運転で同じ姿勢を取り続け、荷物を運ぶ仕事をするドライバーは腰痛に悩まされることが多いでしょう。
仕事によって腰痛になった場合、労災認定を受けられる可能性があります。
そこで、この記事ではドライバーの悩みである腰痛の改善や予防方法、
労災認定について分かりやすく紹介します。
ドライバ―がなりやすい腰痛!原因は?
ドライバーで腰痛に悩む人は多いでしょう。
ドライバーが腰痛を引き起こす主な原因について紹介します。
長時間の運転によるもの
長時間の運転は腰痛を引き起こす原因になります。
同じ姿勢を長時間とり腰の筋肉を動かさないでいると、血流が悪くなり、筋肉に凝りができるからです。
また、運転による振動によって、腰の筋肉にずっと緊張がかかっている状態になることも原因です。
重い荷物を運ぶことによるもの
重い荷物を運ぶことも腰痛を引き起こす原因です。
重いものを持つことで腰に負担をかけるからです。
荷物が軽くても前かがみで持つことで、腰に負担をかけることもあります。
ドライバ―の腰痛を改善する方法
腰痛に悩まされながら仕事を続けることは辛いですよね。
ここでは、ドライバーにおすすめの腰痛を改善する方法について紹介します。
改善方法①ストレッチをする
長時間運転をしていると同じ姿勢を続けるため、筋肉が硬くなり腰痛の原因になります。
筋肉が硬くなるのは、筋肉の動きが減ってしまうからです。
そのため、筋肉を動かすことで腰痛を改善させることができます。
運転席でもできるストレッチについて紹介します。
①運転席を下げて膝を広げて座ります。
②体を前傾させ背中を伸ばします
③体を起こしたら肩を上げ下げしたり、頭を回したりして首や肩もほぐします
④上記の動作を3〜5回繰り返します。
筋肉を柔らかくするために、休憩の合間にストレッチを取り入れてみてください。
改善方法②水分をこまめに摂る
水分をこまめに取ることも腰痛を改善させるひとつです。
水分を摂ることで、腰痛の原因となる血行不良を改善できます。
ドライバーはトイレの回数を減らすために水分を控える人も少なくありません。
しかし、適度に水分を取らなければ、血液の流れが悪くなります。
水分を取ることを控えたいと考えるかもしれませんが、
腰痛を改善させるためにこまめに水分を取ることが大切です。
改善方法③ゆっくりお風呂に入る
ゆっくりお風呂に入ることも腰痛の改善につながります。
湯船にゆっくり浸かることで、血流を改善できます。
また、筋肉の硬さを和らげ、腰痛の改善に効果的です。
ただし、熱めのお湯は体に負担がかかるといわれているので、ぬるめのお湯でゆっくり浸かると良いでしょう。
おすすめする湯船に浸かる時間を紹介します。
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参考:厚生労働省「快眠と生活習慣」
湯船にゆっくり浸かり、体が適度に暖まると快眠にもつながります。
快眠は筋肉をしっかり休ませることにもなるため、ゆっくり湯船に浸かることをおすすめします。
ドライバ―の腰痛予防方法3選!
前章では腰痛の改善方法について紹介しました。
ドライバーは腰痛を引き起こすリスクが高い業務ですが、
予防することでリスクを抑えられます。
ここでは、ドライバーにおすすめしたい予防方法を3つ紹介します。
予防方法①適切な座り方をしましょう!
ドライバーが腰痛を予防するためには、腰に負担がかかりにくい姿勢で運転することが重要です。
座っているときの理想的な姿勢は座席に深く座って背もたれで体を支え、
背中を真っ直ぐに伸ばした姿勢です。
体がねじれていると腰痛の原因となるため、背中をまっすぐ伸ばすようにして座りましょう。
また、前傾姿勢にならないように座席の角度や位置を調整することも効果的です。
予防方法②重い荷物は持ち方の工夫をする!
重いものを持ち運ぶときには、腰に負担がかかりにくい持ち方をするようにしましょう。
膝を曲げずに重いものを持ち上げる動作は、腰に強い負担をかけてしまいます。
そのため、荷物を持ち上げるときには膝を曲げ、腰をしっかり降ろして荷物を持つようにします。
また、荷物はからだにできる限り近づけて持つようにしましょう。
そして、現場の状況に合わせて、
台車やリフトなどを使用して人力による荷物の持ち運びを減らすことが理想です。
予防方法③小休憩を取り入れる
小休憩をこまめにとるようにしましょう。
トラックの長時間運転は、車の振動により腰痛を引き起こしやすくなります。
できる限り長時間の運転にならないように車を停め、
車から降りてストレッチなどかんたんな運動を取り入れるようにしましょう。
軽い運動を取り入れることで、筋肉が固まることを予防できます。
ドライバ―の腰痛は労災になるの??
ドライバーとして働いていると、腰への負担が多い業務をすることが多いです。
「ドライバーに転職してから、腰痛になったけど労災と認められる?」と、
疑問に思っている人もいるでしょう。
そこで、ドライバーが業務によって腰痛になった場合の労災について詳しく解説します。
ドライバ―の腰痛は労災になる!
ドライバーの腰痛は業務によって起こるもののため、労災認定される可能性が高いです。
運転業務では同じ姿勢を保つ必要があり、荷物を運ぶ作業を避けられないからです。
例えば、長距離ドライバーは立ち上がることができず、座りっぱなしを強制されています。
また、運転業務に加え、荷台から荷物を降ろすなどの仕事もあります。
そのため、業務によって引き起こされた腰痛として、労災判定されやすいです。。
労災の判定基準
労災と認められる腰痛の基準は大きく分けて2つあります。
・災害性の原因による腰痛
・災害の原因性によらない原因の腰痛
ドライバーが腰痛になった場合、労災として判定されるかを判断するために、
判定基準は厚生労働省が定めています。
認定基準では腰痛を次の2つの種類に区分しています。
そして、それぞれ労災補償と認定するための要件を定めています。
さらに労災補償の対象となる腰痛は、医師により業務によって引き起こされた腰痛と判断され、
療養が必要であると診断されたものに限られます。
つまり、労災と認められるためには以下の2つの条件が必要です。
・判定基準を満たしている
・医師によって治療や休息が必要と判断されている
上記の条件を満たさなければ、認定を受けることは難しいです。
災害性ありと災害性なしの違い
厚生労働省では腰痛の原因を大きく2つに分けています。
「災害性あり」「災害性なし」の2つです。
それぞれの腰痛で、労災認定される要件が異なります。
下記で、災害性ありと災害性なしの要件についてそれぞれ紹介します。
災害性ありの場合
災害性がある腰痛とは、業務中に突発的な出来事によって生じた腰痛のことです。
災害性ありの腰痛が判定されるには、以下の2つの要件があります。
①腰部の負傷またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、
仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること
② 腰に作用した力が腰痛を発症させ、
または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること
つまり、業務中に突発的な出来事によって腰痛が引き起こされたという、
医師の診断が必要であるということです。
要件が満たされなければ労災判定は受けられません。
「ドライバー業務による災害性がある腰痛」の具体例ですが、
・運転席から降りようとして、足を滑らせ腰を痛めた
・積んでいた荷物が落ちてきたので避けたときに腰に痛みを感じるようになった
・腰をひねる動作をしたときに強い腰痛があった
上記のような原因で腰痛が引き起こされ、
さらに医療機関で業務による腰痛と認められると、労災と判定される可能性があるでしょう。
災害性なしの場合
災害性がない腰痛の認定要件は以下のように定められています。
突発的な出来事が原因でなく、
重量物を取り扱う仕事など腰に腰に過度の負担がかかる仕事に従事する労働者に発症した腰痛で、
作業の状態や作業期間などからみて、仕事が原因で発症したと認められるもの
つまり、業務が原因により徐々に腰に負担が溜まり、腰痛を引き起こされた腰痛が「災害性なしの腰痛」です。
「災害性なし」の腰痛も医師の診断は必要になります。
医師に診断される際には災害性のない腰痛には下記の2つの区分に分けられ判定されます。
・腰の筋肉などの疲労によるもの
・骨が変化したもの
それぞれ下記で解説します。
腰の筋肉などの疲労によるもの
腰の筋肉などに負担をかける業務を3ヶ月以上行い腰痛になった場合に、労災と判定されます。
例えば、以下のような状況です。
・油の入った一斗缶を1つずつ、配送先の倉庫に納品する作業が毎日ある
・大型のトレーラーで長時間の運転を行うが、高速道路にはないため休憩場所を確保しにくい
徐々に筋肉に疲労がたまる作業が「腰の筋肉などの疲労によるもの」にあてはまります。
骨が変化したもの
重い物を運ぶ業務に10年以上行い、骨が変化した腰痛であると労災と判定される可能性が高いです。
例えば、以下のような状況です。
・人力でピアノを移動する作業を半日以上行う
・トラックの荷台から、30㎏以上ある荷物の積み下ろしを何度も行う
1度の作業だけでは認められませんが、
労働時間の大半を重いものを運ぶ作業を続けていると判定される可能性が高いです。
ただし、加齢や先天性などによる骨の変形も考えられるため、腰痛と業務の事実関係が調べられます。
・就労の期間
・労働の時間
・荷物の重さ
・業務をしていた頻度
・業務をするための姿勢
・腰痛が骨の変化によるものという医学的な証明
業務の状況や医学的な証明などが調査され、腰痛が労災判定となるか検討されます。
補償を受けるためには医学的証明書が必要!
労災認定されるためには、業務上の出来事によって腰痛が引き起こされたという医学的な証明が必要です。
医学的な証明とは、医師によって証明されるもので腰痛に関する客観的な証明です。
つまり、医師の診断が必要となるため、腰痛になったときには医療機関を受診しなければいけません。
業務中に発生した腰痛が仕事によって引き起こされたと医師に証明してもらうことで、労災認定されます。
補償の範囲って?
腰痛が労災と判定されると労働保険制度に基づき、治療費などが補償されます。
治療費は会社が負担する保険料から支払われます。
正社員だけでなく、アルバイトや契約社員など、どのような雇用形態の人でも対象です。
労災認定で補償される範囲について紹介します。
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下記でそれぞれについて紹介します。
療養補償
医療機関を受診したときの医療費が支給されます。
全額支給されるため、労災認定を受けたドライバーの治療費の負担はありません。
治癒されるまで支給され、基本的に通院費も補償されます。
休業補償
業務ができずに休んだ場合、給与の約8割が支給されます。
仕事を休んだ4日目からが対象です。
週に1度の通院日のみの支給もあります。
介護補償
介護が必要となった場合に支給されます。
「介護が必要になった場合」とは、腰痛が原因で下半身に障害が残ったという状況などです。
介護に必要な費用が支給の対象です。
障害補償
障害が残った場合に年金か一時金が支給されます。
障害とは、腰痛は治癒しても腰痛によって引き起こされた足のしびれが残っている状態です。
障害の対象となるかは「障害等級表」で確認できます。
障害等級表は「労使保険:障害(補償)等給付の請求手続き」をご確認ください。
参考:厚生労働省「労災補償」
実際のドライバ―の腰痛体験談を紹介!
ドライバーとして働いていると、腰痛になる可能性が高い業務につかなければいけません。
現場で働くドライバーがどのような業務で腰痛に悩まされたか、体験談を紹介します。
~ケース①~ Mさん/男性/勤務歴20年
Mさんは荷台から荷物が落ちるのを防ごうと、荷物をキャッチしたときに腰に痛みを感じました。
次の日も腰痛がそのまま続いたため整形外科を受診すると、
医師から業務中の事故による腰痛だと診断され、労災判定を受けました。
~ケース②~ Bさん/男性/勤務歴15年
ドライバーを15年以上続けているBさんですが、
今は荷物を運ぶ作業をせず、配送だけをメインで行っています。
タンスやピアノ、冷蔵庫といった重たい荷物を運ぶことが業務でときどき腰に痛みを感じており、
ある日歩けないぐらいに強い痛みがありました。
病院にいったところ、腰のヘルニアを診断され労災判定を受けました。
~ケース③~ Fさん/女性/勤務歴10年
運送会社の倉庫内で勤務しているFさんですが、
倉庫内で荷物の仕分けを10年ほど続けており、腰痛が強くなったようです。
周りに男性が多く、10㎏〜15㎏ほど荷物を簡単に運んでいたので荷台などはなく、
Fさんも自力で行っていたそうです。
徐々に腰痛がひどくなり整形外科を受診すると、業務による腰痛と診断され、労災判定を受けました。
トラックドライバーは腰痛持ちの方がかなりいらっしゃいます。
やはり長距離運転する場合は長い間座って運転しているからなのかもしれません。
腰痛に関わらず、健康で元気に働くためには健康管理が大切です。
トラックドライバーの健康管理については下記の記事も参考にしてみてください。
健康管理はトラックドライバーにとって重要!適切な管理のポイントとは?
まとめ
ドライバーとして働いていると、腰痛のリスクはつきものです。
長時間の運転や荷物の積み下ろしなど、腰に負担がかかる作業が多くあります。
腰痛を予防・改善するためには、ストレッチや水分摂取などが大切です。
万が一腰痛がすぐに収まらない場合は、すぐに医療機関を受診することをおすすめします。
業務によって引き起こされた腰痛だと判定されれば、労災認定を受けられるかもしれません。
「腰痛になるのはしょうがない」と思わず、腰痛予防をできることから少しずつ取り入れてみましょう。