トラックドライバーやタクシードライバー、送迎ドライバーなど、世の中にはさまざまなドライバーの仕事があります。
ドライバーとして仕事がしたいと考えている人の中には、ドライバーの仕事に昇給システムがあるか気になることがあるかもしれません。
そこで今回はドライバーの業種ごとの昇給制度や給与システムについて紹介します。
他にも給与に関連する手当やボーナスについても解説するので、参考にしてください。
ドライバーに昇給はあるのか?
ドライバーとしてキャリアを積んでいくなら、昇給するのかどうか、
業種の違いによって昇給があるのかないのか、把握しておくことが大切です。
ここでは、ドライバーの業種ごとでの昇給の有無や仕組みについて紹介します。
トラックドライバーの場合
トラックドライバーの場合、所属する企業の規模や雇用形態によって昇給制度が採用されている場合があります。
常時10人以上の労働者が所属する企業では、「定期昇給に関する事項」を就業規則に記載することが義務付けられています。
そのため、就業規則に昇給についての記載があれば、勤続年数や人事評価による昇給が可能です。
一方、昇給制度が導入されていなければ、昇給するチャンスはありません。
なお、昇給制度が導入された企業の場合、一般的には年齢とともに昇給する傾向にあります。
ただし、業種や業績、運転するトラックの大きさなどにより昇給幅が異なる点には注意が必要です。
詳細については下記の記事も参考にしてみてください。
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タクシードライバーの場合
タクシードライバーは、所属する企業の給与体系によっては昇給する可能性があります。
一般的なタクシードライバーの給与体系は次のとおりです。
給与体系 | 昇給の有無 | 特徴 |
A型賃金 | 昇給あり | ・固定旧姓で一般的なサラリーマンと近い給与体系 ・売り上げや走行距離に関係なく、基本給や手当、ボーナスなどが決められている ・収入が安定しやすい ・大幅に昇給するケースが少なく、売り上げが賃金に反映されないため、高収入は難しい |
B型賃金 | 昇給なし | ・歩合制で、売上や走行距離に応じて賃金が変動する仕組み ・売り上げが良ければ高収入を目指せるが、逆に収入が著しく低くなる場合がある ・収入が安定しづらい ・ボーナスも支給されないケースが多い |
AB型賃金 | 昇給あり | ・A型とB型をミックスした給与体系 ・基本給に追加して売り上げに応じた歩合給やボーナスが支給される ・近年のタクシー業界で最も採用されている給与体系 ・収入が大きく変動することがなく、タクシードライバーを継続しやすい |
C型賃金 | 昇給なし | ・歩合給制で売り上げから管理費や燃料代などを差し引いた金額から給与が計算される仕組み ・地方のタクシー会社で採用されているケースが多い ・車両の持ち込みが必要な場合もある ・B型賃金よりも収入が変動しやすい |
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送迎ドライバーの場合
送迎ドライバーとは、タクシーと同じように人を乗せて指定の場所まで送迎するドライバーです。
デイサービスやデイケアなど、高齢者が通所する介護施設に所属して利用者を送迎したり、
企業の役員を自宅や会社などに送迎したりする仕事があります。
送迎する人や所属する企業によって、運転する車両は異なります。
送迎ドライバーの給与体系は、時給制もしくは月給制が採用されている場合がほとんどです。
時給制では、昇給可能な場合と昇給しない場合があります。
求人情報に記載されているため、昇給の有無を確認しやすいでしょう。
ただし、長時間勤務できる仕事ではないため、昇給できたとしてもしっかり稼ぐことは難しいかもしれません。
月給制の場合は昇給できるケースが多く、特に企業の役員を送迎するドライバー職では、勤続年数や評価によって大きく昇給する可能性があります。
個人事業主の場合
個人事業主としてトラックドライバーや配送ドライバーをしている場合、収入を増やせる可能性があります。
勤務に対する態度やクライアントからの評判など、仕事の請負元と良好な関係を築けた場合、
運搬する荷物の単価がアップしたり、新しい仕事を任せてもらったりして、給与が増えることがあるためです。
他にも、新しく請負元を探して仕事量が増加した場合に収入アップを期待できるでしょう。
ただし、これらは売上を上げるための手段であるため、昇給とは呼べないかもしれません。
また、収入を増やすためには、営業力やコミュニケーションスキルが必要になります。
普段から真摯に仕事に取り組み、人とのつながりを大切にして信頼してもらえるよう努力を継続しましょう。
ドライバーの給与システムについて紹介!
ドライバーは所属する企業の規模や給与体系、就業規則などによって昇給する可能性があります。
次に、ドライバーの給与システムについて深掘りします。
トラックドライバーと送迎ドライバーを例に、どのような給与システムなのか見ていきましょう。
トラックドライバーの場合
トラックドライバーの給与体系の代表的なモデルは、次のとおりです。
・基本給制(固定給制)
・歩合制
・基本給制+歩合給制
それぞれどのような仕組みなのか詳しく解説します。
基本給制
トラックドライバーの給与体系の1つが基本給制です。
賃金が月給制(日給月給)または日給制、時給制のいずれによって決められており、
走行距離や売上に対する歩合の支払いがない給与体系となります。
基本給制の場合、企業に所属している段階で給与金額が決まっているため、安定した給与を手にできるのが特徴です。
また勤続年数や評価によって昇給できる可能性があるのがメリットとなります。
ただし、昇給幅は所属する企業によって異なるほか、業務内容が決まっているケースが多いため、高収入を目指すのは難しいでしょう。
基本給制はトラックドライバーの中でも地場での輸送や作業輸送など、1日で業務が完結するタイプの仕事で採用されているケースが多いといえます。
また、非正規雇用のドライバーや宅配系のドライバーは時給制が採用されるケースが多いです。
歩合制(出来高制)
歩合制(出来高制)とは、基本給(固定給)が支給されず、売上や走行距離に応じて給与が支払われる給与体系です。
運送収入に歩率を掛け合わせた金額、または運送収入から燃料代など一定の費用を差し引いた金額に歩率を掛け合わせた金額が歩合給として支給されます。
また、完全歩合給の場合、保障給が設定されています。
完全歩合制でのドライバー業務を提供する企業は、ドライバーの労働時間に応じた保障給を支払うことが義務付けられているためです。
完全歩合制は頑張った分だけ給与に反映されるため、高収入を狙えるのがメリットです。
一方、売上が芳しくない場合や、病気やケガなどで仕事に出られない場合、給与が低くなるなど、安定性に欠けるデメリットがあります。
勤務時間が長い長距離ドライバーの仕事では歩合給制が採用されているケースが多くなっています。
これは固定給制にした場合、長時間労働による割増賃金が多くなってしまうためです。
基本給制+歩合給制
基本給制と歩合制をミックスした給与体系もあります。
月額など一定期間で支払われる固定給に、運送収入の歩率を掛け合わせた金額を追加した金額が支払われます。
短距離ドライバーや中距離ドライバーの給与体系として採用されやすいほか、
定期配送などのように便数が多い運送会社でも、基本給+歩合給であることが多いでしょう。
基本給制と歩合制のそれぞれいいところが組み合わされているため、収入が安定しやすく、
頑張りに応じたインセンティブの発生により、賃金面でのやりがいは感じられやすいのが特徴です。
ただし、企業によっては基本給が低く抑えられ、歩合給が占める割合が多いケースも少なくありません。
特に、運送距離が長くなりやすいドライバーの仕事で多く見られます。
なお、基本給制+歩合給制の給与体系の場合でも、固定給が給与全体の約6割を下回る場合、保障給が設定されます。
手当について
トラックドライバーの仕事では、給与以外に各種手当が支給されるケースが多いといえます。
手当にはさまざまな種類がありますが、主な手当は次のとおりです。
手当の種類 | 特徴 |
役職手当 | ・管理職などの役職が付いた際に支給される手当 ・法的に定められたものではなく、企業が支給額を自由に設定可能 |
無事故手当 | ・一定期間において無事故だった場合に支給される手当 ・車両で事故以外にも、運搬する荷物の破損事故も手当支給の対象 ・月額15,000円から50,000円程度の無事故手当の目安 |
住宅手当 | ・従業員の家賃や住宅ローンの補助として支給される手当 ・法的義務はなく、支給するかどうかや支給金額は企業側が自由に設定可能 |
家族手当 | ・扶養手当とも呼ばれる ・配偶者や子どもがいる従業員に対して、企業が支給する手当 ・企業が自由に金額を設定 |
時間外手当 | ・定められた労働時間を超えて労働した場合に支払われる手当 ・労働基準法によって労働時間が1日8時間もしくは1週間に40時間以上になる場合 通常の賃金を25%増した賃金を支払うことが定められている |
深夜手当 | ・22時から翌日5時までの間に労働したドライバーに対して支給される手当 ・通常賃金を25%増した賃金を支払うことが定められている |
その他 | 宿泊手当:業務遂行の宿泊が伴う場合に支給される手当 高速手当:業務遂行に高速道路を使用する場合に支給される手当 |
ボーナスは?
トラックドライバーは給与体系によってボーナスが支給される場合があります。
先述した基本給制(固定給制)もしくは基本給+歩合給といった給与体系を採用する企業では、
定期的にボーナスが支給される可能性が高い傾向にあります。
ただし、企業の業績によってはボーナスが支給されないこともあるため注意しましょう。
また、完全歩合給制の場合は、ボーナスが支給されないケースが多いといえます。
企業によって対応が異なるため、求人情報をよく確認することをおすすめします。
年収例を紹介!
厚生労働省が発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」によれば、運輸業・郵便業の年間の給与額とボーナスなどの平均金額は次のとおりです。
・平均給与:342万4,800円
・ボーナス:56万3,500円(年間賞与その他特別給与額)
※平均給与は所定内給与額の12ヶ月分として計算
また、厚生労働省が運営するポータルサイト「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」によれば、
令和3年時点でのトラックドライバーの年間所得額は次のようになっています。
・全産業平均:489万円
・大型トラックドライバー:463万円
・中小型トラックドライバー:431万円
なお、これらは平均値であり、所属する企業やドライバーとしての経験・スキルなどによって給与額やボーナス支給額は変動します。
参考:厚生労働省|令和4年賃金構造基本統計調査 学歴、年齢階級、勤続年数階級別所定内給与額及び
参考:厚生労働省|自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト
送迎ドライバーの場合
送迎ドライバーの給与体系は以下のとおりです。
・基本給制(月給制、日給制、時給制)
・歩合制
基本給制
送迎ドライバーでは、基本給制(固定給制)が採用されているケースが多い傾向にあります。
介護施設や送迎会社に正社員として勤務する場合は
月給制や日給制、パートやアルバイト、派遣社員として勤務する場合は時給制となる場合が多いでしょう。
なお、基本給制の場合は、評価によって昇給する可能性があります。
歩合制(出来高制)
送迎ドライバーの仕事の一部では、歩合給制が採用されているケースもあります。
基本給にプラスして、走行距離などに応じたインセンティブが追加で支給されるものです。
所属する企業によって異なりますが、歩合給制を採用した送迎ドライバーの仕事はそれほど多くありません。
手当について
送迎ドライバーの仕事でも一定の手当が支給されるケースがあります。
ただし、トラックドライバーと比較した場合、支給金額は少なくなりやすいでしょう。
また、雇用形態によっては支給される手当の種類や金額が異なるため、こちらも事前に確認した方がいいでしょう。
ボーナスは?
基本給制のうち、月給制や日給制で働く場合は、ボーナスが支給されるケースがあります。
ただし、パートやアルバイト、派遣社員として送迎ドライバーの仕事をする場合、ボーナスが支給される可能性は低いといえます。
年収例について
送迎ドライバーにはさまざまな業種があるため、総合的にまとめた公式データは存在しません。
運転ドットコムが調査した役員送迎ドライバーの平均年収は400万円前後、
平均月収は25~30万円程度です。なお、休日や業務終了後の送迎が発生した場合、勤務時間に応じて時間外手当が支給されます。
ドライバーの昇給に関するQ&A
最後にドライバーの昇給に関する質問に回答します。
Q.1 毎年昇給はしますか?
A.毎年支給するかは所属する企業や業績によって異なります。就業規則や雇用契約書の内容を確認しましょう。
Q.2 昇給の金額は企業によって違うのでしょうか?
A.昇給金額は所属企業によって異なります。
また、業績や個人の貢献度、スキル、経験年数など、さまざまな要因が影響するため、明確な金額を事前に把握するのは難しいでしょう。
まとめ
ドライバーは所属する企業や給与体系などによって昇給する可能性があります。
日々業務に真摯に取り組み、企業に貢献できれば、より良い給与条件で働けるでしょう。
また、歩合制の仕事に就けば、頑張った分だけ高い給与を受け取れる可能性があります。
ドライバーの仕事を探す場合は、昇給することがあるのか、どのような給与体系なのか、必ず確認しましょう。