまでの荷物を積むことが可能です。
積載の制限は以下のようになります。
長さ |
幅 | |
大きさ |
自動車の長さにその長さの10分の2の長さを 加えたもの |
自動車の幅にその幅の10分の2の幅を加えたもの |
積み方 |
自動車の車体の前後から自動車の長さの 10分の1の長さを超えてはみ出さないこと |
自動車の車体の左右から自動車の幅の10分の1の 幅を超えてはみ出さないこと |
こちらでトラックの寸法の詳細がわかりますので、合わせて参考にしてください。
上記のきまりを守りながら荷物を運ばなければなりませんが、
きまりを守りながら荷物を運ぶためにはトラック用品を使うといいでしょう。
きめられた範囲内で最大限に荷物を積むためには、天井がない平ボディトラックがもってこいです。
天井がないと荷物が雨風にさらされてしまいますが、
トラックシートやブルーシートを使用し、荷締めベルト・ゴム・チェーンなどを用いて固定すると、荷物を守ることができます。
荷物にトラックシートやブルーシートをかぶせるのは手間がかかりますが、
天井があるアルミトラックと比較すると、平ボディトラックはたくさんの荷物を積むことが可能です。
その他、トラックウマを用いると、荷物をより固定して運ぶことが可能できますので採用を検討してみてください。
このようにトラック用品は非常に便利ですが、トラック用品も積載量に含まれますので、積み荷にプラスして重さを計算するようにしてください。
まとめ
トラックの積載量について理解が深まりましたでしょうか。
記事をお読みいただくことで、なぜ法律で積載量について定められているのか、違反するとペナルティがあるのかがお分かりいただけたと思います。
適正な積載量を守ることで安全に荷物を運ぶことができます。
安全性はもちろんのこと、積載量を守ることはトラックを守ったり、会社経営に悪影響を及ぼさないことにもつながるのです。
積載量を守り、大切なお客様の荷物を届けていただければと思います。