トラックの荷待ちの問題って?記録が義務化された理由とは?荷待ち解決の対応策についても紹介!

「トラック運転手は労働時間が長い」と耳にしたことはないでしょうか。

 

トラック運転手の長時間労働は長期に渡り問題視されていますが、

 

長時間労働の背景として挙げられるのが「荷待ち」です。

 

荷待ちはトラック運転手に大きな負担を与えている要因の1つとなっています。

 

本記事では、トラックの荷待ち問題や荷待ちの解決対応策について詳しくご紹介します。

 

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トラックの荷待ちってなに??

荷待ち

 

トラックの「荷待ち」とは、

 

荷積み・荷下ろしのために荷主や物流センターなどの都合で生じる待機時間のことをいいます。

 

規模の大きい物流センターでは、他の運送会社のトラックも荷積み・荷下ろしをしますが、

 

作業するスペースが限られていることから荷待ち時間が発生するのです。

 

また荷主が対応できる時間が限られている場合、

 

トラック運転手は指定された時間に間に合うように到着することはもちろんですが、

 

到着時間に合わせて到着すると、すでに他の運送会社のトラックが待機している場合があります。

 

なるべく早く荷積み・荷下ろしをするためには早めに荷主や物流センターに到着しておく必要がありますが、

 

対応してもらえる時間は決められていますので、必然と荷待ち時間が生じてしまうのです。

 

実際に国土交通省の『荷待ち時間の記録義務付けについて』をみると、

 

約6割で1時間以上の待ち時間が発生しており、3時間以上の待ち時間についても約1割を占めています。

 

荷待ち時間はトラック運転手が効率の良い仕事を心がけたとしても、

 

荷主・物流センターの都合で発生することから、トラック運転手はどうすることもできません。

 

運送会社は荷主は顧客であることから

 

「自社のトラック運転手が、荷待ち時間が長くて困っています」と伝えて改善を要求するのは難しいでしょう。

 

このように荷待ちは、トラック運転手や運送会社が何とかできるものではなく、

 

なかなか改善がなされてきていないのが現状です。

 

 

トラックの荷待ちで発生する問題とは?

トラック 荷待ち 問題

 

トラックの荷待ちではさまざまな問題が発生しますが、

 

具体的にどのような問題が発生しているのかみていきましょう。

 

 

荷待ち時間が「休憩時間」となっている

荷待ち時間は、自分が荷積み・荷下ろしする番になれば、

 

いつでも作業できる状況でなければなりません。

 

休憩時間中であれば、自分が荷積み・荷下ろしする番が回ってきたとしても

 

すぐに作業できる状況である必要はないのです。

 

ただいつでも作業できる状況でなければならない、

 

つまり荷待ちの時間はトラック運転手が自由に過ごすことができないことから、

 

使用者の指揮監督命令下にあり、労働時間と考えることができます。

 

ただ実際は、トラックが走行している状態ではなく、

 

トラック運転手は車内でいわば「休憩」している状況であることから、

 

荷待ち時間を休憩時間として扱われることが多く、

 

時間外手当(残業代)を支払っていない運送会社が少なくありません。

 

このように荷待ち時間は違法なサービス残業を生み出す要因となっているのです。

 

自分の荷積み・荷下ろし開始時間が決まっている場合は、

 

その時間より前は自由に過ごせますので休憩時間として扱われます。

 

本来は、荷待ち時間のように自由に過ごすことができない時間の場合は労働時間であることを知っておいてください。

 

 

トラック運転手が過酷労働となる

トラック運転手は荷待ち時間を迎える前に、長時間トラックを運転しています。

 

トラックは車体が大きいため運転に神経を使うだけでなく、

 

精神的・体力的にも大きな負担がかかる重労働です。

 

それに加えて、いつでも荷積み・荷下ろしできる状況でなければならないために、

 

慢性的な疲労がどんどん蓄積されていきます。

 

睡眠不足や疲労による居眠り運転や、精神的・体力的負担から病気を発症したりする可能性もあることから、

 

一刻も早く荷待ち時間を解消した働き方の改善が必要なのです。

 

また長時間労働が慢性化している場合は、時間外手当(残業代)が発生している可能性がありますが、

 

適性な残業代を受け取れていないかもしれません。

 

このように荷待ち時間は、トラック運転手が過酷な状況に陥っていることがご理解いただけるでしょう。

 

 

荷待ち時間の記録が義務化された!

荷待ち時間 短縮 記録

 

荷待ち時間が問題視された背景には、前述のように違法な長時間労働があげられます。

 

これを改善するために国土交通省は2017(平成29)年5月31日に公布、

 

同年7月1日に「貨物自動車運送事業輸送安全規則の一部を改正する省令」を施行し、

 

乗務記録の作成を運送会社に義務付けました。

 

トラック運転手が「車両総重量8t以上、または最大積載量5t以上のトラックに乗務した場合」に、

 

荷主都合で30分以上待機したときに乗務記録に記載するように義務付けられています。

 

ここでは乗務記録の内容について「貨物自動車運送事業輸送安全規則」も合わせてみていきましょう。

 

 

乗務等の記録(貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条)

貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条に関係する規則は以下の通りです。

 

荷主指定の到着時刻

荷主が指定した時間を記録

集貨地点等への到着時刻

集貨地点等へ実際に到着した時間を記録

荷待ちの時間

荷待ち時間が何時何分から何時何分までかを記録

附帯業務時間

荷造り、仕分けなどの作業時間を記録

荷積み・荷下ろしの時間

荷積み・荷下ろしの時間を記録

集貨地点等の出発時刻

全作業が終了して集貨地点等を出発した時刻を記録

 

 

適正取引の確保(貨物自動車事業輸送安全規則第9条)

上記でご紹介した項目の中で「荷待ちの時間」について触れました。

 

荷待ち時間を記録した際に、

 

荷待ち時間の合計が30分以上となった場合は運送会社に乗務記録を提出しなければなりません。

 

運送会社によってはデジタルタコグラフ(デジタコ)などで記録されている場合は、

 

運送会社側で時間管理が可能ですので、乗務記録を提出する必要はないのです。

 

このように乗務記録をつけることで、違法な長時間労働を減らすことができ、

 

トラック運転手の健康な生活を実現させることができます。

 

またこれまでに運送会社から荷主に対して、荷待ち時間が減らせるようにお願いしにくい状況でした。

 

現在では、日本政府が乗務記録の提出・保管を義務付けているわけですから、

 

荷主が過度な要求をしている場合は、日本政府から是正勧告を受けることになります。

 

これらの取り組みによって、トラック運転手の労働環境の改善が期待されているのです。

 

トラック運転手の労働基準法の改正については下記で詳しく紹介していますのでご覧ください。

 

トラック運転手の労働基準法ってどんな感じ?2024年問題で何が変わるのか?罰則例や体験談も紹介!

 

 

悪質な労働環境が義務化することなった理由

悪質な労働環境 義務化 理由

 

上記のように、日本政府は貨物自動車運送事業輸送安全規則を定めるなどして、

 

トラック運転手の労働環境の改善を図っていますが、実際は悪質な労働環境が継続されるケースが少なくありません。

 

中には裁判にまで発展した事例がありますので、ここでは裁判事例についてみていきましょう。

 

 

大阪茨木労働基準監督署~労働基準法第32条違反(2015年3月)~

日本人事総研は、トラック運転手に違法な長時間労働をさせたとして、

 

大阪・茨木労働基準監督署は、トラック運転手が勤務していた運送会社とその代表取締役を、

 

労働基準法第32条違反(労働時間の違反)容疑で、大阪地検に書類送検しました。

 

その結果、1カ月で最大120時間を超える残業をさせており、

 

さらには法定休日を与えていなかったことが分かったのです。

 

 

厚生労働省愛知労働局~労働基準法第32条違反(2017年9月)~

厚生労働省愛知労働局は、2017(平成29)年9月4日、

 

名古屋市の運送会社「大宝運輸」の社名を公表した上で、再度是正指導を行ないました。

 

大宝運輸は、複数の事業所で違法な長時間労働を行なっており、

 

一度は愛知労働局が是正指導を行ないましたが、改善がみられなかったため、社名が公表されたのです。

 

月80時間を超える違法な時間外・休日労働者がトラック運転手の約20%にあたる合計84名確認されました。

 

そのうち74名は月100時間を超える違法な長時間労働をさせており、

 

最長で197時間の長時間労働まで確認されたのです。

 

大宝運輸は他にも2事業所を抱えており、トラック運転手は合計約400名で、

 

そのうち約20%が違法残業していた実態も明るみになりました。

 

大宝運輸の社長は陳謝する一方で、違法残業が慢性化していた背景には深刻なトラック運転手不足があったとのこと。

 

社長は一部の取引先を減らすなどして対策をとったそうですが、仕事を減らしきれなったようです。

 

 

トラックの長時間の荷待ちを解決する対応策

荷待ち

 

上記のように、トラック運転手の長時間の荷待ちは、

 

結果的にトラック運転手の労働時間の増加につながり、トラック運転手の健康被害につながります。

 

健康被害だけでなく、過労死や過労自殺などの社会問題が生じる可能性も出てきてしまうのです。

 

トラックの荷待ち時間を解決できれば、このような社会問題を解決することができます。

 

ここでは、トラック運転手の長時間の荷待ちを解決する対応策についてみていきましょう。

 

 

バースの予約・受付・誘導システムの構築、導入

物流センターでは、特定の時間にたくさんのトラックが集中します。

 

トラックが集中すると、

 

荷下ろしをするスペースである「バース」がいっぱいになり、荷待ち時間が発生してしまうのです。

 

トラック運転手は物流センターに電話してバースの状況を確認することはできますが、

 

トラックを運転しながらの通話はできないため、簡単に電話での確認はできません。

 

また電話でバースの状況を確認して仮に空いていたとしても、

 

渋滞等により到着時間が遅れると到着時にはいっぱいになっている可能性があります。

 

この状況を解決するのが、バースの予約・受付のシステム化です。

 

バースの空き状況を確認し、予約しておくことで、物流センターに到着後にバースを利用することができます。

 

バースを予約するときに、到着時に行なう受付手続きに必要な情報を入力しておくことで、

 

物流センターに到着後、すぐに荷下ろし作業にかかることが可能です。

 

初めて訪れる物流センターの場合、どこにバースはあるかがわかりません。

 

とくに大型物流センターは面積が広いため、

 

荷下ろしするバースがどこにあるか探さなければならないのです。

 

バースを予約した際に、バースの場所が示されれば、

 

トラック運転手は誘導係を待つ必要がなくなりますし、物流センターも人件費削減につながります。

 

このようにバースを予約・受付・誘導するシステムを構築・導入することで、

 

トラック運転手の荷待ち時間は大幅に削減することができるのです。

 

 

物流センターの入退場の管理の自動化

物流センターには、全国各地から集まった商品が保管されていることから、

 

トラックの出入りを含めて、セキュリティを強化する必要があります。

 

ただセキュリティを強化するほど物流センターでのチェックに時間を要するため、

 

人がセキュリティチェックを行なうのではなく、自動化することでスムーズな入退場が実現可能です。

 

また入退場の自動化は、人の目では見落としてしまうミスを防ぐこともできます。

 

前述のバースの予約と同様に、入退場の管理の自動化を行なうことで、

 

物流センターの人件費削減や仕事の効率化が図れるのです。

 

 

トラックの到着に合わせたピッキング

基本的にピッキングは、トラックが物流センターに到着してから作業を始めますが、

 

それでは荷積み・荷下ろしの時間に加えてピッキング時間まで要するため、トラックの待機時間が非常に長くなります。

 

最近では倉庫の管理システムが進化しており、到着するトラックごとにピッキングする商品が分かりますので、

 

トラックの到着時間に合わせてピッキングを終了させるのです。

 

この取り組みにより、トラックの平均荷待ち時間が1時間程度削減できたという例もあります。

 

 

ハンディターミナルの導入

基本的に入出荷する商品の検品は、人が二重チェックで確認していましたが、時間も人件費もかなり要していました。

 

検品に長けている人が担当であるといいのですが、検品者によるミスが発覚すると、

 

トラックの待ち時間はどんどん長くなります。

 

その改善方法として導入されているのがハンディターミナルです。

 

バーコード等を読み込むハンディターミナルを導入することで、ミスなくスピーディな検品が可能になりました。

 

その結果、トラックの荷待ち時間は大きく削減できることが期待できます。

 

 

トラック運転手の荷待ちに関する体験談

トラック 荷待ち 体験談

 

上記でトラックの荷待ち時間やその改善方法についてご紹介しました。

 

ここでは実際にトラックの荷待ち時間を体験した人の体験談についてみていきましょう。

 

 

~ケース①~ Kさん/43歳/男性

ダイニングバーを経営していたKさんは、経営が軌道に乗らなかったため、トラック運転手に転職しました。

 

複数の物流センターを訪れるKさんですが、やはり物流センターでは待ち時間が発生しているそうです。

 

待ち時間はスマホやラジオで時間を潰していたときもあるようですが、

 

Kさんは無駄な荷待ち時間を活用してネットの仕事をしているとのこと。

 

ブログを書いて、将来的には収入につながればと思いながら、荷待ち時間を利用しています。

 

 

~ケース~② Sさん/48歳/男性

Sさんは運送会社の運行管理者で、実際にトラックを運転しているわけではありませんが、

 

トラックの荷待ち時間を改善を求めるために、腹を決めて荷主担当者に交渉した経験があります。

 

Sさんが荷主に話したときは理解を示してくれましたが、結局待ち時間が短縮すらされることはありませんでした。

 

荷主はトラックの到着時間を指定しておきながら、

 

その時間にトラックが到着しても荷下ろしができず、荷待ち時間が発生していることもしばしば。

 

顧客である荷主のほうが運送会社より立場が上である構図が崩れない限りは、荷待ち時間の改善は難しいと感じています。

 

 

まとめ

トラックの荷待ち時間について、理解が深まりましたでしょうか。

 

社会問題にもなっているトラック運転手の荷待ち時間は、

 

改善に向けてさまざまな取り組みが行なわれ始めていますが、完全に荷待ち時間がなくなっていません。

 

貨物自動車運送事業輸送安全規則の制定などで改善が図られていますが、

 

その他にも荷待ち時間が改善されるような規則の制定に期待したいものです。

 

本記事を参考に、トラックの荷待ち時間についてお知りいただき、

 

トラック運転手への転職を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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