これから運送業を始める方は「運送業に許可は必要なのか」と思うことでしょう。
運送業は許可が必要な場合と、許可が不要な場合があります。
本記事では、運送業許可の取得条件や費用、期間などを解説していきます。
運送業許可について
運送業許可とは、他から貨物を運ぶ依頼を受け、事業用トラックを用い、
依頼者から代金をもらって貨物を運ぶための許可のことです。
運送業許可を取得していない状態で、依頼者から代金を受け取り、貨物を運んではいけません。
運送業許可は法人で取得することもできれば、個人事業主として許可を得ることもできます。
個人事業主として運送業許可を取得する場合の条件
個人事業主で運送業許可を取得するためには、以下の6つを満たしていることが必要です。
・貨物自動車運送事業法など、法律で定められた条件をクリアしていること
・開業後の6カ月間の人件費、12カ月間の事務所・駐車場賃料、自動車税・保険料が確保
できていること
・事務所、休憩室、駐車場が確保できていること
・運転手5名、運転手5名、運行管理者1名、整備管理者1名が確保できていること
・事業用トラックが5台以上確保できていること
・運輸局で行なわれる法令試験に合格していること
個人事業主は、条件に自分は合っているのかを確認した上で取得するようにしましょう。
運送業許可の種類
運送業許可の種類には、以下の3つがあります。
運送業許可の種類 |
内容 |
一般貨物自動車運送事業 |
荷主からの貨物を有償で運送 |
特定貨物自動車運送事業 |
特定の1つの荷主の貨物を有償で運送 |
貨物軽自動車運送事業 |
軽自動車・125cc以上の自動二輪で貨物を有償で運送 |
一般貨物自動車運送事業は、事業用自動車を使用して荷主からの貨物を有償で運送する事業です。
それに対して特定貨物自動車運送事業は、
事業用自動車を使用して1つの特定の荷主の貨物を有償で運送する事業のことをいいます。
貨物軽自動車運送事業は、事業用自動車が軽自動車に限定されるか、
排気量が125cc以上の自動二輪車を使用して、荷主からの貨物を有償で運送する事業をさします。
前述の一般貨物自動車運送事業では、軽自動車が使用できない点に気をつけなければなりません。
運送業許可が必要な場合と不要な場合
これまでに運送業許可についてご紹介してきましたが、
実際に運送業を始める際に、運送業許可が必要な場合と不要な場合があります。
どのような場合に必要、不要なのかについてみていきましょう。
運送業許可が必要な場合
荷主から荷物の運送の依頼を受け、有償で運送する場合は運送業許可が必要です。
荷物を運ぶ以外では、事業用自動車を使用して荷物を運ぶ引越業でも、
郵送で運送ですることになりますのえ運送業許可が必要となります。
運送業許可が不要な場合
運送業許可が不要な場合は、主に以下の4つがあげられます、
では詳細をみていきましょう。
自分(自社)の荷物を運ぶ
自分(自社)の荷物を運ぶ場合は他からお金をもらうことはありませんので、運送業許可は必要ありません。
有償でない限り、「運送業」にあてはまらないためです。
気をつけてほしい点は、自社のグループ会社の商品を有償で運ぶ場合は、運送業許可が必要となります。
グループ会社であっても、
運送においてお金のやりとりがある場合は運送業許可が必要であることを知っておきましょう。
軽自動車で荷物を運ぶ
他からお金をもらう場合であっても、
荷物を運ぶ際に軽自動車を使用するときは運送業にあたらないとされていることから、
運送業許可は不要です。
軽自動車を使用して運送を行なう場合、貨物自動車登録が必要となります。
自動二輪車で荷物を運ぶ
自動二輪車で貨物軽自動車運送事業に該当するのは、排気量が125cc以上のバイクのみです。
排気量125cc以下の自動二輪車を使用し、
有償で荷物を運送しても規制がないことから運送業許可は必要ありません。
無償で荷物を運ぶ
貨物を運送する際に、お金のやりとりが発生していない場合は運送業にあたらないことから、
運送業許可は不要です。
運送業許可の申請に必要なものや流れについて
では次に、運送業許可の申請に必要なものや流れについてご紹介します。
運送業許可の申請に必要なもの
運送業許可申請に必要なものは以下の通りです。
・会社の登記簿謄本
・会社定款写し
・残高証明書
・決算書写し
・役員全員の履歴書
・運送に使用する自動車の車検証写し
・営業所、車庫の平面図・配置図
・営業所、借庫に車庫に関する土地建物の登記簿謄本または賃貸借契約書の写し
・車庫前面道路の幅員証明書(前面道路が国道の場合は不要)
・運行管理者の履歴書・合格証写し
・整備管理hの履歴書・資格者手帳写し
・貨物自動車利用運送を行なう際の契約書
・営業所、休憩、睡眠室、車両の写真
・社会保険に加入している証明書類
・運転手の免許証写し
上記を準備してから運送業の許可申請に臨みましょう。
運送業許可の流れ
運送業許可の流れについては、以下を参考にしてください。
1 |
運輸支局・運輸局での書類審査 |
審査期間は約4~5カ月 |
2 |
法令試験受験・ヒアリング |
運送業に関する法令が出題される 正誤選択・語群選択方式の試験 |
3 |
2度目の残高証明書提出 |
申請受付から約2か月後に提出 |
4 |
社会保険・労働保険加入 36協定締結 |
従業員は雇用保険にも加入させる 法定労働時間を超える時間外労働・休日出勤を させる場合、労働基準監督署への届出が義務 |
5 |
運送業許可取得通知 |
法令試験合合格し、運輸局の審査が終了すると通知が入る |
6 |
運送業許可証交付式 登録免許税納付書類取得 |
管轄の運輸支局で行なわれる 運送事業者としての説明を聞く |
7 |
登録免許税納付 |
12万円を金融機関に納付する |
8 |
運行管理者・整備管理者 選任届提出 |
運輸局保安課に提出 |
9 |
運輸開始前届提出 |
運輸局に提出 |
10 |
事業用自動車等連絡書取得 |
自家用車で「車庫証明」にあたるもの |
11 |
緑ナンバー取得 |
ナンバー取得後、自動車任意保険へ加入する |
上記の流れ運送業許可を取得します。
取得までの期間や費用は、次でご紹介します。
運送業許可を取得するまでの期間や費用について
運送業許可を取得するまでの期間や費用はどれくらい費用なのかをみていきましょう。
運送業許可を取得するまでの期間
運送業許可を取得するまでの期間は、約6カ月~1年が一般的です。
運輸局は、運送業許可の審査には約4~5カ月間もかかると発表しています。
早く準備をして、スムーズに手続きが進んだとしても、上記の時間が必要です。
運送業許可を取得するまでの費用
運送業許可を取得するためには、以下の費用を準備しなければなりません。
人件費 |
従業員の人数×6カ月分 役員報酬×6カ月分 社会保険等の金額×6カ月分 |
車両費 |
車両購入費用全額 リース・分割の場合は月々支払金額×12カ月分 |
車両関係の税金 |
自動車税・自動車取得税・自動車重量税×12カ月分 自賠責保険・任意保険の月々支払金額×12カ月分 |
車両関係費用 |
車両台数分の外注修繕費×6カ月分 タイヤ等の消費本数1本単価×6カ月分 月々総燃料1Lあたり価格×6カ月分 オイル代金×6カ月分×車両台数 |
営業所・駐車場 |
購入の場合は購入費用の全額 賃貸・分割払いの場合は月々支払金額×12カ月分 |
光熱費 |
光熱費×6カ月分 通信量等×6カ月分 |
その他 |
広告費用×6カ月分 必要設備にかかる費用の全額 |
具体的な金額は会社の規模にもよりますが、上記の費用は必要になります。
運送業許可取得のための条件
上記のように、運送業許可取得のためには、
資金、人、場所、車両、法令試験合格が条件となります。
運送業では、2024年4月1日より働き方改革関連法が施行されたことから、
許可取得後、企業として従業員を雇い運用していく場合は労働環境を整えることも重要です。
運送業の働き方改革については、運転ドットコムの下記の記事も参考になさってください。
運送業が問題視している「2024年問題」とは?運送業の働き方改革で何が変わるのか?対応策や事例も紹介
まとめ
本記事では、運送業許可の取得条件や費用、期間などを解説していきました。
運送業許可は個人事業主で取得することも可能です。
運送業許可を取得するためには、6カ月以上の期間と、多額の費用がかかることについても記載しましたので、熟読なさってください。
本記事を参考に、運送業許可の取得を考えてみてはいかがでしょうか。