高速道路のサービスエリアに停車しているトラック。
ナンバーを見ると遠方から到着しているトラックが多く見受けられます。
トラック車内では長距離ドライバーが休憩したり仮眠を取ったりしていますが、
長距離ドライバーは休日が少ない印象をおもちではないでしょうか。
これからトラック業界に入ろうと思っている方は、長距離ドライバーの休日が気になるところです。
本記事では、実際の長距離ドライバーの休日はどのようになっているのかを詳しく解説していきます。
長距離ドライバーの休日はどのくらいある?
長距離ドライバーは、運送会社に雇われている場合は一労働者であり、労働者は法律により休日が定められています。
まずは長距離ドライバーの休日はどのくらいあるのかみていきましょう。
法的に定められている法定休日
法定休日は、労働基準法第35条に基づいて使用者(運送会社)が労働者(長距離ドライバー)に与えなければならない休日のことをいいます。
労働基準法第35条の法定休日は、毎週少なくとも1回(週1回)、
4週間を通じて4日の頻度で休日を与えなければならないことを、使用者に義務付けているのです。
ここでは法定休日について詳しく解説します。
合わせて下記の記事も参考になりますので、ぜひご一読ください。
長距離ドライバーの労働時間は長い!? 働き方改革でどのように変わる?
長距離ドライバーの勤務時間とは?長時間労働になる原因も紹介!
労働規約や就業規則に定めがある場合
法定休日は、労働契約や就業規則により定めがある場合、その契約や規則に従うことになります。
例えば労働契約や就業規則に「休日は土曜日・日曜日とし、法定休日は日曜日とする」と記載がある場合は、日曜日が法定休日です。
労働規約や就業規則に定めがない場合
もし労働契約や就業規則に法定休日の定めがない場合、日曜日から土曜日を1週間とし、最後の曜日が法定休日となります。
つまり法定休日の定めがない場合は、土曜日が法定休日となるのです。
長距離ドライバーの実際の休日日数
長距離ドライバーの実際の休日日数は、運送会社により異なります。
客観的なデータとして厚生労働省の「就労条件総合調査」(平成30年)を参考にすると、
全産業における労働者1人平均年間休日総数は113.7日ですが、
長距離ドライバーの業種にあたる運輸業・郵便業では106.6日と、7日間少ないことがわかります。
2023年12月現在に最も近い厚生労働省の「就労条件総合調査」(令和4年)では、
全産業における労働者1人平均年間休日総数は115.3日と若干増加していますが、
令和4年の就労条件総合調査では運輸業・郵便業のデータがありません。
他のデータとして「トラック輸送状況の実態調査結果」(令和3年)では、7日間の調査期間のうち、
休日が1日もなかったトラック運転手の割合は全体平均で9.4%(小型トラック3.2%、中型トラック6.8%、大型トラック11.8%)です。
長距離ドライバーの多くは大型トラックのドライバーですので、
小型・中型・大型トラックの種別の中で、7日間の調査期間中に1日も休日がなかった割合が多くなっています。
長距離ドライバーの実際の休日日数は、運送会社によりますが、完全週休2日制を採っているところもあれば、
週に1日の休みが取れるかというところもあるのです。
小型トラックドライバーは基本的に近距離輸送が多く、車中泊をともなわず、
日帰りでの業務がほとんどであるのに対して、長距離ドライバーは車中泊をしながらの業務になるため、
土日の休みを含めて、週に1日の休みですら取得しにくいのが現実です。
長距離ドライバーの中でも食品輸送は、時期に関係なく頻繁に商品を輸送しなければならないことから、
ゴールデンウィーク、お盆、年末年始といった連休ですら休みを取るのが困難となります。
長距離ドライバーは休みが少ない上に、どのタイミングで休みが取れるのかが定まらない場合もあるのです。
実は特例もある?!長距離ドライバーの休日特例について
2024(令和6)年4月1日より、働き方改革関連法の見直しにより、トラック運転者の改善基準告示が改正されます。
長距離ドライバーの休日には特例が定められていますが、2024(令和6)年4月1日以降も特例の一部が変更されます。
ここでは2024年3月31日までの規定と、4月1日以降の規定についてみていきましょう。
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長距離ドライバーの休日には、2人乗務特例、隔日勤務特例、フェリー特例が定められており、
2024年4月1日以降は、分割休息特例と2人乗務特例について改善がみられるようになりました。
長距離ドライバーの身体的・精神的負担の緩和を図るために、日本政府がこのような改善を図っているのです。
休日に出勤した場合の給料は?
休日に出勤した場合は給料は、基本給とは別に割増賃金を計算します。
ほとんどの運送会社で、長距離ドライバーの休日出勤については勤怠管理していますが、
ドライバー人自身も、タイムカード、タコグラフ、シフト表、車載カメラ、アルコール検知記録などで、自身の休日出勤した日を把握しておきましょう。
ここでは実際に休日出勤した際の給料についてみていきます。
長距離ドライバーの給料に関連する記事として下記も合わせて参考になさってください。
長距離トラック運転手の平均年収は400万円!年収1000万円を稼げるか?
休日出勤手当の計算式
休日出勤をした際の給料は
「時給×出勤時間×1.35」
で算出します。
給料が月給制の場合は
「月給(基本給)÷1カ月の所定労働時間」で時給を算出してから
「時給×出勤時間×1.35」で計算します。
indeedの「日本での長距離ドライバーの平均給与」(2023年12月19日現在)で、平均給与は364,947円です。
具体的に長距離ドライバーの運送会社ごとに給料を例に休日手当を計算していきます。
引越し業者Hの休日出勤手当
引越業者も遠方の引越先に荷物を運ぶことがありますが、そこでも長距離ドライバーが業務を行なっています。
引越業者Hの平均月給は371,849円で、1カ月の所定労働時間が286時間の場合、
「平均月給371,849円÷1カ月の所定労働時間286時間=時給1300円」と算出できます。
休日に出勤して6時間働いた場合は、「時給1,300円×6時間×1.35=10,530円」が休日出勤手当となるのです。
運送会社Nの休日出勤手当
運送会社Nは、運送業界の中でも給料が高く、入社した際に新車のトラックに乗れることもあることで、
長距離ドライバーからも比較的高評価です。
運送会社Nの平均月給は513,129円で、1カ月の所定労働時間が260時間の場合、
「平均月給513,129円÷1カ月の所定労働時間260時間=時給1973円」となります。
休日に出勤して6時間働いた場合は、「時給1,973円×6時間×1.35=15,981円」が休日出勤手当となるのです。
法律に違反!?違法な休日労働について
労働者である長距離ドライバーを休日労働させる(=法定休日に労働させる)際は、運送会社の事業所ごとに36協定を締結する必要があります。
36協定は、労働基準法第36条に定められている「時間外及び休日の労働」に基づいて締結される協定であることから、一般に36協定とよぶのです。
36協定は、事業所に在籍する労働者の過半数で組織された労働組合、
または事業所の労働者の過半数により選出された代表者と、運送会社との間で締結します。
双方で締結された36協定は、管轄の労働基準監督署に提出し、受理されることで効力が生まれます。
こんな時は弁護士や労働基準監督署に相談!違法例
長距離ドライバーの休日に関する違法例は複数存在し、裁判に発展している例も数々あります。
本記事で休日日数などの記載をしていますが、長距離ドライバーに関する労働基準について理解を広げるとともに、
もし勤務先の運疎会社が法律に違反している働かせ方をしている可能性がある場合は、弁護士や労働基準監督署に相談することをおすすめします。
以下は実際に裁判に発展した例についてご紹介します。
スキーツアーバスドライバーの例~大阪地方裁判・2008年(平成20)年1月25日
スキーツアーバスの長距離ドライバーが過労運転を行なったため、ドライバー1名が死亡、乗客25名全員が負傷した事故が発生しました。
道路交通法、労働基準法(第32条1項、同条2項等)および刑法に基づいて、
代表取締役社長に懲役1年、専務取締役・運行管理者に懲役10カ月、被告会社に罰金50万円が科せられたのです。
ドライバーの疲労困憊状態を把握していた会社は、ドライバーに休みを取らせなかったり、
他のドライバーに交代させるべきが、その対処をしなかったことで、会社側に大きな責任を科せられた事例といえるでしょう。
トラックドライバーの例~広島地方裁判所・2016年(平成28)年11月14日~
被告会社のトラックドライバ―が、高速道路で居眠り運転をし、渋滞中の車の列に次々に衝突、死傷者が出た交通事故です。
道路交通法、労働基準法(第32条1項、同条2項、第35条1項等)および刑法に基づいて、
運行管理者に懲役1年6カ月(執行猶予3年)、被告会社に罰金50万円が科せられました。
ドライバーが過労で正常な運転ができないことを把握していた運行管理者は、
時間外労働や休日労働をさせており、運行管理責任者として法律を無視した行動であったとして裁判で判決が下されたのです。
どうすれば解決できる?対処法について
上記では長距離ドライバーに対する違法な労働により、裁判で有罪判決が出た事例についてご紹介しました。
本記事でご紹介した長距離ドライバーの休日に関する法律について理解を深めていただくとともに、
ここでは違法に休みがない場合の対処法についてみていきます。
会社へ相談する
労働者である長距離ドライバーにとって勇気が必要な行動かもしれませんが、
会社が休日など労働基準法を守っていない場合は、会社の社長や上司に相談をするといいでしょう。
労働者と長距離ドライバーの間に確執が生まれそうですが、会社も人手不足が続く中、
働き方改革も進んでいるため、会社が労働環境を整えて人材を確保しなければなりませんので、相談を受けて入れてくれる可能性は十分にあるのです。
労働基準監督署に相談する
労働基準監督署は、会社が労働基準法に基づいて運営されているかを監督・指導する機関です。
労働基準監督署は、労働者から労働に関する相談を受け、内容によっては会社に聞き取りや指導を行なう機関でもあります。
ただ労働基準監督署はすべての相談を受け入れてくれるわけではなく、
会社の危険行動や労働災害で、人命に関わる可能性が高い相談を優先していることを理解しておきましょう。
労働基準法を守っている会社に転職する
労働基準法を守っている会社であれば、きちんと休日が取れる生活を送ることができます。
違法な労働行為を続けさせる会社に在籍し続けていると、労働者である長距離ドライバーの身体的・精神的負担が増す一方です。
自分の体を守るためにも、勇気がいる行動にはなりますが、転職することをおすすめします。
長距離ドライバーで休みが取りやすい企業の見分け方
以下のような会社は、長距離ドライバーが休みを取りにくい可能性が高いですので注意が必要です。
給料や手当が未払い
給料や手当が、全額または一部未払いになっている会社は違法行為をしている会社です。
未払いのような違法行為をしている会社は、休日に関しても違法な取扱いをしている可能性が高いことから注意が必要です。
常に求人をかけている
長距離ドライバーは人手不足であることから、会社によっては常に求人をかけているところもあるでしょう。
もしそのような会社があった場合は、転職系サイトで口コミ・評判を確認したり、採用人数が異常に多い会社でないかを確認してください。
離職率が高い会社は常に求人をかけている可能性が高く、労働者にとって働きにくいことが窺えることから、休みが取りにくい可能性が高いです。
古い車両が多い
古い車両には安全装置が搭載されていません。
経営状況がいい会社は、新しい車両が多いですし、ドライバーの安全のことを考えて安全装置が搭載されている車両をおくものです。
古い車両が多い会社は経営状況がよくないか、ドライバーへの安全配慮がなされていない会社であり、
どちらの条件をみてもドライバーにとって良くない環境がつくられていることから、休日への視野も向けられていない可能性が高いでしょう。
まとめ
長距離ドライバーの休日について詳しくご紹介しました。
これから長距離ドライバーへの就職をお考えの方にとっても参考になるものがたくさんあったことでしょう。
労働基準法に違反している会社に勤務すると、長距離ドライバーに身体的・精神的負担がかかってしまいます。
もし労働者基準法に違反している会社に勤めている場合は、記事で記載されている内容で対応を図ってみてください。
本記事をお読みになり、あなたにとって優良な会社で長距離ドライバーとして勤務されることを願います。